エンジニア目線で読んだ「思考の穴」

はじめに

✅すべて個人的の感想と見解です
✅全ての引用の出典はすごい言語化/小暮太一(著)です。
✅この記事はアフィリエイト目的ではないため、リンクは掲載しておりません。ご購入の際は、ご自身で検索するか、書店にてお求めください。


この本を購入しようと思った理由は、第一に表紙のインパクトに惹かれました(笑)

また、購入当時に思考・心理学に興味があったので購入に至りました。

本書についての感想を、現役のフリーランスエンジニアとしての視点も入れて述べてみます。

流暢性とは

*流暢性「ヒトが、情報(主に言語情報)を適切に、素早く、数多く処理し出力する能力・特性のこと」

簡単そうに見えるけど実際やったら難しいやつ

頭の中で容易に処理できるものは、人に過信をもたらす。そうして生まれる過信のことを「流暢性効果」と呼ぶ

噛み砕いて言うと、誰かが簡単そうにやってるのを見ると自分も簡単に出来そうっていう錯覚になるということ。

Youtuberを見て簡単に稼げそうって思ったり、他人のダイエットのBefore/Afterを見て自分も痩せられそうと思ったりしたことありませんか?

実際にやってみると大体難しいって分かるんですけど、やる前は簡単に思ってしまうっていうのが錯覚ってことですね。

この錯覚のせいで思わぬ事故や誤解を生むこともあるので気をつけたいです。

相関関係と因果関係は混ぜるな危険

人は新たな知見を得たときに、それが見出された経緯を知ると、その知見が事実だと信じる気持ちが強くなるのだ

結果のみを伝えてられても中々すぐに信じてもらえないけど、追加情報やプロセスを思う浮かべられる状況になると相関関係に因果関係を見出そうとする傾向が強くなります。

相関関係と因果関係について例を出して少し説明します。

相関関係
「カロリーの摂取」と「肥満」は相関関係にあります。
カロリーの摂取量が増えると、肥満のリスクも高まります。
ただ、カロリーの摂取が多いからといって必ずしも全員肥満とは限りません。
運動していたり生活習慣などを考慮する必要があるからです。
A<=>Bの関係です。

因果関係
「肥満」と「死亡リスク」の間には因果関係があります。
肥満が原因で死亡リスクが高くなるからです。
A=>Bの関係です。

本題に戻りまして、先ほど「相関関係に因果関係を見出そうとする傾向が強くなる」っと書きましたが、これの何が悪いのかというと先ほどの説明した相関関係と因果関係をごちゃ混ぜにしてしまうと

「カロリーを摂取すると死亡リスクが高まる」

みたいな解釈になる可能性があるからです。

もちろんこれは少し大袈裟なんですけど、もう少しリアリティのある話にしてそれっぽく説明されると信じてしまう人もいるんですよね。

各々は正しい情報なのかもしれないけど、勝手に合わせて考えて間違った情報を正しいと認識してしまうのは気をつけたいです。

メタ認知とは

何かを認知しているかどうかを認知する能力

自分が何かについて知っているかどうかを知っているからこそ、自分がどう行動すべきことが分かるというもの。

メタ認知能力が高いと何が良いのかというと、自分を客観的に見ることが出来るので自分の長所や短所を把握出来ます。

自分の強みを把握出来ると、強みを活かしながら高いパフォーマンスを発揮出来るようになります。
逆に自分の弱みを客観的に把握できていれば、どうすればそれを克服できるのかが見えてきます。

メタ認知の判断材料の中に「親近性」の感覚があります。
難しい言葉で言うと「ヒューリスティック」といい、経験則や直感による判断という意味です。

例えば、「1km泳げますか?」と聞かれた時に実際に泳いで確認するのは難しいです。
そこで、自分の過去の経験から泳げる・泳げない・泳げそうなど回答をすると思います。
この回答に対する判断をヒューリスティックと言います。

経験や直感に頼りすぎて失敗することがある

すごく便利な判断方法なのですが、全ての判断を経験則や直感で行うことは危険です。

自分は前回の案件面談が上手くいったから次回の案件面談も上手くいくだろうと過信して準備を怠れば、失敗を招く恐れがあります。

それを防ぐためには「やってみる・試してみる」のがシンプルで最高の対策です。

次回の案件の情報を仕入れたり、実際に面談対策/練習を行う。

当たり前のことだと思うかもしれませんが、頭の中で思い描いて試した結果が上手くいった場合に人は肉体的試行を疎かにしてしまうケースが多いです。

頭でやる思考はハプニングもなく全て想定通りに物事を動かすことが出来るので、自分を過信する気持ちは大きくなります。

試すというのは頭の中の思考では不足しがちなので、実際に実行することが大事だと思います。

自分を客観視出来ているか?

面談でよくある質問に「あなたの強みは何ですか?」が挙げられます。
その回答を用意している人はおそらく多いと思います。

ただ、その回答の先である例えば「その強みを仕事でどう活かせますか?」のような質問を想定している人は多くはないのかなと。

何故この質問をされているのか。
自分が面接官だと思った時に、その回答をした人を採用するのだろうか。

を考慮が出来ること

これくらいでいいか
あまり試行してないけど十分だろう

このような過信を減らすこと

ここら辺を考慮出来るようになると面談能力というのが高まると思います。

自分から見た自分ではなく、他人から見た自分を客観視するのは大事だなと感じた。

計画が甘い?計画錯誤とは

何かを完了させるのに必要となる時間と労力は、少なく見積もられることが多い。

2011~2015年のアメリカで実施された調査では成功した(当初の予算と機能が予定通り終えられた)ITプロジェクトは30%ほどらしい。
半数は予算や期間の超過、機能不全などが起こっている。

このように世の中には色々なプロジェクトが動いているが、計画通りには中々うまく行かない。

計画成功だけを見ていても当然うまくいかない。

では計画遂行に障害となることを考慮してみる。
そうすると二種類のパターンが生まれる。

・想定出来ること
・想定が難しいこと

想定が出来ることは考慮出来るので置いておいて、想定が難しいこととは何か。

例えば、開発メンバーが長期離脱する。利用しているサービスのサーバーダウンが起こり復旧の目処が立たない。などなど。

ほとんど起こらないだろうというものや起こる可能性のあることが多すぎる場合には見過ごされやすい。

不慮の事態は未知のもの、人生は何かしら常に起こる。
対策は難しいが考慮はしないといけない。

対策としては
見積りより「50%」多くの時間を確保する

2日で出来ると見積もったなら3日で出来ると計画する。

見積りが甘い以外の原因

原因として見積りが甘いのは大前提あるとして、自分を良く見せようと難しい見積もりを出すケースも多々ある。

A「この機能ってどれくらいで実装出来る?」

B「(あんまり長く言うともっと早く作れないのって言われるかな?)」

B「〇時間くらいで出来ます(実際は1日かかる)」

難しい言葉で言うと希望的観測という。

人は自分が関わるプロジェクトに関しては、遅れずに、なるべくなら早くに完了し、あまりお金がかかりませんようにと願う。
こうした願望が、計画の立案や予算の編成に反映されてしまうのだ。

確証バイアス

確証バイアスとは

「自分が信じているものの裏付けをしようとする」傾向のことを指す。

「自分が正しい」と思える証拠ばかり集めてしまう

人間の仮説検証の傾向を調べるのに「2-4-6課題」というものがある。

2-4-6課題

ルール説明

実験者は、「2, 4, 6」という、3個の数字からなる数列を被験者に提示し、数列は、あるルールに基づいて3個の数字が並んでいる、と告げる。被験者は、そのルールを見つけることが求められる。
被験者は、自分で数列を作成して実験者に提示すると、実験者はその数列がルールに当てはまる場合は「ルールを満たす」、あてはまらない場合は「ルールを満たさない」を返答する。
被験者は、何回でも数列を提示して良い。被験者は「ルールがわかった」と判断したら、実験者に「どんなルールを推定したか」を告げる。

解答例

被験者 「4, 6, 8」

出題者「ルールを満たす」

被験者「法則は2ずつ増えていく偶数だ」

出題者「違います」

被験者 (偶数に限らず2ずつ増えていくのか?)

被験者「1, 3, 5」

出題者「ルールを満たす」

被験者「10, 12, 14」

出題者「ルールを満たす」

被験者「法則は2ずつ増えていく数字だ」

出題者「違います」

被験者「-8, -6, -4」

出題者「ルールを満たす」

被験者「1000, 1002, 1004」

出題者「ルールを満たす」

被験者「え、本当に2ずつ増えていく数字じゃないんですか・・・??」

被験者の思考

  1. ルールを推測する(ルールAとします)

  2. ルールAを満たす数列・ルールAを満たさない数列をいくつか提示する

  3. ルールAが正しいかどうかを判定する

  4. ルールAが正しいと思われれば実験者に告げる/ルールAが正しくないと思われれば別のルールBを考える

  5. 必要なだけ1~4を繰り返す

答え

法則は「増加する3個の数字」というものだった。

「最初の考え」に固執しているから間違える

以上から何がわかるかというと、人間は正しいと思ったことを証明することばかりを集める傾向にあるということ。

上記の場合、ルールAにマッチするものだけでなくルールAにマッチしないパターンを考えなければいけなかった。

例えば、「10, 9, 8」や「1, 2, 3」など。

自説を裏付ける証拠となるデータは確かに必要だが、それだけでは十分はない。
その仮説の反証も試みる必要がある。

⬇️2-4-6課題の参考サイト

信じたとたん、信じたように行動し始める

暫定的な仮説を裏付ける証拠ばかり集めていると、それが正しいと確信する気持ちが極端に強まっていき、裏付けとなる証拠をさらに求めるようになるのだ。

心理テストや遺伝子的な検査はあくまで傾向や確率的なものであり、不確実性を持っている。

あなたはこういう性格の人間です。

あなたに向いているのはこういう仕事です。

自分のタイプを調べるテストや診断は山のようにありますが、これらはあくまで傾向です。

例えばあなたは人見知りな傾向が強いですと言われると、確かに自分はこういう場面で人見知りだったなっと過去の出来事を思い出して当てはまる事例を思い出して証拠を出そうとしていませんか?

そして、「あぁ自分は人見知りだ」と思い出したら人と交流するのが億劫になったりとよくない現象が起こります。

人と普通に話す出来事を考えもしないで・・・

実際に自分は鬱や風邪だと診断された際に、余計に症状が悪化するケースも少なくはないということです。

確証バイアスは絶対的に悪なのか?

確証バイアスによって、人は「認知能力の倹約」が可能になる。

脳のパワー(認知のエネルギー)は常に全て使うのではなく、必要に差し迫られた時に余裕を持つ必要があります。

完璧を目指す人より「妥協する人」のほうが幸福である

例えば、自分にパートナーがいたとして今とても満足している状態だとします。
その時に、「もしかしてまだ近くにもっと良い人がいるのじゃないのか」、「世界にはまだ色々な人がいるのではないか」などを考える必要はないし、おおよその人は考えていないと思います。

私たちの未来や選択肢は信じられないほど数が多い。

だからこそ本書では以下のように述べています。

意思決定する際は、ある程度満足したところで、それ以上の探求をやめる必要がある。

確証バイアスのおかげで、数ある選択肢の中から満足だと思えるものに出会えれば探求を辞められて、それによって幸福度が増し、また新たな思考や選択肢を得られるんじゃないのかなと思いました。


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