「ちえ」⑤「告白の場所」
想定外の場所で告白してしまったので、その夜に告白する予定だった場所に「ちえ」を連れて行きました。
そこでもう一度「俺と付き合ってください」と言うと。
「うん。良いよ」
「T君、ホントに私なんかで良いの?」
「うん。Kさんで良い。って言うかKさんが良い。俺、Kさんじゃなけきゃダメなんだ」
「同級会の時からずっとKさんのことしかかんがえられなくなってたんだよね…。付き合えたら良いなって」
「俺、Kさんのこと大切にするよ」
「ホントはね。私もT君のこと良いなって思ってたんだあ…」
「ホント?」
「うん」
「T君優しいし、それにちょっとカッコ良いなって思ってたんだあ」
「優しいかは分かんないけど、カッコ良いはないな。俺、カッコ良いなんて言われたことないもん」
「うん?待てよ、2回目か…」
「それって元カノ?」
「違うよ。俺のアパート管理してる不動産屋の事務の子」
「でも、直接言われたわけじゃないんだよね」
「それってどういうこと?」
「俺の兄貴がさあ、仕事で、その不動産屋に行った時に「T さんの弟さんってカッコ良いですね」って言ったんだって」
「ふ〜ん。やっぱりT君カッコ良いよ」
「カッコ良くても悪くても、Kさんと付き合えるんならどっちでも良いよ」
「ねえ、お腹空かない?」
「うん、ちょっと空いたかなあ」
「じゃあ、喫茶店でも行く?」
「うん」
二人で手をつないで階段を降りました。
そして、車を少し走らせて、海が一望できる喫茶店に行きました。
「T君ってオシャレなお店知ってるね。さては、元カノと来てたなあ?」
「そういう話はやめようよ。俺もKさんの元彼とか気になるけど聞かないから。聞いたらヤキモチ焼きそうだから」
「うん。分かった」
二人ともアイスコーヒーとサンドイッチを注文して待っている間に「ちえ」が恥ずかしそうにモジモジしながら
「ねえ、私達って、もう付き合ってるで良いんだよね?」
「うん。Kさんが良ければね」
「T君、さっき、私のこと大切にするって言ってくれて、ありがとう。私、あんなこと言われたことないから、凄く嬉しかった」
「それでね、お互いに呼び方変えない?」
「呼び方?」
「だって、付き合ってるのに、いつまでもT君とKさんじゃ変でしょ?」
「そっかあ···」
「ちえ」がモジモジしながら「ねえ、T君のこと、トクちゃんって呼んでも良いかな?」
「ああ、高校の時は、トクちゃんって呼ばれてたからね」
「女の子でT君のこと、トクちゃんって呼ぶ子いる?」
「女の子では、いないな」
「じゃあ、女の子で、トクちゃんって呼ぶのは私だけだよね?」
「うん、そうだね」
「良かった」
「じゃあ、俺は、Kさんのことなんて呼ぼうか?」
「う~ん、私は、名前で呼んで欲しいかな···」
「名前って「ちえちゃん」ってこと?」
「じゃなくて「ちえ」って呼んで欲しいんだけどな···」
「えっ、いきなり呼び捨てで良いの?」
「だってT君は、私の彼氏でしょ?」
「う、うん。そうだよね」
「だったら呼び捨てで呼んで欲しいな」
「分かった「ちえ」って呼ぶよ」
「ねえ、明日も会えるかな?」
「うん、大丈夫。これから、土日は空けとくから」
「明日、行きたいとことかある?」
「う~ん、特にないかな···。トクちゃんは、どっか行きたいとこある?」
「う~ん。あ、一つだけある」
「それってどこ?」
「ラブホ」
「···」
「ウソだよ。冗談だよ」
「あ、そうだ。高校の卒業アルバムって持ってる?」
「うん。家にあると思うよ」
「それ、明日見せてくれないかなあ」
「良いけど、トクちゃんのもあるでしょ?」
「俺のはないんだよね。ほら、高校卒業してすぐに家が火事になっちゃったからさ」
「あ、そうだったね…。ごめんね」
「良いよ別に」
つづく