東京の洗練された女性たち
それは、10年前のある日。
人生初の丸の内OLとなり、首から下げる社員証に浮足立っていた頃(小さいときからの憧れ)、周りとの違和感に気が付く。
転職して間もないときだった。
エレベータで一緒になる”おそらく”同じ場所で仕事をする人。改札から“なんとなく”向かう方角が一緒で、雰囲気も似ている女性たち。
自分には持っていないようなオーラが、体中から出ているかのように感じた。
何が違うのか、しばらくはハッキリとわからなかった。
しかし、
“違和感“の答えが突然降ってくる。
「丸の内OLって、みんな、女子力高いよね?」
―――職場は女性が9割だった。
丸の内OLの心得
周りにいる女性を見渡しても、美しくセットされた髪の毛、指の先まで手入れが行き届いたネイル。15cmもあるだろうエナメルのハイヒール。
女性ファッション雑誌に出てくるモデルを意識して、目の前で華麗にターンを決めポーズしそうな、キレキレのおしゃれ感。
これが、東京で働くOLの洗練・・・と強烈に記憶に残る出来事だった。
上京すると垢抜ける?
「垢ぬけたね~」という言葉がある。
実家に戻った時、学生時代の友人たちと久しぶりに再会したとき。
そんな時に飛び交うワード。
田舎者独特のイモっぽさはなくなり、いきなりかわいくなったね。という意味。
地方出身者が東京に出て、周りの影響を受けながら、ほどよく男性の目線も意識するようになると、不思議なことが起こる。
今までトキメクことのなかったファッションが気になり、自分に似合うメイクを調べはじめ、友達同士で美容の情報交換に発展する。
「メイクなんて必要ない。ファッションなんて、好きなものを着るのが楽しい」
そう思っていたわたしも、いつの間にか好きな人に「イモっぽいね笑」と言われてから、その人にかわいいと言われたい一心で、綺麗になるためのメゾットをたくさん探して、見た目を研究するようになった。
環境の影響は、思っているよりも顕著。
というより、好きな人からの視線だろうか。
母からの言葉
今年の3月、母親と軽井沢に旅行に行く機会があった。
親子水入らずで旅を満喫できる、かけがえない時間。お酒を飲みながらいろんな話しをしていたとき、母親がポツンと一言。
「あんた、変わったよね。昔そんなんじゃなかったよ」
「・・・」
「自分の意見もしっかり言えるようになったし、垢抜けたよね。見た目も」
一番近くで私をみてきた、母親だからこそ説得力がある。
***
親元を離れ10年。
東京の生活を繰り返すうち、誰に何かを教わったわけでもなく。
気づいたら、垢抜けている自分がいた。
written by みんちゃん