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ログラインの強化型テンプレートについて(逆襲より)--【SAVE THE CAT で映画鑑賞】ネタバレ脚本術のお勉強--

Save The Catの逆襲の翻訳がおかしいので検証してみました

💬本書は今日現在、新品はもう売っていません。Kindleにもありません。私は中古で買いました。画像が欲しかったので商品にリンクしていますが、かなりの割高ですのでご注意ください。私は今回、検証のため英語版もKindleで買うことになりました。

本書40ページにある、ダイ・ハードのログラインの翻訳と、強化型テンプレートの翻訳が誤訳ではないかと疑問を持ったので、原文と比較して検証しています。こちらの記事は音声とともに見て頂く用になります。詳細は以下の音声をお聴き下さい。


ダイ・ハードのお手本ログライン(翻訳)

離婚の危機に瀕して、頑固でサバイバル能力の高い警官が、テロリストによって妻の会社のビルに閉じ込められ、たまたまパトロールに出た内勤警官とチームを組むが、テロリストを愚弄したせいで、妻が人質になっていることがバレてしまった時、主人公は敵のリーダーの裏をかくべく変貌し、実際は強盗にすぎないやつらがまんまと大金をせしめて逃げるのを阻む術を学ばなくてはならない。

Save The Catの逆襲(日本語版)

ダイ・ハードのお手本ログライン(英文)

On the verge of a divorce, a bullheaded street-smart cop is trapped in his wife's office building by terrorists and teams up with a “desk cop” patrolman to thwart them; but when he taunts the terrorists, and risks exposing his hostage wife's identity, he must learn to adapt to change to outsmart the leader and stop what are really thieves from getting away with a billion-dollar heist.

Save The Catの逆襲(英語版)

※改行できなかったので、問題の文章のところを太字にしました


ログラインのテンプレート(翻訳)

「静止ー死」の瞬間に「瀕して」、「欠点を抱えた主人公」はある「きっかけ」で「Bストーリー」とともに「第1ターニングポイント」へと入っていくのだが、「ミッドポイント」に来ると、彼/彼女は「提示されたテーマ」を学ばなくてはならない…「すべてを失う」前に、「欠点を抱えた敵対者」(が主人公の計画を阻もうとするの)を打ち負かし(とどめ)て。

Save The Catの逆襲(日本語版)

ログラインのテンプレート(英文)

On the verge of a Stasis = Death moment, a flawed protagonist has a Catalyst and Breaks Into Two with the B Story; but when the Midpoint happens, he/she must learn the Theme Stated, before All Is Lost, to defeat (or stop) the flawed antagonist (from getting away with his/her plan).

Save The Catの逆襲(英語版)

映画の内容を知っている私が訳してみました

離婚寸前の頑固で現場経験豊富な警官は、テロリストによって妻のオフィスビルに閉じ込められるが、パトロールに出ていた内勤警官と、そいつらを妨害するために協力することになる。しかし主人公がテロリストをバカにしたのと同じ頃、一方では人質である妻の身元がバレる危険性が出てきてしまう。彼はテロリストのリーダーを出し抜くための変化に、適応する術を学ばなくてはならなくなるのだ。実際は単なる泥棒であるやつらが、10億ドルを持ち逃げするのを止めるために。


結論

なぜブレイク・スナイダーはテンプレート通りに書かなかったのか。それはこの映画の「すべてを失って」というビートでは、主人公が一番守らなければならない「妻の身の安全」が失われないからだ思います。

この映画の各ビートは以下のようになっていて、この順番で進みます。

・ミッドポイント(1時間頃)
主人公がテロリストを愚弄するシーン。イピカイエという名台詞

・すべてを失って(1時間37分頃)
起爆装置をテロリストに取り返されてしまう

・第2ターニングポイント(1時間50分頃)
妻が人質であることがテロリストにバレる

本来ならテンプレート通りに「すべてを失って」というビートで主人公がすべてを失うのが理想の展開と思われます。でもこの映画では、1番大事なものが失われる(妻の身元がバレる)のが第2ターニングポイントと少し遅い。だから著者は、テンプレート通りに穴埋めしなかったのではないでしょうか。

とはいえ、妻の身元がバレて彼女に危険が及ぶことは、主人公にとって1番避けたいことに違いありません。死守すべきことです。彼女を失うことはすべてを失うことです。ですからお手本では、「すべてを失う」の穴埋めとして機能しているのだと推測しました。

つまりテンプレに素直に穴埋めするなら、「妻が身バレする前に」と書いて良いのだと思います。この部分の穴埋めに関しては、「すべてを失って」というビートに起こることそのものより、主人公が死守すべきものや、絶対に奪われてはならないもの、といった事柄が入ると思ったほうがよさそうです。

私はまだこの本を40ページまでしか読めていません。今後読むうちに認識が変わるかもしれません。もし認識変更がありましたら、追記します。

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