「AIに仕事を奪われた絵師」な訳だが

「当然の時代の流れだった」と思っているという話。
最初に書いておくとこれはAIに反対する記事ではないので、規制を推奨する内容を期待して開いた人はブラウザバックをお勧めする。
あと推敲全然しないで思いつくままに書いてるから、すごく読みづらい。
それでも良いという人は以下にどうぞ。

2年ちょっとくらい前まで、イラストで食っていた。
ただし、バリバリ企業と契約とかして1枚10万とか取っているプロイラストレーターではない。
ココナラとかSkebとかSKIMAとか、そういうコミッションサイトでフリゲーやTRPGやVtuber用の立ち絵イラストを1枚1万弱で売り捌いている、いわゆる「アマチュア底辺絵師」だった。
(そう呼ばれる層にいた、という意味で「底辺」という言葉をあえて使う)

絵のクオリティは全身立ち絵で1万円ついたらいい方ってくらいの、「X(旧Twitter)でよく見るちょっと絵が上手い人」のライン。
幸いなことに絵を描く速度はそこそこ早くて1日あればキャラクターの立ち絵を1枚仕上げられたから、いくつかのサイトに同時登録してアピールとかフォロワーに依頼乞食とかいっぱいして、年間の依頼は200弱。最終的な当時の年収は160万くらい。

自転車操業でギリギリの生活ラインを稼ぎつつ慎ましやかに生きていたが、「Novel AI」が出てきて、「Niji Journey」が出てきて、コミッションサイトに出してるキャラクター立ち絵が全然売れなくなってきて、「こりゃダメだ」と見切りをつけて絵を売るのをやめた。

「AIが台頭してきて絵が売れなくなったので、絵で食っていくのを諦めた」ので、「AIに仕事を奪われた絵描き」といって差し支えないと思う。

現在。普通に再就職して働きながら、
絵師超優遇特権時代が終わったな、いい夢見させてもらったなあ。
と思っている。

絵を売るのをやめた直後はやっぱり色々考えた。
AIの抱える問題は?とか、イラストレーターが仕事を奪われないためには?とか。「反AI」って呼ばれる人の意見も追った。一時期は毎日イラスト生成AI関連ワードを検索していた。

でもよく考えてみたらなんのこっちゃない。起こったのは至極当然のこと。
「自分だけの絵を描く仕事」は奪われてない。消えたのは「クライアントの要望通りの画像を用意する仕事」だ。
技術の進歩によって、機械が「指示に合わせて画像を作る能力」を得たから
私みたいな層の受けていた「指示に合わせて絵を描く依頼」は、「機械でもできる簡単な仕事」になったってだけの話である。

自動レジが増えてレジ打ちのおばちゃんが減ったのと一緒だ。
「レジ打ちは誰でもできるが絵を描くのは人間にしかできないから違う」?
レジに数字打ち込むのだって、昔は人間にしかできなかったよ。

さて、AIに代替されたイラスト依頼の話をしているわけだから、
ここらで「依頼者側」としての話もさせてほしい。
私は絵を売る一方で、絵を買う側だった。
依頼してたのはマイキャラ、オリキャラのイラスト。FF14の持ちキャラとか、スプラのマイイカとか、企画で作ったオリキャラとか。
描かせるか描くかしないと増えないキャラクターのイラストをお金で人に描いてもらっていた。
上で書いた通りそもそも収入が少なかったから、頼むのは1枚数千円くらいのイラストで、月に1枚から多くて3枚。それでも月に1~2万円くらいは使っていた。

これがAIが出てきてどう変わったかと言う話をする。
結論から言えば、「依頼数は減ったが、使用額は同じ」
これまでは質が低くてもいいから枚数を優先して安い依頼を選んでいたのだが、細部に拘らないなら自分の絵のi2iで簡単にオリキャラのイラストを量産できるようになったから、そう言った画像を作るのはAIに任せて数ヶ月に1度しっかり吟味したイラストレーターさんに数万円の絵を頼んでいる。

絵の依頼って、大きく分けて2種類ある。
1つ目が、「誰でもいいから希望通りの画像を用意してくれ」というもの。
2つ目が、「この人のイラストがほしい」というもの。

1つ目はAIに代替された。AIの方が早くて安くて失敗してもノーダメで文句言わなくて権利関係面倒じゃなくて改変も加筆もし放題だから。ほんのちょっとのイラストスキルがあれば細部は簡単に修正できるし。
2つ目には影響がない。「その人」を求めるクライアントはLoRaがあろうがi2iができようが「その人」に頼むから。「その人の手描きである」という事実に、上で挙げたAIのメリット全部を凌駕する価値があるから。

問題は多分、1つ目の依頼しか貰えない立場なのに自分が売っているのは2つ目だと思い込んでいる絵師が多すぎることだ。

自分にもクリーンヒットするのでこれはあまり言いたくないのだが、絵描きって絵しか取り柄がないことがすごく多い。
アイデンティティであり、唯一の自慢であり、ろくに社会に適合できない自分が優位に立って金を稼げる数少ない手段。
それが本当は特別なスキルでもなんでもなく、これまで売り物にできていたのはこの数年が「絵を求める人は増えたが、絵を作るスキルを持つ人間はまだ少ない」という、他に類を見ない絵描き超優遇ボーナス時代だっただけ、という事実はなかなかに認めづらいのだ。
誰だって、売れる理由は自分の実力だと思っていたい。

だから今日も、Xでは反AIと呼ばれる人が騒いでいるんだろう。このnoteの趣旨は「(システムそのものに関する話は一旦置いといて)自分がちょうどイラスト生成AIに売上を食われる立ち位置にいたので体験談と個人の意見を話すよ」なので、その辺の意見についてこれ以上の言及はしないけど。

残念ながら時代は変わった。AIは消えない。
おそらく今後も絵を売りたいと思う絵描きにできることは、「AIに負けないくらい自分のレベルを上げる」しかない。
言及はしないと言いつつ少し上で書いた通りイラスト生成AIを取り巻く様々な話題は割と追っていて、普及に反対する人の意見も見ているが、それでもだ。
よしんば彼らの意見が一部受け入れられて使用に関する縛りが強くなったり、悪用した場合の罰則が見直されることはあっても、「イラスト生成AI」自体がなくなることはないだろう。

ボーナスタイムは終わってしまったのだ。
もう、対人スキルも、宣伝能力も、人脈も、自分をブランドにできるだけのイラストの実力もないアマチュアインターネット絵描きの絵が売れる時代は過ぎ去った。

思えば本来私程度の人間が、一時的とは言え絵で食えるだけの稼ぎを得られていたと言うのが奇跡だったのだ。
本当にいい夢だった。

今はちっさい会社の事務。普通にシフトで働きながら趣味で絵を描いていて、イラスト生成AIも楽しく使っている。
個人的には、今AIが出てきてよかった。再就職に困らない若さがあるうちに方向転換ができて助かった。
大インターネットお絵かきフィーバー時代のボーナスポイント取得を恒常的な自分の実力だと勘違いしたままあと数年経ってたらと思うと、怖い。

これからもこの流れは加速するだろう。
機械以下のクオリティしか出せなくて、自分特有の強みがない絵はもう売れない。
逆にそこで浮く金が出るから、ちゃんと「その人」を求められるだけの力を持ってるイラストレーターは需要が高まるのではないだろうか。

仕事にしたい人は描き続けたらいいと思う。イラストレーターの仕事はなくならない。求められるラインが高くなっただけだ。クライアントが「人間の絵描き」に求めるものを提供できるなら、必ず買い手は見つかるから。

まあ、インターネットがなくて、知ってもらうためには持ち込みと脚を使った営業が必須だった時代に比べたら、今も相当な「絵で食いやすい時代」だと思うよ。

私は「どこにでもいるアマチュア絵描き」の一人として本当のプロクオリティが求められる今後の競走からは降り、消費者として時代の流れを見続けようと思う。

今後が楽しみだ。










ちなみにの追記だが、AIに対して「盗まれた」という感覚を抱いたことは一度もない。
AIは私に一度も「絵を描くな」と言っていないし、AIが私と似た絵柄の絵を吐き出しても私の描いた絵は消えない。

自分の絵は「客観的に見れば」機械で代替可能なクオリティだと判断したから売ることをやめたが、「主観的には」今も昔も変わらず唯一無二の創作物だ。

今日も、絵を描くのは楽しい。


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※7/17、予想の1000倍くらいの人に読んで貰っているので一部誤解を招きそうな表現を修正しました。

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