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共産党員のエリート意識と中国という学歴偏重社会(4)

中国は、昔から「科挙」で選抜された受験エリートが皇帝直属の官僚となり、広大な領土を直轄統治してきたのです。「科挙」に受かったエリートたちは、自らの知力と正当性に圧倒的な自信をもっていました。日本の世襲の役人による地方自治的な封建主義とはそこが違うのです。日本ではそのことによって多様な地方文化が花開きましたが、中央集権の直轄統治を可能にしてきた「科挙」(その実態は腐敗していたかどうかは、余り重要ではありません。ここでは社会の制度設計のことをいっています。)のある社会とはそこが違ったのです。    
それと同じことが現在の中国の統治でも行われているんだよっていうだけの
ことです。

中国には統治する側(皇帝と直属の官僚たち。)と統治される側とがあり、
「科挙」は、その両者を区分する方法でした。ほとんどの人口が文盲だった当時、四書五経を読みこなし、漢詩を自在にする能力をもつものは、本当にごく少数でした。それらがエリートとして統治して君臨する社会が伝統的な中国なのです。そして、その根本的な構造は、中国共産党が下克上を果たしてからも何も変わらないのです。  

日本では東大や京大を出てても学歴だけで人間性や能力を判断すべきではないという良識があります。しかし、中国には「科挙」の歴史と「士大夫」という読書人層が2000年前からあり、社会に根を張っていたのです。人文主義の儒教の理想といってもいいかもしれません。学歴エリートに対する世間の目が違うのです。すなわち、日本の学歴エリートなどとは、その社会的承認の度合いが違うのです。中国に置いて共産党を批判する勢力が現れないのは、そのためです。

単に、強権的な弾圧があって自由がないからだという理解は根本的に間違っています。中国の民衆は統治は、「科挙」を通った優秀な連中に任せておかばいいと考えている。そのことが一番の理由です。語弊がありますが、中国には歴史的に人間は「平等」だという日本人が昔からもっている思想がないといってもいいとおもいます。バカと知的エリートの区別は歴然としてあるのです。特別に優秀な社会的エリートである「科挙」の合格者とそれに至らない愚昧な民衆がいるだけです。その事は今も変わらないのです。知的エリートは当然道徳を具備していると考えるのです。     
もちろん東大生の中にも、ろくでもない奴らがいます。道徳だけでなく、知力においても、それこそ「人並」でよく東大に合格したもんだと思える人材も少なくありません。  

しかし、中国共産党は、東大クラス以上の精華大や北京大の学生の中からさらに優秀なものだけを共産党員を選別するのです。もちろんその段階において、コネの問題は必ずあると思います。しかし、それでも精華大学や北京大学に堂々合格する程度の知力はあるのです。
法政大学という二流の私学から国家のトップが選ばれるということは中国共産党員としては、ありえないことであり、それそのものが日本を小馬鹿にする理由になるのです。そもそも民主主義それ自体を小馬鹿にする理由になるのです。  

Yさんがいう「人並」の意味が解りませんが、そういう偏差値が高く、知能指数の高い奴らが、中国共産党というエリート集団の母胎なのだということを理解しておいてください。民衆と同じという意味における「人並」であれば、インターネットが発達した現代、共産党の一党独裁が続くはずがないのです。    

彼らにとって、IT企業の成功者も人民解放軍の勇者たちも皆、共産党というエリート集団に奉仕するための社会の落ちこぼれたちなのです。さしづめ、IT企業の成功者は、中国に富をもたらす「鵜」に過ぎず、共産党が「鵜飼」なのだという認識です。  
毛沢東や周恩来らの第一世代は、共産党員といっても雑多な層からなっていました。学歴エリートが共産党員の中心母胎となるのは鄧小平の統治によって中国が政治的に安定してからのことです。江沢民の時代には起業に成功した資本家も共産党に迎え入れられましたが、その辺りから、共産党は成功するための狭き門としての登竜門となりました。胡錦涛、習近平になって、今は、ほとんど100%学歴エリートが共産党員の資格となっているというのが、僕の周囲にいる中国共産党ウォッチャーの見解です。嫌みな体制ですが、アメリカの分断の原因と結果が学歴エリート支配だといわれることと符牒しています(民主党が学歴エリートで共和党が白人大衆という歪な分断です)。
 
なお、僕は、そんな中国社会を称賛しているのではありません。もともと受験地獄は中国から生まれたものであり、そこには2000年の歴史があるのです。単に先祖返りしただけです。
そして、そのことこそが中国の中国たる所以であって同時に弱点なのだといっているのです。中国の歴史をみればわかります。王朝の瓦解は、外圧と内部分裂の繰り返しでした。「科挙」による頭脳選抜による学歴エリート支配体制を決して称賛しているわけではないということを誤解しないようにしてください。
(MLでのやりとりから)
共産党員のエリート意識と中国という学歴偏重社会 
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