シニア転職体験記5
面接に向けて準備することは1点のみ、応募の動機を聞かれることへの回答だ。何とか頭の中を整理をすることができた。面接当日、事務所に到着し、会議室へと案内される。丁度事務所を横切る形になるため、女性職員の好奇な眼差しを感じながら会議室に入る。そこにはどう見ても自分より先輩と思われる18個の眼があって、こちらの動きを注視している。まるで値踏みされているようだ。1対9人の面接など経験したこともないし聞いたことないぞと少し不安がよぎるが、努めて平静さを装うようにした。着席するなり冒頭から職務経歴書をまず説明してほしいと言われる。IT企業を38年間大禍なく勤めたことや、健康で楽天的な性格などありきたりなことを説明した。そして、特技とアピールポイントだ。これといった特技を持たなかったが、握力だけは人並み以上にあったので握力に自信あり、右60kg左55kg。それに加えて状況把握力と人心掌握力にも自信があると書いた。説明後、9人の表情を見ると少し笑みが溢れている。こちらも少し緊張が溶けてきた。続いて想定内の応募動機の質問がきた。本音は、単純にシニアの就労支援の業務に興味があっただけだったが、「前の会社では後半、ネットワークの仕事をしていた。企業と企業を、企業とインターネットを繫ぐ仕事だ。これからは企業と人をあるいは人と人とを繋げる仕事をしてみたかった。」と説明した。ここは少し熱弁をふるう場面だと思い、つい力が入ったのを覚えている。その後いくつかの質疑応答があったがよく覚えていない。面接が終わり、それから1週間後に内定通知を貰う。前の会社の退職日の1週間前、2020年3月、62歳の誕生日当日であった。巷では新型コロナウイルスの脅威が話題になりつつある頃であった。続く。