ヴェールの陰へ

こいつがあんまりおもしろくて感想を連ねているやつの続きです。

“翳りのヴェールを裂いて”——マイナー『ケムダーのヴェール』。
使用すると隠密状態になる『ケムダーのヴェール』を越えて百入さんを見つけ出すためのシーン。

物語に沿った敵、物語に沿った挑戦、物語に沿った難易度とそれを乗り越える事を可能にできるかどうかの両立——物語をどうやってゲームに落とし込むのかはいつだってGMが苦心する事だ。
やりそうな行動のリストアップとゲームに落とし込むのが上手い。
なんて、自分にも自信があるからわかるんだぜとでも言いたげに偉そうに書いているけれど、実際このテキスト群は悲鳴みたいなでやつなのはわかってほしい。
いやなんでこんなに落とし込めるの!?
難易度の加減もめちゃくちゃ上手くない……!?
それなりにできそうで、でもこっちにもリソース割いていればもっと楽だったなあって思うくらいを突いてきてないか……!?
その上で「戦うのはめちゃくちゃ得意だからてきとうに戦って後をやりやすくしよう」っていうのがバランスの緩衝材としても、彼らならやりそうって意味でも絶妙なんだよな……

登場侵食、やっぱりめちゃくちゃ怖いルールだ。怖くない……???
その上で怖いのを「ウワーッ事故った!?」とかゲラゲラ楽しむやつだし、その上で「非日常はオーヴァードの胃とかにもよくない」って見えて良いルールなんですけれどね。

改めて確認されたところまできたので改めて挙げるんだけれど、「別に全部無視して百入さんを見つけても構わない(理論上は不可能ではない)」のが状況をしっかり表していて好きだ。
百入さんを見つけるのは不可能に近い。
不可能ではない。奇跡が起きれば、いままで誰も見つけられなかった隠密能力者を見つける事はできなくもない。そういう目標値から始まる。
誰かの協力を得て、UGNの動きを抑えて動ける状況を作り出し、痕跡を辿れば現実的な難易度になる。
このあたりの「全部まとめて解決しようとすると無理そうな最終目標を提示する」やり方はAの魔法陣がルールを整備しているゲームだと記憶しているのでこれもいつか遊んでみたいゲームだ。
《工作員》の30って数字を見かけた事がある。
めちゃくちゃ凄いやつが組織のバックアップも受けて潜伏するのを前情報なしに見破るための目標値——そういうイメージで押さえている。
それよりさらにひと回り上というのがめちゃくちゃに格が高くて好きだ。
もちろん周りの状況(捜索にかかりきりにはなれない!)も加味してのこととはいえこれだ!

NPCカード、初めて触れたのはダブルクロスリプレイ・アカデミアだったかなあ。
それともアリアンロッド・サガだったかもしれない。
協力にゲーム的な効果のあるNPCをカードにして見せる。効果をもう使えなくなったら裏返すなり何なりすればわかりやすいし、単純にカードが手元に来るのは嬉しいし、協力してくれているって具体的な形になって嬉しいやりかた。
イラストを添えたなら顔も見せられるし、忘れられて「こんなの居たっけ?」とか言われたりもしない!
おそらく古くから使われてきたテクニックだけど、名前が付いて広く使われるようになったのは最近のことなんじゃないかなあ。

物語としてはあんまり綺麗じゃないけどゲームとしてはめちゃくちゃ面白いあんまり話した事のない組み合わせ!
そう、こういうのが見られるからゲームなんですよ!

PCたちのリソース配分の話。
負担が自ずから偏っちゃうルールだから、どうやって死人を避けるかの気遣いが戦闘外でも必要になってくるのが面白いところ。日常と地続きの事件を扱うゲームだもんな……

シーンを始めるのはNPCからって意味でも《ヴリトラ》が大所帯なのはめちゃくちゃ有効なんですよね。
仲間うちで集まるシーンをNPCから切り出せるし、ばらけて行動するシーンで誰もいない場所に行くキャラクターに同行者も付けられる!

以前のエピソードを引いてくる!
だからこの場所の線は薄くて、先に埋める!
やはり理由付けがめちゃくちゃ上手い。

メイ、何に反応していたんだろう。

どうにも場面の配置にばかり目が向いて会話を流れから切り出すのが難しくなっている。
会話は流れで、流れが綺麗だというのはそれだけですごいことだ。
そんなにひっかかりのない会話を一人でだって書けるか?

女の子ふたりで「大丈夫だよ!」「やっていきましょう!」って気合い入れてるのめちゃくちゃかわいいな……

今エピソードだとわりと江永さんの過去にも触れてるのが面白い。
導入として彼女の知っているこれまでを伝えて、これから彼女の知らない事を叩きつけるための準備をしている……

“数少ない悪いところ”、ほんとにな……

「絶対無駄遣いしてるよ」前後、ほんと好きなんだなあ……っていうのが良い。
だれかがだれかを好きだっていうのはやっぱりそれだけですごいことですよ。
こういうわるいうわさっぽい話題の声音はめちゃくちゃ優しいやつ、つよい。
ぽつぽつとした会話でさ……

烏羽くんと椋実さんにはとっくに家族で、つるばみさんも家族(兄以外をそうだと認めるのはめちゃくちゃハードル高かったろうに!)だと思おうとしていて、百入さんにとってはまだそうではないのが面白いところ。
百入さんにとっては「自分がいついなくなっても構わない(影響の出ない)場所」なんですよね、ヴリトラ……そりゃいくらかは悲しむだろうけどGMに「百入さんのロイスをタイタス化してね」ってにっこりされても大して困らないって思っていそうというかさ……置いて逃げるのを躊躇ったとしても、もちろん手詰まりになる前に見捨ててくれるだろうと思ってるというかさ……

転がる会話の流れがめちゃくちゃ美しいのがつるばみさんのシーンなら1文1文がめちゃくちゃ斬れ味鋭く向かってくるのが烏羽くんのシーンだなあ。
単にかっこいいへの反応の方が鋭いのかな、自分。うーん。なぞです。

自分のマスタリングだと「ほうほう裏口ね、いいねえ」くらい言っちゃうので、マスタリングで話しているレイヤーが違う感じ。GMにな、プレイヤー発言くらいのレイヤーに比重を強めに置いているけど、その分のリソースを物語に割いた方が物語も格好よくしやすいもんな……
これは狙って真似するにしても、もっと場数を踏めるようになってからたまに試すくらいに留めたい。

つるばみさんと会ったくらいなんだな……この頃人と会ったの……

「ずっと若いな」は立ち絵を見て出てきたせりふかなあ。画像を使う強みがこれだ。
テキストで表現しなくても画像から反応を引き出せる。
つまり……外見描写のいくらかをPCの発言に委ねる事ができる……!
小説なら当たり前に使われるテクニックをプレイヤーとのやりとりで使ってしまう。
やっぱり画像って強いなあ。

“年齢不詳で通せていたのなら嬉しい”めちゃくちゃ格好いいせりふだ。

手伝うのを申し出る理由として、実利を挙げた上で情も挙げる。相手がどっちに反応するのかを見ればどんな人間か見やすいってものだ。実利の事を考えないなら状況の見えないあほだし情が通じないなら付き合い方は考えるべきだ。いずれにせよつるばみさんを置いておきたい場所でもなくなるだろう。

この場所に来たのが椋実さんでもこの条件ならきっと迷わず頷いたのだろうなあ。
つるばみさんが相手だと……どんな条件を挙げていたんだろう。同じかな。どうかな。すごく話しづらくなりそうだ。

“そして、彼女は......大事な友人の妹なんだ”“友人? ああ......”ってやりとりでふっとかれが笑うのが見えたようで好きだ。

烏羽くん、すでに『普通』の善良さを持ってるもんな……あとは普通に過ごせる居場所……

質問がさあ!!!
質問をする、って、相応の実力と相応の理解度がないとできないんですよね。

足を洗う機会を与えたいっていうのがなあ、ほんとなあ……
「決着をつけないと聞かないだろう」でも「いいんじゃないか」でもなく、「いずれにせよ決着をつけなければいけないだろう。その上でやりたいならやるといい」って答えなのが真面目に向き合って答えてくれた感あります。

“君は、過去に追いつかれる時が来た”エピソードで“きっと、いずれは過去に追いつかれる時が来る”って重ねてくるのめちゃくちゃ格好いい……格好良くない……?


盗んだバイクで走り出す場合じゃないんだよ!!!
戦闘状態だけ抜け出したらいつでも撤退できるMMO人生だからって好き放題やるよね……げらげら笑ってしまう。
やっぱりコミックリリーフってめちゃくちゃつよい。
「そんなにバイク似合ってた?」じゃないよ!!!
1行ごとに笑っちゃうのですぐにむせてしまう。
めっちゃ振り回される舘原さんも災難だな……

舘原さん、どうも口調をこういう風にしてきた由来とか考えて同情しちゃうし彼女はきっとそういうのが一番嫌いなタイプだ……

どんどんどんどん遡っていく「いつからうるさかったか」!

もう話題を切り替える落差だけで笑えちゃうのつよすぎない???

クロイドン・キャット・キラー、こんなに長かったら覚えづらいよね、言いづらいしね……って椋実さんが覚えてないのもちょっと納得しちゃうけど完全に椋実さんが悪いやつなのでは???

“助かり翔利”じゃないよ!!!

ここで「やるからには完全勝利だろ」ってめちゃくちゃ素で出てくるの格好いいんだよな……

“「オレ達は悠々生存! 沖縄で談笑! 完全勝利!」自分を指差し「翔利なだけに」”
やたら語感のリズムが良いのが笑っちゃう。談笑と勝利で韻を踏んでる場合なのか。

丹村くんとはカテゴリ違うけど確かに同じ枠かもしれない、どうだろう。
丹村くんは「めっちゃ女の子とお近づきになりたい(相手の事を見る気はない)」で椋実さんは「アホな事を言うと楽しい(相手のシリアスさ加減を気にする気はない)」って感じなので……

人への好意とかあんまり持ってなさそうな、P感情を有為で固めたりN無関心ばかり表にしてそうなひとが“私も、クラスメイトが消えると少し寂しくなる”って出してくるの、単純に強いな……

MMOみたいなことしよってからに……!
椋実さんの挙動、だいたい笑っちゃう。つよい。


NPCのいないシーン。
挿入するのはただのアホか、GMが制御しなくてもうまくまとめてくれるって信じているかだ。
GMにながやらかすのはまあ前者なのだけれど、このシーンがどっちなのかは……言うまでもあるまい。

聴覚にめちゃくちゃ訴えてくる背景描写。
珪素GOと勇者のクズでこの界隈の方々を知っただけにわかっていたけど、やっぱり活気があるのにどことなく寂しいとか、感情の誘導がめちゃくちゃ上手いんだよな……

どうでもいい事を話した相手もいるかもしれなくて、それを「あれを狙えばひどい事態を狙えるな」と見るのはどんな心持ちなんだろう……それも、リンクスコールの関係が冷えきる程度には善性を持ち合わせた彼女が、というのは。
できてしまう、というのが、考えなきゃいけないっていうのが、なかなか切ないものがある。

日直欄にサインを残すの、格好良いなあ。

ノートの端の方とかに落書きをしている程度の女の子の絵……

キャット・キラーだから猫にバツなのかなあ

避難訓練のプリント、たどり着くたびに泣いちゃうんですよね。
めちゃくちゃスマートな“同僚には悟られにくいやり方”で、そこまでする相手で、そこまでして逃げてほしいんだよな……

◯執着/不安、ルールブックのロイスの表にあるワードながらあんまりにも綺麗にハマる。表が上手いのか使う側が上手いのかその両方か。
不安、“ちゃんと逃げてくれるのか”なのがな……ほんとな……

ここで消えて判定するのが、あんまりにも物語と噛み合っていて笑っちゃう。
失敗するのもUGNの包囲のせいで百入さんですら逃げ回る以上の事はできていないって印象が残る。UGNの包囲は別に調達の難易度には影響しないのにね!

さ、さすがに次のシーンからはサブタイトルがキャラシートの並び順とは別になった!
最初の2つ、もっともよく使う2つを最初に拾ってきているのが印象的。

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