道の駅の思い出
駅から少し歩いた場所に比較的大きなアンテナショップがある。期間限定や地域限定の宣伝句には大変弱い日本人だが、筆者はほとんど意識しない。おそらくアンチミーハーな性格で二十年以上生きてきたからだろう。更には地方の特産品をその場のノリで買ってしまうくらいの十分な財力も無いので、そのアンテナショップは存在だけ確認していつもスルーしていた。しかし今日は途中で小雨が降ってきたので、雨宿りをするため初めて店内に入った。
最南端と最北端
店内は市、北海道、沖縄の三つのブースで構成されておりスペースはどれも平等に区分けされているが、案の定市のコーナーだけ明らかにお客が少ない。こういう競技ではあの東京でさえ、最南端と最北端相手なら手も足も出ない。
沖縄のブースが一番品揃えが多く、某黄色い店のように棚と棚の間の道幅も狭くカオスな雰囲気に包まれていた。筆者はアルコール類は飲めないが肝臓に悪いことは知っているので、他人から酒に強いマウンティングをされても一切のダメージを感じない。しかしオリオンビールが沢山積み上がっているのを見ると、どうしてもビールを笑顔で嗜む自分を妄想してしまう。北海道ブースの品数は沖縄の方と比べたら少なく、その分道幅も大変広かった。人口密度の低い、余計なほどに広い大地を表現したのだとすれば、センスに長けているのではないか。商品のラインナップには昆布やミントなど料理の出汁や原材料として使われる品が多く揃えられており、見栄えはシュールなブースだが商品パッケージに書かれている『札幌』『小樽』『函館』『網走』などの地名を見れば、魅力度ランキングが圧倒的一位なのも納得がいく。
道の駅とソフトクリーム
また北海道のブースの中にソフトクリーム屋が構えられていた。値段は四百円とコンビニだと驚愕するような金額だが、せっかくの機会なので券売機に五百円玉を入れた。メロン味もあったが高い金額を払っている分、失敗は避けたかったので今回だけは無難なバニラ味を選んだ。
味はもちろん美味しかった。それだけ。特に他には無い圧倒的な何かがあったわけでもなく、ただ美味しいだけ。そもそも筆者は人生で不味いソフトクリームを未だかつて食べたことがない。肩透かしを食らった気にもなるが、そこまで嫌ではなかった。小さい頃、家族で温泉に行った帰りにいつも高速道路付近の道の駅に寄り、全員でソフトクリームを食べていた。それが何味だったかも今は思い出せないが、温泉よりもこっちの方が断然楽しみで、その駅が営業終了になったことを知ったときに凄くショックを受けたのを今でも覚えている。
一通り見終わって外に出ると、雨はより強くなっていた。何なら雷の音まで響いていた。
written by Sign