「ちえ」⑥「アパート」
告白した翌日の10 時に「ちえ」を迎えに行きました。
「トクちゃん、おはよう。卒業アルバム持って来たよ」
「お、ありがとう。これアパートで見せてもらっても良いかな?」
「うん、良いよ。トクちゃんのアパートに行くの初めてだからワクワクしちゃうなあ」
「アパート行ったら、俺、オオカミになるかもよ(笑)」
「トクちゃんのオオカミなら怖くないよう(笑)」
アパートに到着後、早速卒業アルバムを見せてもらいました。
「確か32Hだったよな」
「あー、やっぱりKさんって高校の時から可愛かったんだよなあ」
「トクちゃん、K さんじゃないでしよ」
「あ、そうか、慣れるまで恥ずかしいな」
「じゃあ今度は私がトクちゃんの写真見る番だよ」
「ちょっと待って、俺が先に見るよ」
「あー、ダメだ、これは見せられない。ブサイク過ぎるわ」
「こら!見せなさい」
「ダメ!こんなの見せたら振られちゃうから」
「見せなさい!これ私の卒業アルバムだよ」
「うん、しょうがないか…。絶対笑わないって約束してくれる?」
「笑ったりしないよ」
「あと、ブサイクな顔見ても振らないって約束してくれる?」
「そんな、振ったりするわけないでしょ」
仕方なく「ちえ」に卒業アルバムを渡しました。
「ふ〜ん、やっぱりトクちゃんって変わったよね」
「今の方がずっとカッコ良いよ」
「それは、高校の時がブサイク過ぎるからだよ」
「そんなことないよ。トクちゃん成績も良かったもんね」
「確かに、勉強できますって顔してるよな(笑)」
「Kさん気づいてないかもしれないけど、Kさんって男子の人気あったんだよ」
「また、Kさんって言ってる。「ちえ」って呼んでよね」
「あ、ゴメン。「ちえ」ってクラスの男子のアイドルだったもんな…」
「えー、そんなことないよ〜」
「イヤ、そうなんだって。Tさんと人気を2 分してたんだから。クラスの男子はTさん派とKさん派に分かれてたんだから」
「Tさんは可愛いから人気あるのも分かるけど、私は、そんなことないよ」
「イヤ、そうなんだって。俺は、もちろん「ちえ」派だったけどさ」
「やっと「ちえ」って呼んでくれたね(笑)でも、それウソだって分かるよ」
「ウソじゃないって。なんでウソだと思うの?」
「私、覚えてるよ。Y君が私に告白してくれた時に、最初に私に声かけたのトクちゃんだったよね」
「えー、あれ覚えたの」
「しっかり覚えてます〜。私のこと好きだったらY君のお手伝いなんかしないでしょ」
「あれにはさあ、訳があるんだよな…」
「なに?その訳って」
「うん、友達と誰が好きか話しした時があるんだけどさあ、その時、Yが「ちえ」のこと好きだって言ったんだよな」
「それでさあ、アイツ中学の時に自殺未遂してるんだよ。それが好きな女の子に振られたのが原因なんだって」
「それ知ってたから、俺も「ちえ」が好きだって言えなくなっちゃってさあ。それで話の流れで告白の手伝いすることになっちゃったんだ」
「アイツ、ああ見えてもシャイだから、話しかけられないって言ってさあ、俺に、話しかけてくれって頼んできたんだよ」
「ふ〜ん、そうなんだあ。やっぱりトクちゃん優しいね」
「別に優しくなんかないよ。心の底じゃあ、アイツが振られること期待してたんだからな…」
告白後の初デートはとても楽しくて時間があっという間に過ぎて行きました。
「ちえ」を家まで送って行って車の中で「ねえ、お休みのキスしても良い?」と聞くと。
「うん」
そこで、おデコにチュとしました。
「なあんだ、おデコなの?」
「唇が良かった?」
「うん」
「じゃあ」と言って初キスをしました。
「ヤバい、帰したくなくなっちゃったよ」
「私も帰りたくない…」
「でも、明日仕事だからなあ」
「…」
「平日にも会えるかなあ?」
「うん、私は大丈夫」
「じゃあ水曜日の夜に会おうか?」
「うん、良いよ」
「時間は何時なら大丈夫なの?」
「う〜ん。6時半なら大丈夫かな」
「じゃあ水曜日の6時半に迎えに来るよ」
「うん」
「よし、それまで寂しいけど我慢だ」
「私も寂しいよ…」
「もう一回キスして良い?」
「うん」
今度は、さっきより長めのキスをしました。
つづく