もう一つのラブストーリー④「告白」
動物園に行った翌日も10時に「ちえ」を迎えに行きました。
約束通りに高校の卒業アルバムを持ってきてくれました。
「T君、これ卒業アルバムだよ」
「おお、ありがとう」
「これ、俺のアパートで見せてもらっても良いかな?」
「T君のアパートに行くの?」
「うん、できれば来て欲しいんだけど···」
「うん、良いよ」
ということで私のアパートに行くことに。
アパートに到着。
「あんまり掃除してないんだけど」と言って「ちえ」をアパートに入れました。
「そんなことないよ、綺麗にしてるじゃん」
「あっ、これってなに?」
「あ、それはトレーニングマシン、言ってなかったんだけど、俺、空手やってるんだ」
「大学に行けないって分かってから始めたんだ」
「へえ~、あ、これってT君だよね?空手の写真?カッコ良いね」
「そう、黒帯とった時に記念に撮ったんだ、21歳の時かな」
「それよりアルバム見せてくれる?」
「あ、そうだったね、どうぞ」
「確か32ホームだったよな···」
と言いながら「ちえ」の写真を見ました。
「やっぱ〇〇さんって高校の時から可愛いかったんだ···」
「今の方がもっと可愛いけど」
「またあ、お世辞言ってもなんにもでないよ~」
「お世辞じゃないって」
「じゃあ今度はT君の写真見せて」
「ちょっと待って、俺が見てからね」
自分の写真を見ながら「あ~、これはダメだ、これは見せられない」
「ブサイクすぎるわ···」
「見せて見せて」
「ダメ!見せられない」
「ちょっと見せてよ、私の卒業アルバムだよ」
「うん···、笑わないって約束してくれる?」
「うん、笑わないから、見せなさい!」
「しょうがないか···」
「ちえ」が私の写真を見ながら「やっぱりT君って高校の時と変わったよね」
「高校の時って超真面目で勉強できますって感じだったもんね」
「今の方が、ずっとカッコ良いよ」
「ホント?ホントにカッコ良いって思ってくれる?」
「うん、ホント、ホント」
「じゃあ俺と付き合ってくれる?」と言うと···。
以外にもあっさりと「うん、良いよ」と言ってくれました。
「ホントに付き合ってくれるの?友達としてじゃないよ?」
「うん、分かってる」
「やった!」
「あ~、でも、こんなとこで告白するつもりじゃなかったんだよな···」
「へえ~、じゃあどこで言ってくれるつもりだったの?」
「じゃあ、後で行ってみる?」
「うん!行きたい!」
「でも、暗くならないとダメなんだよな」
「暗い方が良い場所なんだ」
ということで夕方に告白する予定だった場所に行きました。
そこは海岸沿いで、高台にあった、今は潰れてしまったホテルに通じる階段でした。
「ここなんだけど···、誰も居ないと良いんだけど···」
ちょうど良い具合に、その場所には誰も居ませんでした。
「ここってね、前は上にあるホテルから海岸に降りる階段だったんだよね」
「ほら、ところどころに大理石の置物があるだろ?」
「うん」
「ちえ」の手を握って階段を上りました。
「ここ、ここで告白する予定だったんだ」
そこは階段の踊り場でベンチが一つ置いてありました。
階段の途中には、ところどころにスポットライトが置いてあり程よい明るさでした。
二人でベンチに座って、しばらく磯の香りを楽しみました。
頃合をみて「もう一度言うよ、〇〇さん、俺と付き合ってください」
「うん、良いよ」
「T君、私のこと好き?」
「うん、好きだよ」
「ホントに私で良いの?」
「うん···〇〇さんで良い、って言うか〇〇さんじゃなきゃダメなんだ」
「ありがとう、実はね、私もT君のこと良いなって思ってたんだ」
「それでね、Aちゃんって覚えてる?」
「うん、覚えてるよ」
「Aちゃんに相談したんだ」
「T君にデートに誘わてるんだけどって」
「それで今日、卒業アルバム見せてって言われてるんだって」
「そしたらね、それ告白されるかもよって言われたんだ」
「だから、私、T君が言ってくれるの待ってたんだ」
「なあんだ、そうだったんだ」
「俺、普段は緊張しないタイプなんだけど、今日は、もの凄~く緊張してたんだ···」
「なんか緊張して損しちゃったみたいだな(笑)」
そう言いながら「ちえ」の顔を見ると「ちえ」も私の顔を見つめていました。
目と目が合うと「ちえ」が目をつぶりました。
「これってキスして良いってことか?」(心の声)
「良いの?」と言うと。
「T君、私のこと好きなんだよね?」
「うん」
「じゃあ良いよ」
想定外に、告白した当日に初キスも済ませてしまいました。
「じゃあ、そろそろ戻ろうか」と言って「ちえ」の手を握りました。
「ちえ」の手は小さくて、強く握ると壊れてしまいそうでした。
「俺、〇〇さんのこと大切にするから」
「ありがとう」
帰りの車中で「ちえ」が「T君のことトクちゃんって呼んでも良い?」と聞いてきました。
「うん、良いよ。高校の時の友達からは、トクちゃんって言われてたからな」
「それで、私のことなんだけど···」
「名前で呼んで欲しいんだけど···」
「名前?ってことは「ちえ」ちゃんってこと?」
「ううん、そうじゃなくて「ちえ」って呼んで欲しいんだけど···」
「えっ、いきなり呼び捨て?」
「ダメ?」
「ダ、ダメじゃないけど、ちょっとハードル高いかも···」
「呼び捨てじゃ彼氏みたいじゃん」
「えっ、彼氏じゃないの?」
「か、彼氏だよな?」
「うん、トクちゃんは私の彼氏だよ、私はトクちゃんの彼女で良いんだよね?」
「うん、〇〇さんは俺の彼女」
「もう!〇〇さんじゃないでしょ!」
「あ、そうか、「ちえ」は俺の彼女」
「あの場所って凄いムード良かったんだけど、トクちゃん、前にも女の子連れてったことあるの?」
「そういうことは、聞かないで欲しいな、俺も〇〇さんの元彼のこと気になるけど聞かないから、聞くとヤキモチ焼いちゃいそうだから···」
「だから〇〇さんじゃないって言ってるでしよ!」
「あ、ゴメン、ゴメン」
「「ちえ」明日も会ってくれる?」
「うん、良いよ」
「明日、〇〇さんと行きたいとこがあるんだ」
「それって何処?って〇〇さんじゃないって言ってるでしょ!」
「あ、また言っちゃった、ゴメン(笑)」
「明日は、ホントの初デートだから、場所は秘密だよ」
つづく