技術系最難関資格(らしい)技術士(電気電子)とってみた
技術士という資格があることをご存知の方はいらっしゃるだろうか。私も10年ほど前にそうゆう資格があるということを技術士本人から聞いて、「はぁ」としか答えられなかった記憶がある。それが数年前職場で技術士を取れということになって実際に取得したので記録として残しておこうと思う。
技術士とは
日本技術士会の説明(https://www.engineer.or.jp/c_topics/000/000009.html)によると、
「技術士」は、国によって科学技術に関する高度な知識と応用能力が認められた技術者で、科学技術の応用面に携わる技術者にとって最も権威のある国家資格
となっている。そもそも技術士と言っても技術部門が21個もあるのでそれぞれの部門においてプロフェッショナルだということである。私の場合は電気電子部門なので電気電子の分野ではその高度な知識と応用能力が認められたことになる。ちなみに部門の中でもさらに専門分野があり、私は電気設備が専門となっている。
資格を取る意義
技術士は業務独占資格ではない。例えば法律を扱う業務なら弁護士でなければできないことが多くある。天気予報は気象予報士でなければできない。電気工事は電気工事士でなければできない。しかし技術士でなければできない業務はない。
ではなぜ技術士を取るかというと、世の中には上記の様な資格はないものの高い専門性が要求され、かつ人々の生活に欠かせない重要な業務が数多く存在する。そのような業務にあって「高度な知識と応用能力」を発揮して科学技術を支える役目が必要だからである。
という口上はこれくらいにして、私はどうなのかというと、技術士は電気通信設備工事の監理技術者になるために必要であった。技術士は業務独占資格ではないと言ったが、各部門別に見れば技術士になることでできるようになる業務やメリットなどがある。その他の技術士の特典はこちらに書いているのでご参照いただきたい。
https://www.engineer.or.jp/c_cmt/katsuyou/topics/003/003488.html
私の会社で電気通信設備工事の監理技術者になれるものは多くなく、会社として必要とされていた。
資格取得までの流れ
技術士試験は1次試験と2次試験がある。1次試験は誰でも受験可能だが、2次試験を受けるには1次試験に合格していることと、所定の実務経験が必要である。なので1次試験に合格してからすぐに2次試験を受けることは基本的にない。実務経験には1次試験合格前の経験も入れることができるので私の場合は1次試験から2次試験までは2年ほど間が空いていた。
日本技術士会のwebページ(https://www.engineer.or.jp/contents/become_engineer.html)より抜粋
1次試験は誰でも受けられるのと、1次試験の部門と2次試験の部門は異なってもいいので、大学でちゃんと勉強していた人ならば1次試験はさっさと大学の専門分野に近い部門でとってしまった方が良いように思う。私は大学では理学系の専門だったため、応用理学部門で1次試験を受験した。
ただ、大変なのが、参考書がほとんどないことである。資格取得のための参考書は全部門共通の基礎科目と適正科目、そして人気の建設部門の専門科目くらいしかなく、応用理学部門や電気電子(技術士の中では比較的人気な方だけど)部門では過去問もしくはその部門における(資格のために書かれたものではない)専門書に頼るしかない。過去問を見ながら、それに関わる知識をwebや大学の頃使っていた書籍で勉強し直すと言った勉強方法でなんとか突破した。
2次試験はもっと大変である。2019年の試験から全科目筆記式となり、600文字原稿用紙を合計で9枚埋めなければいけない。試験勉強もそうだが、書く練習もしなければいけない。特に大学時代からパソコンが普及していて文字を書かなくなって10年以上経っている私にとってはかなりキツかった。試験のために新しいシャープペンシルと消しゴムを買った。また筆記試験が終われば口頭試験が待っている。口頭試験は筆記試験に合格してから考えようと思っていたのでとりあえず忘れた。
書き方のコツはあっても正解はないので、誰かにレビューしてもらう必要がある。私は受験の1年ほど前から会社にもう1人いた技術士の先輩に週1でレビューしてもらった。
そして迎えた初めての2次試験受験であるが、甘くみていた必須科目の択一試験で1点足りず不合格になった。今はもう択一試験はなくなってしまったのだが、当時はその択一試験で不合格の場合は、記述問題を採点されない制度だったため、必死に書いた記述問題も無駄になった。がんばったのに。
そして2年目に突入したが2年目は仕事が忙しすぎて試験を受けることすらできなかった。
3年目、試験制度が改定になり必須科目が択一問題から記述問題に変更となった。前回不合格となったところだが全然嬉しくない。負担が倍増になった。
3年もやっていると勉強中に「なんのために勉強しているのか」とか「技術士って取る意味なくね?」とか「試験問題では地球環境問題の解決とか偉そうなこと言っているくせに実際の技術士は地球環境問題解決してなくね?」とか「手、痛い」とか色々と邪念が湧いてきたがレビューしてくれる先輩の手前もありなんとか継続できた。さらに会社の元後輩で同じく技術士を目指している人がいてたまに連絡をとっていたのでそれも心の支えになった。一人では絶対諦めていたと思う。仲間を作るのは大事である。
そして迎えた3年目2回目の試験。試験が終わってから実際の回答を再現し、先輩にレビューしてもらったが、これでは合格は難しいとの話だったので半ば諦めて4年目を見据えた勉強をしていた。
その予想に反して筆記試験は合格だった。なぜ合格だったのか今でも信じられない。
成績はAでないと合格しない。選択科目の場合はIIとIIIのどちらかがBでも総合がAなら合格という場合もある。
急いで口頭試験の準備をした。口頭試験の合格率は高いがたかを括っていると落ちる。試験を受けてみてわかったが質問を想定して準備していないととっさに言葉が出てこない。試験時間は20分しかないのでその時間で自分の能力を評価してもらうにはそれなりに準備が必須である。
無事口頭試験を終え、開放感に包まれた。試験会場は渋谷だったのでこれからうまいものを食べることもできるし映画を見ることもできる。何しようかと思って結局したのは献血だった。別に献血したかったわけじゃないんだけどなぜか献血行こうかなという気分になった。
口頭試験もなんとか合格し、晴れて技術士になることができた。
口頭試験は一個でも○じゃない項目があれば不合格である。
2次試験のための勉強法
私の場合なので参考程度に読んでいただきたい。資格を取る気がない人は読み飛ばして構わない。
受験を決めた1年ほど前から始めた。
試験科目が必須科目1つと選択科目3つがあるのだが、その中でも選択科目の3番目の課題解決能力を問う問題で1800文字以内で、とある課題に対する課題分析、解決策、解決策の考慮点を記述する問題についてとにかく回答してみてそれをレビューしてもらうという取り組みから始めた。実際の試験では制限時間があるが、最初は時間を気にせず、かつわからないことは調べまくってもいいのでとにかく文章としてまとめることに重点をおいた。最初から時間を気にしたり大した知識もない状態で何もみないで試験同様に書き始めても全く成長しないのでやめた方がいい。
最初は1つ書き上げるのに1週間くらいかかった。文章にする力が全くついていないことがわかった。また、時間がかかるので最初は紙に書かずにwordなどの文章作成ソフトを使った。wordで試験の原稿用紙に近いフォーマットを作成してそこに書くようにした。自然と1枚ごとに主題をまとめたり段落を意識するようになるのでおすすめである。
そのうち筆を止めることなく数時間で書き上げられるようになった。そうなったらたまに選択科目の1つ目や2つ目に取り組んで専門知識についても高めていくようになった。
試験にチャレンジしている最中で試験制度が変わり必須科目が記述式になったので必須科目についても記述の勉強を始めた。その頃には1週間に2、3個書くこともできるようになっていたので朝早起きしたり仕事が暇なときに上司に許可とったりして書く練習をしていた。
それも慣れてきたら時間内に書き上げられるかという練習を始めた。実際の試験の2、3ヶ月前だったと思う。
試験では計算機や定規を持ち込めるが、定規は透明なものでなければならない。試験中に透明じゃない定規を没収されている人が何人かいた。
口頭試験はとにかく想定問答を何度も繰り返した。想定される質問とその回答を表にまとめて何度もしゃべる練習をした。
実際の口頭試験ではかなり抽象的な質問が多かった。「コミュニケーション力を発揮した事例を教えてください。」みたいな。回答は技術士のコンピテンシーに沿っていることが必須なので技術士会のwebページ等で技術士のコンピテンシーを熟読する必要がある。
取った後
本来ならば日本技術士会に入って技術士同士の交流やセミナーへの参加等あるのだが、今年は基本会合のようなものはないもしくはフルリモートなので他の技術士との交流は今のところない。
また、業務としての優位性なども今のところ感じていない。一応社内で表彰的なのもらったけど。取る前から感じていたことだが、この資格は取ることが目的ではなく、取ってからどういった活動をするのかが重要な資格なので、取る前に感じていた技術士への疑問などを今度は技術士側として解消していく努力をしないとなと思っている。
電気通信設備工事の監理技術者にはなれた。
一番のメリットはもう試験勉強しなくていいことかな。