もうひとつのラブストーリー(37)「ケンカ」
今回は、ある冬の夜のお話です。
土曜日に私が用事があったので夕方の6時に「ちえ」を迎えに行きました。
アパートで、いつものように、まったりとテレビを見ていると⋯。
「ちえ」が突然、「「トクちゃん」私、好きな人ができたんだけど」と言ってきました。
「えっ⋯、それって誰?やっぱ年上の男か?」
「⋯」
「黙ってないで言えよ」
「実はね⋯。ウソだよ~」
「えっ、ウソ?」
「だってさあ。「トクちゃん」最近、好きだとか言ってくれないじゃん」
「だから少しヤキモチやかせようかなって思って」
「俺は、そんな人を試すようなことは嫌いだな」
「なによ。「トクちゃん」が好きだって言ってくれないのが悪いんじゃん」
「ちょっとウソついただけじゃん」
と、珍しく「ちえ」が食ってかかってきました。
「ついて良いウソと悪いウソがあるんだよ!」
「なによ!ウソつかせた「トクちゃん」が悪いじゃん!」
「「トクちゃん」のバ~カ」
「ああ、どうせ俺はバカだよ。そのバカと付き合ってる「ちえ」は大バカだ!」
「なによ!そんなこと言うなら私帰る!」
「送ってくれなくても良いからね!歩いて帰るから」
「ああ、帰れ、帰れ!」
「「トクちゃん」のバ~カ」
「もう勝手にしろ!」
「ちえ」が本当に出て行きました。
どうせすぐに戻ってくるだろううと思っていたのですが⋯。
10分以上たっても帰ってきません。
アパートに入りづらくてウロウロしているのかなと思って見てみたのですが、いません。
まさか本当に歩いて帰るつもりなのかと思って急いで車を走らせると⋯。
「ちえ」が寒くて暗い道をトボトボと歩いていました。
「ちえ」の横に車を止めて「乗れよ」と言っても「ヤダ」と言って乗りません。
仕方がないので「これ以上俺を困らせるな」と言って、力づらくで無理矢理、助手席に乗せました。
しばらく2人とも無言で車を走らせていると⋯。
「ちえ」が「あれ?こっちって家の方向じゃないよね?」
「うん、まだ時間が早いから海、見に行く」
「⋯」
「「トクちゃん」ゴメンね⋯。私が悪かった」
「うん、俺も悪かったよ」
「ううん。「トクちゃん」は悪くないよ。悪いのはウソついた私だから⋯」
「ホントにそう思うか?」
「うん」
「じゃあ、ウソついた罰として今夜は泊まってくこと、良いか?」
「うん、分かった、家に電話する」
「俺、慌てて出て来たから財布持って来なかったんだけど、2人の財布にいくら位ある?」
「う~ん。1万円位あるかなあ」
「よし、じゃあ今からラブホ行って仲直りHするぞ」
「えっ、ホントにラブホ行ってくれるの?」
「うん」
「今度は、どんな部屋かなあ?なんかワクワクするね」
「「ちえ」に部屋選ばせてやるよ」
しばらくたってから。
「あっ!俺、慌てて出てきたから鍵かけてくるの忘れた。Uターンするぞ」
「え~。じゃあラブホ行かないの?」
「うん、また今度な」
「もう!せっかく期待したのに!」
「Hならアパートでもできるじゃん」
「私はHがしたいワケじゃなくてラブホに行きたかったの!」「もう!「トクちゃん」のドジ!」
「なに!またケンカ売る気か?」
「ドジだからドジって言ったの!」
「こんなバカでドジな男は嫌いか?」
「⋯。ううん。嫌いじゃないけど⋯」
「ゴメンね、「トクちゃん」⋯」
「私ね、「トクちゃん」だったら、きっと追っかけてきてくれると思ってたんだ⋯」
「もし、追っかけてこなかったらどうしたんだよ?」
「絶対追っかけてきてくれるって信じてたから⋯」
「まあ、俺は「ちえ」のこと大好きだからな」
「「トクちゃん」ありがとう!」
「俺が初めから、大好きって言っとけば、ケンカなんかしなくても、良かったんだよな」
「アハハ」
つづく
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