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「ちえ」⑤「告白の場所」
巨大迷路からの帰り道で、勢いのままに予定していた以外の場所で告白してしまいました。
メチャクチャ緊張したのですが、「ちえ」の返事はOKでした。
もう、飛び上がりたいほどの喜びでした。
その後に、ホントは告白する予定だった場所へ向かいました。
「今から行くとこってね。暗くなった方が良い場所なんだよね」
「だから、これから行くとちょうど良い時間になりそうなんだ」
「KさんってOって所良く行くことある?」
「私は、全然道とか分からないし方向音痴だから⋯」
「ふ~ん、そうなんだ。じゃあ初めて行く場所かもしんないね。その方が良いかもだけど」
夕方になり、辺りが暗くなり始めた頃に目的地に到着しました。
「よし、到着。誰もいないみたいだから良かったよ」
「車から降りようか」
「今からね、この階段を上がってくんだ」
「この階段って上にあったホテルから海岸に降りて来るための専用の階段だったんだけど、ホテル廃業しちゃったから自由に登り降りできるんだ」
そう言って「ちえ」と手を繋ぎました。
「所々に大理石の置物があったり、階段が見えるように下からライトアップもされてるんだ」
そう言って階段の踊り場まで登りました。
そこにはベンチが一つ置いてありました。
「到着、ここが告白する予定の場所で~す」
「このベンチに座って告白するか、階段の手すりから二人で海を見ながら告白するか迷ったんだけどね」
そう言って二人でベンチに座りました。
「ねえ、T君。さっきは私のこと好きだって言ってくれてありがとう」
「私ね、大学の時に好きだって言ってくれた男の人がいたんだけどね⋯」
「結局、二股かけられてて、振らたことあるんだ⋯」
「T君は、そんなことしないよね?」
「しない、しない。俺は絶対そんなことしないよ」
「俺は高校の時から、ずっとKさんのことが好きだったんだから」
「ありがとう」
「じゃあ、もう一回言うよ」
「俺、Kさんのこと大好きだから、付き合ってください」
「うん、良いよ」
「ちえ」の顔を見つめていると目が合いました。
すると「ちえ」が目をつぶりました。
「これってキスして良いってことか」(心の声)
「良いの?」
「うん、T君、私のこと好きだよね?」
「うん、大好き」
「ホントに私で良いんだよね?」
「うん、俺、Kさんで良い。って言うかKさんじゃないとダメなんだよ」
「じゃあ良いよ」
告白の日に、想定外に初キスまでしてしまいました。
「ディープでも良いのかな」(心の声)
「ちえ」の唇に私の唇を重ねてから、一旦離して、また唇を重ねました。
思い切って舌を入れてみると「ちえ」も抵抗なく受け入れてくれました。
キスの後に「ちえ」を抱きしめて「俺、Kさんのこと大切にするから」と言いました。
「ありがとう。T君」
しばらくの間、二人でベンチに座って黙っていました。
「そろそろ帰ろうか?」
「うん」
また「ちえ」と手を繋いで階段を降りて行きました。
家の方角に車を走らせながら「お腹空いてない?」と聞くと。
「少し空いたかな」
「じゃあなにか食べてく。近くの喫茶店でも良いかな?」
「うん」
1階が駐車場で2階がお店になっている海岸沿いの喫茶店に入りました。
「T君って、オシャレなお店知ってるよね。さては、元カノと来てたなあ」
「そ、そんなことないよ」
「お互いにさあ、過去のことを詮索するのはやめようよ。俺もKさんの元彼とか気になるけど聞かない、聞くとヤキモチやいちゃいそうだから」
「うん、分かった」
「ねえ、私たちってもう付き合ってるんで良いんだよね?」
「うん。Kさんが良ければね」
「じゃあさあ、呼び方を変えない?」
「呼び方?」
「だって、いつまでもT君とKさんじゃおかしいでしょ?」
「う~ん、そっかあ⋯」
「ねえ、T君のこと「トクちゃん」って呼んでも良いかな?」
「うん、良いよ。高校の時は、みんなに「トクちゃん」って呼ばれてたからな」
「女の子にも「トクちゃん」って呼ぶ子いる?」
「いゃあ、女の子じゃあ居ないな。男子だけ」
「じゃあ女の子で「トクちゃん」って呼ぶのは私だけだよね?」
「うん」
「良かった」
「それでね、私のことは名前で呼んで欲しいんだけど」
「名前?じゃあ「ちえ」ちゃんってこと?」
「そうじゃなくて「ちえ」って呼んで欲しいんだけど」
「えっ、いきなり呼び捨て⋯」
「だってトクちゃんは私の彼氏なわけでしょ?彼氏だったら呼び捨てで呼んで欲しいなあ」
「ダメ?」
「ダメじゃないけどさあ⋯。高校の時から憧れてた女の子を呼び捨てにするのはちょっと⋯」
「ちょっとなんなの?」
「照れくさいと言うか、恐れ多いと言うか⋯」
「でも、頑張って「ちえ」って呼ぶよ」
「時々、Kさんって呼んじゃうかもしれないけど⋯」
つづく
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