ジャニーさん ありがとうございました。
今日9月4日東京ドームでジャニーズ事務所の社長ジャニー喜多川さんのお別れ会が開かれました。
前職の日本テレビ放送網時代、数多くのお仕事をご一緒し、大変にお世話になったこともあり、お別れ会に呼んでいただきました。そしてトレードマークのキャップを被っているジャニーさんに感謝とお別れの言葉を告げてきました。
冒頭に流れた映像ではジャニーズのアーティスト達の様々なコンサートや舞台の映像が流れ、客席で見せていただいたステージが数多く登場し、言い知れぬ懐かしさと寂しさと、そして改めてそのエンタテインメントのスケールに感動を覚えました。
「すげーなー。やっぱりジャニーさん」
ジャニーさんの凄さは、色々な先輩方も語っているのでおこがましいと思いますが追悼の意味も込めて、ジャニーさんのプロデューサー、マネージャーとしての魅力と凄さを書き残しておこうと思います。
僕がジャニーさんに初めてお会いしたのはもう30年前。新入社員のADだった時でした。歌番組のリハーサルのため、当時使われていた6mmというレコードテープ(古いですね)を手に提げて、建て替わる前のテレビ朝日のプレハブのリハーサル室に行った時でした。
リハーサル室で見たこともないジャニーさんを暫く探しても全く誰だかわかりません。
その時近くにいたおじさんに声を掛けました。
「すいません。ジャニーさんどちらにいらっしゃいますか?」
「僕がジャニーだよ」。
あまりのことに平謝りする僕に全く構わず、笑顔でリハーサルを始めようとしたジャニーさん。それが最初の出会いでした。
考えてみれば僕の父と同世代のジャニーさんは、ガキのような使いっ走りのADだった僕にも普通に接してくださる、とてもフレンドリーな方だな、という印象でした。
それから30年余り。本当に色々な番組でご一緒させて頂きました。。。
タレントの才能を見出し、数々の舞台を世に送り出したプロデューサーとしての目利きの話は、皆さんもたくさんご存知だと思います。
でも、僕自身はそんなプロデューサーとしての凄さと同時に、最後の最後まで生粋のマネージャーだったのだと思っています。
何故ならジャニーさんは、出来上がったばかりのデモテープをご自分で、当時ディレクターだった僕のところに持ってくるような人でした。
自分で車を運転して、会場からジュニアの子供達を連れてマクドナルドに行ったり。。。
社長であり、スーパープロデューサーになってもマネージャーの精神は変わらず、常に子供達の成長を見守っている、というのが僕の中のイメージです。
もちろん同時に、プロデューサーとしての凄さも感じました。
「絶対にこっちの方が良い」と思ったことに対しては、「頑として」曲げることがありませんでした。あるドラマ主題歌を巡って、今でも忘れられないやり取りがありました。
僕が、車で青山辺りを走っている時に、ジャニーさんから電話がかかってきました。車を脇に止めて電話に出ると、「三枝さん、エンディングの曲のことなんだけどね」と、いきなり切り出されました。僕はエンディングには洋楽を使いたい旨、打診していましたが、ジャニーさんは「絶対この子はブレイクするから、この子の曲でエンディングがいいよ」と言って譲らないのです。
骨董通りでハザードを出したまま、ジャニーさんとそのまま3時間喋り続けることになりました。終いに、携帯のチャージが持たなくなり、
「携帯の電池が切れますから、今日はいったん切らせてください。明日、事務所に伺いますので!」と言って、翌日駆けつけたこともありました。
最終的には、ジャニーさんの案に乗りそのアーティストは後に大ブレイクしました。
僕の印象としては、とにかくジャニーさんという人は魅力的な人でした。番組を作り上げる、同じクリエイターとしても、そして僕がテレビ局のディレクター・プロデューサーとして相対するマネージャーとしても。
何かと、「三枝さん、話があるんだけど」と呼び出されましたし、平然と一人で車を運転して、当時麹町にあった日本テレビにもいらっしゃいました。入構証をお持ちではなかったので、警備員に止められて、入れないトラブルになり、急いで警備員さんのところまでお迎えに行ったこともありました。
汐留に移ったばかりの頃には
「スタジオに顔を出すよ」
と突然ジャニーさんから電話がかかってきて、待っていると
「ビルは見えるけど、三枝さんどうやったら、このビルに辿り着けるの?」
というお電話でした。僕は、慌てて第一京浜までお迎えに行きました。
本当に少年みたいな感じで、こうと決めたらすぐ動く、フットワークの軽い本当に魅力的なジャニーさんとの思い出はまだまだ尽きません。
もう、二度と生まれないだろう、稀有なクリエイターのジャニー喜多川さんと、いくつかの仕事ができたことは、この上ない幸せな思い出として、僕の財産になっています。きっと同じように感じているテレビマンは数多くいることでしょう。
どうか、天国でも、僕たちのこれからのエンタテインメントを暖かく見守ってください。