アルミ材の精密板金加工について
アルミ材は、スチール、ステンレス材に続いて、精密板金加工で用いられる材料です。アルミ材の特徴を挙げつつ、加工方法、用途について考えてみましょう。
アルミ材の特徴
・金属の中では軽い。比重2.71
・板曲げの際、ヒビが入りやすい。
・溶接しずらい。
・柔らかい、キズが付きやすい。
・熱伝導が良い。
・価格が高い。
・金属の中では軽い。比重2.71
スチールの比重 7.85
ステンレスの比重 7.93
チタンの比重 4.51
スチール・ステンレスのおよそ3分の1
チタンのおよそ2分の1
の比重になっています。
やはり他の金属より軽いため、軽量化を図る目的で使用されることが多いです。用途として例を挙げるとすると、溶接を伴わないカバーやボックスなどに使われることがあります。人の手で持ち運びされる用途の場合、軽い方が使い勝手が良くなります。
・板曲げの際、ヒビが入りやすい。
アルミは合金材です。純アルミの柔らい性質を改善するために、マグネシウムなどが加えられています。アルミ材は大きな塊を圧延機にかけて均等に伸ばしながら、指定の厚みになるよう薄くしていきます。そのため、材料には圧延方向が生まれます。圧延方向は伸ばされた方向で、圧延方向に対して直角に曲げる場合は問題ないのですが、圧延方向に対して平行に曲げると、曲げた部分が伸びきれずにヒビが入ることがあります。特に板が厚い場合や鋭角曲げの時などは、素材が伸びきれず、ヒビが入ったり、曲げ部分にしわのような模様が出る場合があります。強度的にももろくなってしまいます。
・溶接しずらい。
アルミ材は融点が低く溶けやすいため、薄い板などはTIG溶接機で溶接しようとすると穴が開いてしまいがちです。そのため、高い技術が求められます。
またアルミ材は熱伝導に優れているため、溶接の際の熱が材料に伝わりやすく、熱変形の原因となります。
溶接部分は、他の部分に比べ強度的に弱くなってしまいます。そのため、継続的な負荷や振動により経年劣化を起こしやすく、破損の原因となる場合があります。
その為、アルミの接合には溶接を避けて、ねじ止めやブラインドリベットによる接合が行われます。
溶接でもファイバーレーザ溶接は、接合部をピンポイントで溶かして溶接するため、熱歪みを抑えながら溶接することができます。
・柔らかい、キズが付きやすい。
他の金属に比べ柔らかいため、加工キズが付きやすいです。タレットパンチプレスで外周部分を追い抜き加工する場合など、加工途中にアルミ材の粉がパンチのストリッパープレート部分に付着してしまい、板表面部分にとりの足跡のような打痕がついてしまいます。
折り曲げの際も、柔らかさの影響で、ベンダーの下型の跡が表面についてしまいます。外観を気にしない部品などは問題ないのでしょうが、カバーなどの外観部品の場合は、材料に養生シートを張って曲げキズを軽減したり、曲げの際、キズ防止シートなどを敷くなどの対策を行います。
・熱伝導が良い。
放熱板などに使われます。またアイスのスプーンなどに使われる場合もあります。熱が伝わりやすいということは、接する部材の持つ熱を奪うことができるということですので、熱いものを冷ましたり、冷たいものを溶かしたりすることができます。
・価格が高い。
材料費が割高になります。
価格ばかりではなく、強度や重量、加工容易性などを考慮した上で、材料の選定にあたる必要があります。
また、国内材と輸入材との価格差も10%から15%ほどになります。ボリュームがあるときは、輸入材を使うことでコストダウンを図ることができます。少量の場合は運賃が発生しますので、その分コストを押し上げることになります。
今後とも使用機会が増えていくことが予想されるアルミ材ですが、加工実績を増やしながら、新規案件の獲得につなげていきたいと思います。