事故にならないタコ足配線のすゝめ
私のデスク周りには様々な電化製品がある。パソコン3台、ディスプレイ、スタンドライト、ギターアンプ、シュレッダー、プリンター、加湿器、除湿機、携帯電話の充電器、充電電池の充電器、デジカメの充電器、その他色々と充電器。
そして机の近くにあるコンセントは3つ。
…足りるわけがない。パソコン全部接続したらディスプレイ接続できなくなってただの電気食う箱になる。
でもタコ足配線はダメだっていうし。首里城が燃えたのはタコ足配線が原因だとか。
タコ足配線したい、でも家は燃やしたくないという方、はい、私です。
ではどんなタコ足配線なら安全なのか実験しつつ確かめていきましょう。
なぜタコ足配線は危険なのか
まず敵を知らなければ戦うことはできません。
写真は製品評価技術基盤機構より引用。
https://www.nite.go.jp/jiko/chuikanki/poster/kaden/191216.html
そこでなぜタコ足配線が危険なのかをまず知っておきましょう。
タコ足配線が危険な理由はずばり電流がいっぱい流れすぎるからです。
コンセントや電源コードにはここまで流していいよという電流の上限があります。
しかし上限を超えたからといってすぐにコンセントや電源コードが壊れるわけではありません。例えば雷などで上限の何十倍や何百倍もの電流が流れれば一瞬にして黒こげになることはあり得ますが、普通にタコ足配線しているくらいではそんなことは起きません。
ただし上限を超えて電流を流し続けると電源コードが劣化し異常な発熱をしてしまうことがあります。その状態が続けば溜まった埃に引火したり電源コードそのものが焼けたりして事故になります。
ジュール第一の法則によると、電源コード(導体)に流れる電流をIとするとその発熱量Qは
Q=I^2 x R x t
Rは電源コード(導体)の抵抗、tは流れた時間
という式で表されます。実際家庭の電気は交流なのでもっと式は複雑になりますが、ここで抑えておきたいのは、要は電流(I)が多く流れるほど(たくさんタコ足配線するほど)、抵抗(R)が大きいほど(あとで解説)、流れた時間(t)が多いほど熱がたくさん発生するということです。
ここでポイントの1つとなるのが抵抗です。抵抗は基本は一定なのですが、電源コードが劣化してくると抵抗も大きくなります。古い延長コードを使うとコードが熱くなる経験はありませんか?それは中の導体が劣化して抵抗が大きくなっていることを示しています。
また電源コードは普通に使ってても劣化しますが、上限を超えた電流が流れると劣化を早めます。それがタコ足配線の恐ろしいところです。
最初は、「大丈夫、ちゃんと使えている」、「ブレーカーも落ちない」などと思っていても次第に劣化が進んで事故になるということがあり得るのです。
安全にタコ足配線するなら
安全にタコ足配線する基本姿勢は以下の3つです。これで絶対安全と言うことはないので実施は自己判断でお願いします。
1 テーブルタップにテーブルタップを接続しない。
2 電力を大量に消費する機器は直接壁のコンセントに接続する。もしくは1口の延長コードを使用する。
3 電化製品の消費電力を把握しておく。
4 古い延長コード、テーブルタップはなるべく使わない。
1について、コンセントの空いている口があればさして使いたくなります。普通に買えるテーブルタップだとコンセントの口はせいぜい8口です。それくらいなら電子レンジやゲーミング用の化け物パソコンなど相当な電力を消費する機器を除外すれば電源コードの上限を超えることは稀です。しかし塵も積もれば山となるの通り、テーブルタップにテーブルタップを接続していくと無限にコンセントを接続することができます。通常テーブルタップのコードの電流の上限は15Aくらいなのですが、例え1台1~2Aの機器だとしても15台繋げれば上限を超えてしまいます。家電製品をいくつも持っている人がその電流値をいちいち把握できている場合はほぼないと思いますので不便かもしれませんがコンセントの口数を制限するということが事故を防ぐ1つの有効な手段となります。
2については、電子レンジならば1台で1500W、つまり15Aに簡単に達してしまいます。高性能なパソコンでも同様で例えばLenovo Legion T750i というパソコンの仕様を見てみると電力は650W、約6.5Aなので、それだけで上限の半分近くを使ってしまいます。その他電気ストーブや電子ケトルなど1台で大きな消費電力があるものについてはタコ足配線すると一気にアウトになります。キッチン周りについては、短い時間で多くの消費電力を削減する電化製品が多いので利便性の観点からタコ足配線して同時使用しないように運用でカバーするという方法もあります。私もそれでなんとかしようとしたこともありますが、実際短い時間と言っても一気に使いたくなるのであまりお勧めしません。レンジで何かを温めながらお湯沸かしてなんなら炊飯もしたいよね。
キッチン周りでタコ足配線したい場合はブレーカー付きのタップなんかがあると良いですね。
3について、大体電化製品にはよーくみると消費電力が書いてあります。
これはパソコンのアダプターですが、65W 20Vとの記載があります。またINPUTというところに100-240V~1.8Aとあります。このパソコンは入力電源で1.8Aの電流が流れると分かります。OUTPUTには3.25Aとありますが、これはアダプターからパソコンまでにどれだけ電流が流れるかを示したもので今回のタコ足配線にはあまり関係しません。
このように大体電化製品がどれくらい電流を使うかがわかっていればそれを15A以内に抑えれば安全だということがわかります。あくまで目安ですが。
注意すべき点として、電化製品によっては記載の電流以上の電流が流れてしまうことがあります。パソコンのCPUが120%稼働しているとか故障したりとかそういった場合です。
また電源タップによってはコードが細くて上限が低い場合もあります。
ちなみに私のデスク周りでは、
パソコン3台(1.8A + 1.0A + 1.8A)
ディスプレイ(0.7A)
スタンドライト(0.16A)
ギターアンプ(1.5A)
シュレッダー(1.0A)
プリンター(0.12A)
加湿器(0.27A)
除湿機(1.9A)
携帯電話の充電器(0.15A)
充電電池の充電器(0.18A)
デジカメの充電器(0.38A)
その他色々と充電器(色々)
と、合計で10.96A。全部同時に使うことはまずないですが、使ったとしてもセーフです。
4について、電源タップの寿命は約5年です。特に普段タコ足配線をしているようなタップは要注意です。
タコ足配線の危険度を探る実験
それでは簡単な実験です。
通常使用でどれくらい電線の温度が上がるか確かめてみます。
何も電気を使っていない時、非接触の温度計で測ったところ20.4℃でした。大体室温と同じです。
電子レンジで600Wの出力でモノを温めている最中です。22.2℃まで上がりました。
次に電子レンジ+電子ケトルでの湯沸かしも追加します。電流の上限を超える直前で24.1℃まで上がりました。その直後タップのブレーカーが落ちました。
このように普通に使っているだけで結構温度が上がります。
ましてや危険なタコ足配線をしているとどうなっているか考えるだけで恐ろしです。
ちなみにこの非接触温度計、体温測るモードと物の温度測るモードがあって結構便利です。
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