「ちえ」⑬合鍵
「ちえ」と付き合って3ヶ月程たった頃にそろそろアパートの合鍵を渡しても良いかなと考えました。
いつものように「ちえ」を迎えに行ったときに「これからちょっと付き合って欲しい所があるだけど」と言うと。
「それってどこ?何か良いことある?」
「まあ行けば分かるから」
そしてホームセンターのサービスカウンターへ。
「これの合鍵を作って欲しいんですけど」と言ってアパートの鍵を渡しました。
10分ほどで合鍵が完成。
そのまま駐車場に停めた車に戻ります。
「ちえ」はアパートの合鍵を作ったことに気が付いていませんでした。
そのままアパートに戻り「ちえ」に「これ持っててくれない?」
と言って「ちえ」の小さな手のひらに合鍵を握らせました。
「えっ、これって、もしかしてアパートの鍵?」
「そう。「ちえ」には、これを持ってて欲しいんだよね」
すると「ちえ」は想像以上に喜んでくれました。
「いつでも、このアパート使っても良いからね。だけど男を引きずり込むなよな」
「バ~カ。そんなことする訳ないじゃない」
「えー。でも、嬉しいなあ···。なんかやっと本物の彼女になれたような気がする。トクちゃん本当にありがとう」
「トクちゃんが居ない時に、こっそり入って浮気してないか探っちゃおっかな···」
「おい!まだ俺の事信用してないのか?」
「そんなら、この鍵は渡せない。返して」
「ウソ、冗談だから···。でも、本当にいつでも使って良いの?」
「もちろん、良いよ」
「だけどね、本当は大家さんに断らないと合鍵作っちゃいけないだよね。だから誰にも秘密にしてな」
「うん、分かった。この鍵も、二人の財布と同じように、このポシェットに入れとくね」
その翌日の事です。
いつもは会わない月曜日に「ちえ」が突然アパートにやって来ました。
そして呼び鈴も押さずに、合鍵でアパート内へ。
「ごめん。トクちゃん。ビックリした?なんだか合鍵使ってみたくなっちゃって···」
「食材買って来たから、今から作るね」
そう言ってキッチンに向かいました。
いきなり、それも合鍵を渡した翌日にやって来るとは思いませんでした。
でも、悪い気はしませんでした。
今日は、どこで夕飯食べようかなと、考えていたとこなので、ちょうど良かったのです。
「ちえ」が作ってくれたのは、私の大好物の辛いカレーでした。
「これからも時間あったらアパート来るからね」
「トクちゃん、最近お掃除とかしてないでしょ?」
「トクちゃんが以内に間にお掃除してあげるよ。お布団も干してないでしょ。お布団も干してあげるからね」
「そんな俺の居ない時って、平日の昼間しかないじゃん」
「そんなことないでしょ。空手行ってる時とかバスケ行ってる時とかあるでしょ」
「空手もバスケも夜だから布団干せないじゃん」
「だから、夜はお掃除だけ。お布団干すのは昼間やるから」
「昼間って平日のか?」
「それはトクちゃんが考えなくても良いの。私がちゃんと考えてやるから」
「もしかして「ちえ」って世話女房タイプ?」
「う〜ん。どうかなあ…」
「ただ、トクちゃんのお世話してあげたいだけだけどなあ…」
「そう言うのが世話女房って言うんじゃないの?」
「う〜ん。そうかもね(笑)」
つづく