【徳島に乾杯 クラフトビール➂】買って飲むだけでゼロ・ウェイストに参加 「RISE & WIN Brewing Co.」(上勝町)
徳島県上勝町に醸造所を構える「RISE & WIN Brewing Co.(ライズ アンド ウィン ブリューイングカンパニー)」が目指すのは、サステナブル(持続可能)で、誰もが飲みやすいビール造り。本来なら廃棄される農作物を素材として利用したり、他の企業と協力して売り上げの一部を環境保全のために寄付したりとさまざまな活動を行い、種類豊富なクラフトビールとともに発信している。
食品衛生管理会社「スペック」(徳島市)が上勝町のゼロ・ウェイスト(ごみゼロ)活動に共感し、2015年に開業した。醸造や販売などの事業を通してリデュース(ごみ削減)、リユース(再利用)、リサイクル(再資源化)に取り組む。現在は醸造過程で生じるモルトの搾りかすを液体の肥料にし、それを用いて育てた麦でビールを生み出す資源循環システム「reRise(リライズ)」に挑戦中だという。
主な商品は、果汁を搾った後に廃棄される上勝町特産の香酸柑橘・ユコウの果皮で香りづけをした「カミカツホワイト」(330ml入り、660円。価格は店舗によって異なる)や、形や大きさが出荷規格外となったサツマイモ・なると金時をローストして使った「カミカツスタウト」(660円)など5種類。そして期間・数量限定といったスペシャルビールが加わり、店頭には常に10種類ほどが並ぶ。
店長の池添亜希さん(39)=三重県出身、上勝町在住=は「お客さまに楽しんでもらうことが一番です」とクラフトビールの魅力を語る。普段ビールを飲まない人にはサワービールがイチ押しだという。基本的なアルコール度数が4・5%と比較的低く、乳酸菌発酵のため酸味がありのど越しも爽やか。材料にユコウやラズベリー、藍を使ったものもある。
アメリカ・オレゴン州ポートランドの醸造所とコラボし誕生した「Going Postal」(770円)は、トロピカルな香りとユコウの爽やかさ、グレープフルーツのような酸味があり飲みごたえ抜群。阿波藍も使用している。
夏にピッタリなサワービールとして池添さんが挙げるのは「ビヨンドザシー」(660円)だ。愛媛の伊予柑と上勝のユコウのフルーティーな味と香りの中に、海塩のほのかな塩味がある。ランニングといった野外活動の後にのどを潤したり、バーベキューで海鮮と一緒に味わったりするのがお薦めだそう。
「マダガスカル・バニラミルクシェイクIPA」(990円)は、環境に優しい農法で育てたアフリカ南東部の島国・マダガスカル産のバニラをふんだんに使用しており、甘さの中にユコウの苦味や酸味がアクセントになっている。同国の環境保全や農業振興のため他の企業と連携して、途上国の農作物や製品を適正価格で輸入する「フェアトレード」でバニラを入手し、ビール1本につき15円を現地のNGOに寄付する。
「ビール1杯には伝えたいメッセージがたくさん詰まっています。でも、それに気づくタイミングはお客さま次第です」と話す池添さん。掲げるメッセージ「JUST DRINK KAMIKATZ BEER!!」には、「美味しいビールを楽しむと”ちょっと良いこと”に繋がっている」との意味が込められている。「ビールを買って飲むだけで、気付けばゼロ・ウェイスト活動に参加している。気負わずカジュアルにビールを楽しんでもらいたいです」
醸造所にはビールを楽しめるタップルームやレストラン、バーベキュー場などを併設。自分たちの活動を知ってもらおうと、予約制で醸造所の見学や地元食材を使ったランチを提供するツアーを行っている。商品は醸造所併設の販売所やECサイトのほか、阿波おどり会館(徳島市)、産直市・みはらしの丘あいさい広場(小松島市立江町)で購入可能。徳島市の一部酒販店などでも取り扱っている。(2023年6月取材、商品や価格などは取材時点のものです)
〔RISE & WIN Brewing Co.〕
オープン:2015年
住所:徳島県勝浦郡上勝町正木平間237−2
営業時間:平日=午前10時~午後3時、土日祝=午前9時~午後3時
定休日:月、火曜と毎月第1水曜
駐車場:11台
HP:https://kamikatz.jp/
連絡先:HPのお問い合わせフォームから
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小規模醸造所で素材や製法にこだわって作られる「クラフトビール」。徳島県内でもブリュワリーが相次いで誕生しており、スダチやウメなど地元なの素材を使ったものも多く、個性的で多種多様な味わいは初心者にもオススメ。人気を集めている県内のブリュワリーを巡ってみた。