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<知っておくべき>家庭における火事対策 第十三回 リチウムバッテリーによる火災をどう防ぐか?

家庭での火事を予防するためのシリーズ第十三回。
今回は「リチウムバッテリーによる火災をどう防ぐか?」の解説です。

個人の所有品やお店の商品含めて、現在日本国内では数十億個以上のリチウムバッテリー搭載製品が存在しています。
年間に起きるリチウムバッテリーが原因での出火事故や住宅火災は年に一万件も起きていないため、リチウムバッテリーが原因での火災は割合としてはかなり起きにくいとも言えます。
これはリチウムバッテリーは通常は火災事故が起きないように何重もの安全機構が備わっているからです。

しかし、現実問題として全体の個数からの発生割合はかなり低くても、「リチウムバッテリーが突然出火した」という事は全国で毎年起こり続けています。
あなたやあなたの家族が使用中や使用していない時に突然バッテリーが出火し、そのまま家を燃やし出して自分や家族の命、大切な財産、住居を焼失するという事も普通に起こりえるのです。

リチウムバッテリーについては出火するケースは

・充電中に突然出火する
・使用中に突然出火する
・使用していない時に突然出火する

の三つがあります。つまりどのような状況でも突然出火する危険があります。
 
充電中に出火する原因としては、粗悪なアダプターやその機器に対応していないアダプターを使った事による出火があります。
充電に使用するアダプターは純正品か、きちんとしたメーカーのを使用しないと大変危険です。
また多くのケースでリチウムバッテリーが出火してしまうのは「製造時に異物が混入した」か「長年の使用によりバッテリーが膨張して、絶縁不良やショートしやすくなって出火した」というのがあります。

充電中や使用中に出火した場合はそれに気づいて運よく消火出来る事もあるでしょう。
しかし睡眠中や外出中に充電してる時や、使用していない時に出火されるとそれに気づかず消火が間に合わなかったり、そもそも人がいない時は出火すると対応できません。
寝ている時にバッテリーから出火して自分や家族がそのまま命を失う事もあります。

確率的にはリチウムバッテリーが出火する割合はかなり低くても、いざ出火した場合は大きな被害を出すため、「使用していない時はリチウムバッテリー搭載品はできるだけ外部へ熱や炎を伝えにくい容器の中に入れておく」というのが強くおすすめされます。
特にすでにバッテリーが膨張している場合はいつ出火してもおかしくない状態になっているため、そのような物を密閉容器に入れないのは大変危険です。

リチウムバッテリーは生ごみなどとして廃棄する人がいるせいで清掃センターの処理場で火災事故を起こす事が近年増えてきました。
そのため、大阪の環境清美局などは不要になったリチウムバッテリーや膨張したリチウムバッテリーの受け入れ窓口を令和五年に開設しました。
この環境清美局では「膨らんだバッテリーは突然出火するリスクがあるので、専用の金属製の密閉容器に入れて処理場へ移送するまで保管とする」をやっています。
サイトで画像付きで紹介されていますが、見た目はただの蓋つきの鍋のような金属容器です。

このような感じで「金属ケースの中に入れていると、いざバッテリーが出火した際もケース内が燃えるだけで炎が外部に伝わらず、家が燃えるのを予防できる」のです。
これは個人でも簡単にできるリチウムバッテリーによる火災を防ぐ方法となっています。

土鍋や料理用の蓋つき鍋もその中にリチウムバッテリー搭載製品を入れておけば万一の出火の際も外部へ炎を伝わらせないでしょう。しかし実用的とは言えません。
今のところ実用的と言えるのは、「ロック機構がついた金属製の市販のケース」です。
ロック付きの金属製の工具箱は色々なメーカーが出していますが、昔の携帯ゲーム機(DS、3DS、PSP、PSvita)やスマホ、モバイルバッテリー、カメラ用のバッテリー、ゲームコントローラなどを入れておくのに適しています。
ロック付きの金属製のアタッシュケースも色々あり、これらはノートPCやタブレットなどを入れておくのに適しています。

リチウムバッテリーは出火の際には破裂する事もありますが、ロック機構がついているおかげで蓋が開かず中の破裂した物が周辺に飛び出して延焼するというのも予防できます。

このような金属ケースの中に日頃からリチウムバッテリー搭載品を入れて保管するという習慣にしておくと、使用していない時に万が一出火しても燃えるのはケースの中にある物のみで済みます。
自分や家族の命、色々な財産、住宅を失うリスクを減らせるのでそれほど高くない金属ケースを複数個家庭に導入しておくのをおすすめします。

もしケース内で出火が起きた場合はその中に入れている物は全て燃える事になるため、一つのケースに色々入れてしまうより、ケースを何個も買って分散させて物を入れた方が良いでしょう。


また、実際に出火した時はケース内でしばらくバッテリーが燃え続けてケースが高温になります。
金属ケースを絨毯や畳の上に置いていたり、ケースに布や紙などが触れている状態にしていると絨毯や畳、紙や布などが熱により燃え出して住宅を焼く事になるので注意してください。

出火中は漏電が起きて金属ケースに電気が流れる事がありますので、ケースは触らないようにしましょう。

「リチウムバッテリー搭載品は金属ケースの中に入れて保管すると火事を予防できる」を一人でも多くの人に広める事は、リチウムバッテリーの出火による命や財産、住宅の消失を減らす事につながります。
より広くこの事を知らしめるには、「スマホやパソコン用の周辺機器を出している色々なメーカーが金属ケースを販売し、バッテリー火災の危険性を繰り返し訴え続けてそれらの商品の売り上げを増やしていく」のが良いでしょう。
メーカーにとっても利益が確実に増えるため、スマホやパソコン用周辺機器を出しているメーカーに勤めている方は是非今回提案した事を検討してみてください。
金属ケースはより耐火性の高い厚みがある方が良いでしょう。

それ以外にもNHKや色々な民放の番組でも繰り返し「リチウムバッテリー搭載品は使用しない時は金属ケースの中に入れておくと、万一出火した際もケースの中が燃えるだけで住宅の焼失を予防できます」と放送し続けると、それでも火災被害を大きく減らせるでしょう。

金属ケースの注意点としては、冬はかなり冷えるためケース内に物を直置きせず、間に何かクッションや布などを敷くようにしてください。
リチウムバッテリーは冷えてしまうと寿命が縮んだり、膨張しやすくなってしまいます。

またバッテリーは高温にも弱く、「夏場に暑い車内にバッテリー搭載製品をずっと放置していたら出火して車内が燃えてしまった」という事故も起きているので注意しましょう。


スマホやタブレットなどの充電については行う場所にも注意してください。
絨毯や畳、布団の上など燃えやすい場所の上で充電している時に万一出火すると一気に炎が大きく広がります。
まだ炎の広がりが遅いフローリングの上や、金属の上(ただし漏電が起きる事がある)などで充電したり、あるいは料理で使う陶器製の平らな皿の上でスマホを充電するようにすると万一充電中に出火しても床に炎が伝わりにくくなるでしょう。
湾曲した皿の場合はコードの一部に圧力がかかって断線させてしまう事があるため、刺身皿のような平らな陶器皿の方がおすすめです。

ただ、出火の際はバッテリーが破裂する事もあり、その場合は周辺に燃焼している物が散らばる事にもなります。

  

家庭における火事対策シリーズの第一回目はこちら
一回目から順番に読んでいきましょう。

<知っておくべき>家庭における火事対策 第一回 序章


次回:「EV(電気自動車)や電動自転車の出火」