ハーフの子供の学校
わたしの子供は日本で生まれ、その後しばらくしてから台湾に引っ越した。
私も夫も子供には日本語で話しかけているため、中国語よりも日本語の方が語彙力も表現力も圧倒的に多い。
というか、中国語は謝謝、你好くらいしか話さない。
彼が通う幼稚園は台湾のローカルのバイリンガル幼稚園で、午前中は英語、午後は中国語で過ごしているらしい。
なぜその幼稚園にしたかというと、そこしか空きがなかったからだ。夫の知り合いに紹介してもらってやっと枠をあけてもらった。
さて、話は変わるが、ハーフの子や海外在住の子の教育で多くの親か頭を悩ます問題といえば、バイリンガル教育をしたことによって、セミリンガルになってしまうのではないかということではないか?
私はそうである。
子供が日本語、中国語、英語、どの言語も自由時際に操れるレベルにまで達せず、深い思考ができなかったりしたらどうしようと禿げるほど悩んだ。
いや、今も悩んでいる。
だから、子供を英語・中国語を使用するバイリンガルスクールにいれることに少し躊躇したが、せめて中国語に触れる機会を作ってあげたいと思い、入園を決めた。
複数の言語を自由自在に操れるバイリンガル教育で大切なことは、母語を深めることだという。
台湾に住んでいるのであれば、本来なら中国語を母語にするのが順当なのかもしれないが、我が家の夫婦の会話の言語は日本語、母子の言語も日本語、そしてなぜか中国語が母国語である父と子の言語も日本語なのである。
一人一言語を実現するために、子供には中国語で話すよう何度も夫に依頼しても、なぜか日本語になってしまう夫。私とは日本語で話すのに、子供には中国語で話すという言語の切り替えが面倒らしい。何度言っても治らないので諦めた。
すると、我が家の家庭の言語は日本語になる。
生活する社会の言語が中国語だとしても、子供が初めて所属するコミュニティ=学校の言語が日本語ならば、台湾で生活しながらも日本語を母語として伸ばしていくことが十分可能なのではないか。少なくとも、セミリンガルになることはないのでは?という考えから、子供の小学校は日本人学校にしようとずいぶん前から夫と相談して決めていた。
そう決めた土台として、私たち、特に日本人である私は日本の教育制度が素晴らしいものだと思っているということがある。日本の教育制度は個性をつぶす、受動的だ等の批判の声があることはもちろん知っている。
しかし、幼稚園から大学まで日本の国公立の学校で教育を受けてきた本人である私は、そうは感じなかったのだ。自分が認識している範囲では、個性がつぶされて苦しい思いをしたことはないし、外国の言葉や文化に興味があった私は1年間の中国留学を含めて計4回もの海外経験を公費でさせてもらった。日本国内においても、学生本人が望めば様々な機会にあふれていた。
とにかく学術的で能動的で国際的な学びを日本の教育制度の中でしてきたのである。
だから、子供を日本人学校に入れることに対しても不安はなかった。
だが、昨今の国際情勢に絡む日本政府の対応や、日本経済の動向を見て、少しずつ再考の余地があるのではないかと思うようになってきた。
子供の教育のゴールの一つに、子供が自立した人なるという点があると思う。自立するというのは、精神的にも習慣的にも、そして経済的にもということである。
日本人学校に通えば、少なくとも日本語はほぼ自由自在に操れるレベルになるだろう。またそれに付随して中国語も同等の語彙力、表現が身につくと期待する。
だが、それが子供にとって有益な将来をもたらすのだろうか?
少子高齢化と頼りない政治のダブルパンチで沈みゆく日本経済のなかで、子供は経済的に自立していけるのだろうか?
コロナ禍、ウクライナ侵攻、、、
暗いニュースが続いて気持ちがふさがりがちな世の中だが、親として私が直視しなければならない問題を提起してくれた。