新説「巨人の星」
今回も創作物語(ショートショート)を書いてみたいと思います。
星飛雄馬は、中学校を卒業した。
そして卒業式の日、飛雄馬は家出をしたのだった。
父、一徹は飛雄馬を星雲高校に入学させる予定であった。
飛雄馬も一応は入学試験を受けて合格していたのであるが・・・。
飛雄馬は、もう我慢の限界にきていたのである。
小学校の頃から身につけられた大リーグボール養成ギプスは飛雄馬の体を鍛えるのには役に立ったのだが・・・。
鍛えられた体に反比例するようにメンタルを病んでしまっていたのだった。
家出をした飛雄馬は、東京都内のネットカフェを転々としていた。
建設現場の日雇いで、なんとか収入を得ることができていた。
鍛えられた体のおかげで、普通の人の倍働くことができた。
その為、収入も人の倍あった。
そんなある日のことである。
飛雄馬は、ある建設現場で偶然にも父、一徹と再会してしまったのである。
「飛雄馬・・・」
「父ちゃん・・・」
次の瞬間には、飛雄馬は走り出していた。
「もう嫌だ。野球地獄はもう嫌だ・・・」
その日から飛雄馬は、建設現場で働くことをやめたのである。
さて、飛雄馬の姉の明子である。
明子も父、一徹との生活に疲れ果て、飛雄馬の後を追うように家出をしていたのである。
明子はその美貌を買われて、銀座でホステスを始めていた。
飛雄馬はその後、アルバイトとして、草野球チームでお金をもらってリリーフピッチャーをしてなんとか生活をしていた。
そんなある日のことである。
明子の勤めるお店に、草野球チームの人間が接待で現れた。
そのテーブルについた明子は偶然にも飛雄馬の噂を聞いたのである。
「飛雄馬は草野球でお金を稼いでいる・・・」
明子は早速、飛雄馬を探す為に草野球の試合を見に行くようになった。
そして、とうとう飛雄馬を見つけたのである。
「飛雄馬・・・」
「姉ちゃん・・・」
二人は抱き合って再会を喜んだ。
明子は飛雄馬に一緒に住まないか、そして、ホストをやらないかと誘った。
姉の言葉に、飛雄馬は頷いた。
そして、明子の勤めるお店と同じ系列のお店でホストとして働きだしたのである。
見事に鍛えられた体で、飛雄馬はたちまちナンバーワンホストに踊り出た。
大リーグボール養成ギプスが役立ったのだ。
飛雄馬は「巨人の星」ならぬ「ホストの星」を掴んだのである。