
Photo by
sinoayakouri
なぜ歩き続けるのか
徘徊
ただひたすらに歩き続けている。
傍からみると、無目的のように見えるがきっと本人にとっては重要な目的があるから、歩いている。
あっちへ行ったりこっちへ行ったり。
カツン、カツン、カツン・・・
杖をついている音が響いている。
いつものことなので、誰も気にしていない。
杖を忘れて歩いていることもある。
介護士は利用者(※施設にいる高齢者のことを利用者と呼びます)のことを一切気にしていない・・・ように見える(笑)。
オムツ交換の時間だから、早くフロアを回って何十人ものオムツ交換を終わらせないと、次のことができない。
杖をついて歩けるほど「元気」な人をかまっていられない。
「どうしましたか」
「どちらへいきますか」
私が声をかけると
「え?どっちいったらいいのか、わかんなくて」にこやかに返事をしてくれる。
「イスに座って待ちましょうか。おやつの時間になりますよ」
「あ、そうか」
5分後。
カツン、カツン、カツン・・
今度はこっちからきた。
誰もかまってくれないのだろうなあ。
大きな食堂に利用者が何人かいて、イスや車椅子に座ってテレビを見ている。
だからといって、仲良く話をしているということはほとんどない。
それぞれの世界の中にいる。
職員が話しかけると、たくさんお話ししてくれる人が多いのだけれど
利用者同士で話がはずんでいる、ということは殆どみることはできない。
みんな、自分の世界。
誰かを探しにいっているのか
どこかに行こうとしているのか
誰か、話し相手を見つけようとしているのか
その人しか分からない。
歩き続ける・・徘徊という世界。
気のすむまでどうぞ。
でも、転ばないでね。
骨折でもしたら大変だから。