
年末年始に風邪を引くと…
最初に症状を自覚したのは、確かクリスマスイブだった。朝目覚めると、喉の痛みを感じた。昼頃になると咳が出始めたが、症状はそれだけだったから病院にも行かなかった。そしてこの後、筆者はインフルエンザ級の体調不良に襲われ、二週間の引きこもり生活を強いられた。
正月の三が日は特に辛かった。発熱で倦怠感がひどく、本当は横になって休みたいが、そうすれば気道が狭くなり確実に咳の発作に見舞われる。筆者はベッドで寝るのを諦め、意識が途切れる寸前の深夜四時くらいまで、椅子に姿勢よく座って目を瞑り、じっと時間が過ぎるのを待つ。このナイトルーティンを四日間続けた。鼻も喉もまともに機能せず終始息苦しいので、音楽を聴いても動画を観ても集中出来ず、気を紛らわす策は何もなかった。人生ワースト級の虚無を感じる時間は、筆者に健康の大切さを改めて教えてくれた。
病院で処方してもらった抗生剤がようやく効いてきたので、体力を戻すためにマスクを着けて駅前を歩いた。
大通りから路地に入ると、落ち着いた雰囲気のジャズバーがあったので入ってみた。
生演奏・レコード・CD
店内の天井にライトは付いておらず、照明は長々と吊るされたペンダントライトの灯りだけなので、昼でも異様に薄暗い。
壁はセメント剥き出しで、ある区画にはレンガが埋め込まれている。清潔感だけを考慮すると、他のチェーン店には劣るかもしれないが、ジャズバーにしかないレトロなムードが演出されていて悪くない。

音楽はカウンター横にある大きなスピーカーから流されている。レコードプレイヤーもあるが、今は使われていない。
『Misty(ミスティ)』というスタンダードなナンバーが流れた。筆者はジャズを聴くときは、サックスやトランペットよりも先に、ピアノやウッドベースの方が耳に馴染む。この曲はピアノの優しい音色が特に特徴的で、筆者も家で時々これを聴く。中盤のドラムソロもトランペットの即興パートも、聴き心地が良かった。
明るい黄土色
注文したのはアイスカフェオレ。ここ二週間以上コーヒーを飲んでいなかったのをすっかり忘れていた。下にミルク、上にコーヒー。そんな液体を細いストローを使ってかき回すと、白色と黄土色が化学反応のように互いに混ざり合い、全体が明るい黄土色になった。
甘味はほとんどないが、ミルクのまろやかさが素晴らしく苦味も丁度いい。普段は苦味で眠気を飛ばすのを目的にブラックコーヒーをよく飲むが、やはりカフェオレだと飲みやすさが段違いに上がる。試しにシュガースティックを一袋分入れてみたが、やはりアイスなので砂糖は上手く溶けず、味もさほど変わらなかった。店先で飲むコーヒーは市販のペットボトルコーヒーよりも、どこか健康的でオーガニック的なものまで感じる。おそらく勘違いだろうが。

体調不良に寝不足が合わさった散々な年末年始だったが、来年はそうならないように努めなくては。決して豪勢なことをしたいわけではない。何事もなく普通に過ごせたらそれでいい。
written by Sign