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もうひとつのラブストーリー(32)「プロポーズ」
婚約指輪のサイズを確かめる為に、事前に指輪を一度プレゼントしておきました。
そして、一人で同じお店へ。
指輪のサイズと予算を話して、店員さんに指輪を選んでもらいました。
よく給料の3ヶ月分とか言われましたが、そこまでのお金は出せなかったので給料の1ヶ月分の予算でいきました。
いくつか選んでもらった指輪の中から、「ちえ」に一番似合いそうな指輪を買うことにしました。
さて、プロポーズの当日です。
いつものようにアパートでゆっくりした後に。
「ねえ「ちえ」、夕飯は、あの夜景が見れるレストランに行こうか?」と言うと。
「う~ん、行きたいんだけど、二人の財布の中身がね⋯。あんまりないんだよね⋯」
「良いよ、今日は俺が奢るから、行こう」
という事で、それから2時間ほど車で走ってレストランへ。
「ここのレストランって予約制じゃないんだよね。これだけ流行ってれば予約制でも良いっても思うんだけどな」
「そうだね。せっかく来ても入れないと残念だからね」
時間が早目だった為に、運良く席が空いていました。それも、海も夜景も両方見られる最高の席がです。
「ラッキーだな、こんな良い席が空いてるなんて、今日はついてるかも」
「ホントだね。超ラッキーだよね。普段の行いが良いからだよ」
一時間ほどレストランにいて、ホントはもう少しいたかったのですが、待合席がいっぱいです。
私は、待つことが嫌いなのですが、人を待たせることも嫌いです。
「混んで来たから、そろそろ出ようか?」
「うん、そうしょう。落ち着かないからね」
車に戻ると「ちえ」が「ねえ、この後どうする?私は、まだ、時間あるけど」
「うん、じゃあ、あそこ行ってみようか」
「あそこって⋯」
「あそこだよ。方向音痴の「ちえ」でも行けば分かるって」
それからさらに、車で2時間ほど走って例のところに。
「やっぱり、ここは穴場だな、車が一台もなくて良かったよ」
「「トクちゃん」、ここって」
「そう、ここは、ここ」
二人で手をつないで階段を上がっていきました。
途中の踊り場で、ベンチに座って一休み。
「ここの磯の香りと夜景が好きなんだよね」
「ホント、ここって良いとこだね。二人の記念の場所だし⋯」
それから二人でもう少し階段を上がったところの踊り場までたどり着きました。
ベンチに座って、しばらく夜景を見ていました。
「なあ「ちえ」ちょっと目をつぶってくれない」
「えっ、なんで」
「なんでも良いから、ちょっとだけ目をつぶって」
「うん」
そして、ポケットに入れておいた婚約指輪を取り出すと「ちえ」の左手の薬指にそっとはめました。
サイズはピッタリです。
「目を開けても良いよ」
それから「ちえ」の正面に回って。
「〇〇ちえさん、俺と結婚してください」と言うと。
一瞬の沈黙が⋯。
見ると「ちえ」の目から涙が溢れています。
「ちえ」返事は?
「「トクちゃ~ん」。私、待ってたよ。ず~っと待ってたよ。急かさずに、待ってたよ~」と泣きながら抱きついてきました。
「YESかNoか、聞かせて」
「もちろん、YESだよ~。「トクちゃん」ありがとう 」
もう「ちえ」は泣きじゃくっています。
そんな「ちえ」を抱きしめると、洗った髪の香りがしました。
「これで俺達は、婚約者だ、もう、誰にも「ちえ」を渡さない」
「誰かに告白されたしても、今までみたいに全部断る、だから結婚しよう」
「う、うん。」
「あのストーカー野郎も、これで諦めてくれと良いな」
「うん⋯」
「ちえ」は泣きじゃくって、もう言葉になっていませんでした。
「ちえ」が泣き止むまで、二人でベンチに座っていました。
「色々考えたんだけどさ、やっぱりプロポーズの場所は、ここが一番かなって思ってさ」
「うん、そうだね。ここは、二人の記念の場所だからね」
「私、今日のこと絶対に忘れない」
「俺だって忘れないよ」
「私、良い奥さんになるから」
「うん、じゃあ俺は悪い旦那さんになる」
「もう、「トクちゃん」!こんな時に茶化さないでよ」
「ゴメン、ゴメン。俺から二つお願いして良い?」
「なに、お願いって」
「一つは、結婚しても空手は続けること、それでもう一つは」
「俺より一日でも長く生きて欲しいんだ」
「俺は「ちえ」を失ったら生きて行けないし」
「さだまさしの「関白宣言」みたいに「ちえ」のおかげで良い人生だったって言ってから死にたいんだ」
「そんなあ⋯。プロポーズの日に、死ぬことなんて言わないでよ⋯」
「ハハハ、ゴメン、ゴメン」
「でも、そういう気持ちがあるってことは覚えておいて欲しいんだよね」
「うん、了解」
「でも、私は、できれば「トクちゃん」と一緒に死にたいんだけどなぁ⋯」
「うん、もう死ぬ話はやめよう」
「そうだね」
「俺、不器用だからサプライズのプロポーズができなくてゴメンな」
「良いよ。これだけでも十分、サプライズだよ」
「じゃあ、そろそろ車に戻ろうか」
つづく
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