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独立自尊の気概を失った国家の末路
映画「コスタリカの奇跡・積極的平和国家のつくり方」
コスタリカの非武装のことは、久しぶりに聞きました。
コスタリカは、常備軍を廃止しましたが、予備役があり緊急時に軍備をもつことは憲法上も認めています。軍隊の廃止と常備軍の廃止は別物です。警察は自動小銃やバズーカ砲で武装しており、米軍主催の合同軍事演習にも軍隊として参加しており、国境警備や海上監視も行います。
手薄になった軍備は、駐留米軍が補完しており、中南米の社会主義のリーダーであるキューバと対峙してきました。アメリカ軍も変に軍隊をもってベネズエラのよう
になるくらいなら、アメリカ軍に依存する構造を維持してもらったほうが都合がいいと考えている節があります。逆に、腐敗した政権の側は、常備軍によるクーデターの恐怖から逃れられるわけです。結局、日本以上に政治も経済も軍備もアメリカに依存するゴマメ国家になってしまいました。教育に力を入れているとはチャンチャラおかしいですね。独立自尊の気概を失った国家の末路は、コスタリカを通じてみえてきます。
そのため、コスタリカに対しては、中核や革マルやブントといったかねてよりキューバを支持してきた左翼陣営からは米国の「傀儡」として非難されるようになりました。
コスタリカの非武装平和を称揚したのは、大阪弁護士会の共産党員である梅田弁護士です。彼が中心になって行なった共産党発のキャンペーンでした。時代のブームになり、それに応じてコスタリカを見学してきた弁護士や学者連中がレポートを書いて国内宣伝に務めてきました。都合のいいところだけみてするプロパガンダの一翼を担ったわけです。北朝鮮のプロパガンダを政治家や大江健三郎のような進歩的知識人が担ったのと同じ構図がありました。
梅田弁護士は、10年程前に大阪府知事選に立候補して敗れているので、その名前を覚えているかたも少なくないと思います。私は、大阪弁護士会の憲法委員会で、梅田弁護士とも議論を闘わせてきました。
かつてはコスタリカのことは、日本独自の平和主義を指し示す希望の星でしたが、
今では、その実態も知られるようになり、手ばなしで称揚されることは少なくなりました。保守側の反論よりも左翼からの攻撃が応えたようでした。
件の映画上映は、逆に、9条護憲派がいかに偏った情報を論拠にしているかを
明らかにできる機会かもしれません。
(H30/8/16)