博報堂メディア環境研究所のプレゼン雑感その3

情報のクリップの仕方の変化

博報堂メディア環境研究所の発表でもう一つ世の中の新しい流れとして特徴的だと思ったのは、「とりあえず情報をクリップしていくこと」です。
若者たちは、自分に有益だと思ったものは、反射的にクリップしていく。
これは新しい行動だなと感じました。
僕らのような50台になると、まだその生理感に追いついていけません。どちらかといえば、必要な時に検索に行くという、インターネットを「プル型」に使っているように思います。
けれど、インターネットネイティブたちは、「プッシュ型」の使い方をしています。クリップすることで情報を貯めていて、貯めることが「いつか使うため」でなく「とにかく貯めおこう」という行動になっているようです。

「いいね」は自分のためにする時代


そしてもう一つ印象に残ったのが「いいね」の使い方の変化です。
僕などは、大人になってしまったせいなのか、いい歳して「いいね」を
連発していいのだろうか? という分別くささから逃れることができません。
ところが、インターネットネイティブの人は躊躇なく「いいね」をしているというのです。それは、膨大な情報洪水の中で、反射的に「いいね」を押しておかないと「情報が流れて行ってしまうから」とインタビューに答える人がいました。
その場で即行動をしないと、すぐに行動が忘れ去られると言いますか・・・。
僕らの世代とはちょっと違うなあ、という思いが強く残りました。
若い女性をターゲットにしたメディアの経営者として、どっぷりその世界にいる僕ですら、彼女たちの行動には「新しすぎる」という感じを持ちました。
彼ら彼女たちは、自分にとって有益な情報に「いいね」するわけで、他者への共感としての「いいね」ではなくなっているようなのです。

好きだからフォローする時代ではない


僕に同行していたCチャンネルで営業をしている30代の女性社員は「わかるわかる」と大きくうなづいていました。そして「いいね」は共感という外向き発信ではなく、「自分のために使っています」と断言していました。
最近のInstagramで特徴的なのは、インフルエンサーが好きだからフォローするという、その先にある行動です。つまり、「人」に紐づくのではなく、「雰囲気」「好きなもの」「好きな情報」に対して積極的に「いいね」することで、アルゴリズムで情報を上に上げるような行動を取っているようです。

人工知能に利用される感じを逆に利用する世代


僕などは、インスタを「タイムライン的」に使っていますが、もうすでに、タイムラインではなく「検索窓」として使っているようです。
上がってきたものをクリックして、自分のためにアプリをカスタマイズしているとでもいいましょうか。AIは人間の行動を学習して、ビッグデータを元に、人間に有益なフィードバックをもたらすものとされています。ただ、その時に多くの人の頭にあるのは、クライアント側、あるいはビジネスにとって都合がいい情報を取れるようになるというものではないでしょうか? でも、今の若者は、それを逆手にとって、「自分のため」にアルゴリズムを利用しているように見えます。その行動は僕にとってとても新鮮に映りました。アプリの開発者は、これからはそういうユーザーの行動も設計に入れなければいけない時代に突入したようです。
AIに利用される感じを逆に利用する、逆手に取る行動が取れるユーザーがどんどん増えるでしょう。そうした時代にマッチしたビジネスが求められるのでしょう。
<この項さらに続く>


コンテンツプロデューサーの三枝孝臣です。メディアの現在と未来を僕なりの視点で語ります。ベンチャー企業経営者としての日々についても綴って行きます。