法律という「ソフトウェア」 ~国分寺市CIO×東京都CIO座談会~
東京都CIOと区市町村CIOの顔が見える関係を構築するべく、東京都・区市町村CIOフォーラムを開催。さらなる都内区市町村CIO等の皆様と都CIOとのフラットなコミュニティ形成を目的とし、個別の座談会の開催に至っております!
第29回は「国分寺市CIO×東京都CIO座談会」をお届けします!
令和4年8月24日に、「東京都・区市町村CIOフォーラム第29回座談会」として国分寺市CIOと東京都CIOの対談を実施しました。
議題
①DX推進体制等の整備
②基幹系システムの標準化・共通化
DX推進体制等の整備
いかにして行政改革を進め、市民のために結果を出していくか?
―国分寺市様から取組のご紹介をお願いします
国分寺市CIO:内藤(以下「内藤」)
国分寺市ではDX推進の体制整備のため、4月にデジタル行政推進室が発足したところです。
そうした中で、喫緊の課題として、人材育成が挙げられます。DXは単なるICT化ではなく、デジタルを使った行政改革だと考えていて、その実現に当たって、職員が同じ方向を向いていくことが大切だと感じています。職員が一丸となって、市民のために明確な結果を出していかなければと思っています。
東京都CIO:宮坂(以下「宮坂」)
ICT化とDXが違うというのはまさに同感です。
私たちもトランスフォーメーションが大事だと考えていて、東京都ではまずペーパーレスやキャッシュレスなど地道な部分から取り組んでいるところです。国分寺市さんではその点はいかがですか?
内藤
宮坂さんがおっしゃるとおりだと思います。国分寺市でもそういった部分から少しずつ取り組んでいるところです。
宮坂
東京都で5つのレスを進める中で、成功例だけでなく失敗例などもありますので、そういった事例をぜひ共有させて頂きたいです。
研修や人材育成についてはどのような課題がありますか?
内藤
4月から新しいプロジェクトチームを立ち上げ、各部から若手を集めて部のDX推進役として位置付け、全庁的な流れを作っていこうとしています。
宮坂
都庁でも若手や中堅が頑張って引っ張ってくれています。
こうしたやる気のある職員が、区市町村との間で横の繋がりを作って、お互いに協力し合いながら進めていけたらと思います。
内藤
国分寺市でも、市民のために何ができるかを考えています。理想を言うと、来なくていい役所、書かなくて済む申請手続きを実現することだと思います。
宮坂
申請のオンライン化と同時に、分かりやすいホームページを作って情報収集を容易にすることも大切ですね。
東京都では、毎年都民の情報環境調査をしていて、「インターネットの利用方法」でのスマホ利用率は8、9割に達しています。
マイナンバーカードの普及率も5割ほどになってきており、スマホとマイナンバーカードを持っている人がマジョリティに転換しつつあります。
デジタルファーストに考えないと、マジョリティを取り残してしまうのではないか、と思います。
内藤
国分寺市でも、ホームページのアクセス数が上がってきていますので、見やすさや使いやすさの追求が課題です。
また、スマホをお持ちの人はかなり多く、マイナンバーカード取得率も上がってきています。民間サービスをどう行政サービスに取り入れていくかも重要な観点で、行政サービスのハードルを下げるには、LINEのような民間サービスの安全性を周知していくことが課題だと考えています。
宮坂
おっしゃるとおりですね。DX人材の採用状況はいかがですか?
内藤
民間出身でICTの知見をお持ちの方を採用したいと考えているところですが、課題になるのはそういった人材がどう行政改革を進めていくかだと思います。
宮坂
チェンジマネジメントのできる人材に来てもらえるかが課題ですね。都庁で採用した人材をシェアリングしたり、東京共同電子申請・届出サービスのような、共同で使えるものを増やしていったりしたいと思います。人とシステムの共通化についてはいかがですか?
内藤
その点は大事だと思っています。可能な限り、知見と経験を共有して、使えるような仕組みがあればいいなと思います。
基幹系システムの標準化・共通化
法律という「ソフトウェア」の改善の必要性
―国分寺市様の標準化・共通化の現状についてお願いいたします。
内藤
標準化・共通化については法的なハードルが高いですね。標準化・共通化以前に、地方公務員法の職務専念義務の解釈が、リモートワークを推進するうえで課題となっています。
宮坂
自宅では職務専念しないかもしれないから、リモートワークさせづらいということですね。デジタル庁もデジタル臨時行政調査会で鋭意取り組んでいると聞きますけど、法律というソフトウェアの上にプログラムのソフトウェアが乗っている構造なので、法律の改善が進めばいいですね。
地方公務員法の他に、法律で変わったほうがいいことはありますか?
内藤
個人情報保護法の改正は、DX推進の大きなきっかけになると思います。
今後は、民間の力を借りられる点はどこか、法的に整理する必要があると思います。
宮坂
都としても、ご要望をいただいてデジタル庁に繋げていきたいと思います。
個人情報保護法の改正でどういう点が良くなったと感じてらっしゃいますか?
内藤
個人情報保護については、自治体により差が大きいです。
国分寺市は、多くの自治体と同様に、上乗せ横出し条例によって、法律よりも厳しく対応してきました。今回の法改正を受けて、それに沿って条例改正するか、新たに制定しなおすことを考えています。
個人情報保護に費やす審議時間や人手が、かなりスリム化されると思います。
しかし、個人情報保護の取り扱いを軽くするものではないので、国分寺市の取り組みを説明することが今年度の課題だと思います。
宮坂
なるほど。良いルールであれば、十分な強度で個人情報が保護できるので、自治体ごとにあったルールがスリム化されることは、大きな意味があるかもしれませんね。
それと、ガバメントクラウドについては、ご進捗はいかがですか?
内藤
順調です。ベンダーが決まれば、落ち着いてくるかなと思っています。このまましっかり進めたいと思っています。
宮坂
新庁舎に移行されるとのことで、ネットワークのインフラも改善されると思いますが、職員向けのポリシーは考えてらっしゃいますか?
内藤
5つのレスを進めるために、職員にモバイル型パソコンを配布することを検討しています。
新庁舎移転の1年後に内部系システムの入れ替えがあり、その前倒しの可能性の検討も含めて、新庁舎のICT化を進めたいと思います。
お願いがありまして、各方面でモバイルワークやテレワークが進んでおり、国分寺市も追いつきたいと考えています。
ご支援やアドバイスをいただければと思います。
宮坂
他の自治体の方からも、庁舎移転のタイミングでネットワークを変えたいとか、クラウドを使えるようにしたいとか、モバイルデバイスを使えるようにしたい等、前向きな話をお聞きします。
個別の自治体だけでは難しいこともあるようなので、区市町村相互や都も含めてみんなで話し合って進められたらと思います。
職員に働きやすい道具を届けたいという思いはみんな一緒だと思いますし、同じルールの中で取り組んでいるわけですから、しっかり支援をして参りたいと思います。
―お時間も来たようですので、今回の座談会はこれで終了します。普段の会議とは違う、ざっくばらんな意見交換ができて非常にありがたく思っています。本日はありがとうございました!
本取組については、今後も継続して実施する予定です。次回もお楽しみに!