テレビ局発のVODサービスはどこに向かうのか?

林立する見逃し配信サービスの次の戦略は

テレビ局のサービス延長型プラットフォームの特徴について考えてみたいと思います。
いわゆる「見逃し配信サービス」は基本的には「曜日、時間、編成」をベースにしたテレビ番組の見逃し視聴をテーマに提供されています。リアルタイムに見逃してしまったプログラムを、好きな時に見直すことができるサービスです。
2014年頃から本格的に始まったこうしたテレビの見逃しVOD(Video On Demand)サービスはほぼ出そろった感があります。これから加入する人の数はある程度増えるでしょうが、「アーリーアダプター(初期導入者)」という、トレンドに敏感な人たちはすでに導入済みで、それぞれのライフスタイルに応じて楽しんでいる段階でしょう。民放5キー局が提携している「TVer」に加えて、各局がオンデマンド配信と、見逃し配信に対応したアプリをリリースしています。
こうしたサービスは、「Paravi(パラビ)」の登場も含めて、プレイヤーが林立しています。これからはレッドオーシャンの中でどう戦うかという戦略が求められているのではないでしょうか。

携帯電話3キャリアの戦いも激化

その一方で、インフラとしての携帯キャリアの戦いの側面も見逃せません。
つまり、インターネット動画メディアは、
●インフラとしてのキャリア
●動画プラットフォーム
●どんなコンテンツを提供するか
という、3つのレイヤーで戦いが本格的に始まっているという認識です。

ネットフリックスとの提携もカギに

特にいまや世界最大の独立系動画配信サービスである「Netflix(ネットフリックス)」の動向は無視できません。au(KDDI)との提携も発表されましたが、インフラ、プラットフォームがどうすみ分けるかがテーマになりつつあります。
ドコモにはdTVという大きなプラットフォームがあります。
ソフトバンクは2015年にネットフリックスと提携していますが、新しい連携が行われるのか、動向が注目されます。
キャリアサイドにとってもユーザーがどれくらいその回線の上で時間を費やしてくれるのかが大切な指標になっていくのではないでしょうか?

abemaTVに続くテレビ局はあるのか

一方でストリーミングサービスとして「abemaTV」が、3年近くの間、赤字を出しながらもやり続けている価値が、少しずつ現れてきているような気がしています。
「abemaTV」以外で、24時間ストリーミング放送型のインターネットテレビサービスはありません。ご承知のように「abemaTV」はサイバーエージェントとテレビ朝日のジョイントベンチャーです。僕は、ストリーミング型サービスにテレビ朝日以外の放送局やサービス提供者が今後どう取り組んでいくのかを注視しています。
「abemaTV」が地位を確立できたのは、24時間ライブ放送というハードル高いところはあると思いますが、日本人にとって(特に年齢が高い層には)、ストリーミングのリアルタイム編成は比較的馴染みがあります。何曜日の何時にどのチャンネルでやっているという、テレビ的なルーティーンとして認識されている強みがあると思います。
また出演者や制作者もオンデマンドサービスに慣れていない分、時間編成型のサービスの方が「テレビ的」なため馴染みが良く、仕事がしやすい、という現実的な側面もあるようです。
そういった意味でもストリーミング(リニアサービス)とVODの組み合わせが、この次の動画プラットフォームの次のトレンドになると僕は見ています。それを実現したプラットフォーマーが日本における“勝ち組”になってくるのではないかという気がします。
 次回は、動画アプリの盛り上がりと、その将来性について考えてみたいと思います。


コンテンツプロデューサーの三枝孝臣です。メディアの現在と未来を僕なりの視点で語ります。ベンチャー企業経営者としての日々についても綴って行きます。