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徳地の重源さん、奈良の重源さん(最終回 「つながり」を知ってもらうために)


大仏殿前


ふるさとへの軌跡 徳地の重源さん、奈良の重源さん 〜奈良からの便り〜文筆家 倉橋みどりさんによる寄稿記事です。

東大寺再建を成し遂げた俊乗房重源上人の足取りを奈良と徳地の二つの地から紐解きます。

 新年早々うれしい出来事があった。山口市で重源さんを紹介する動画を作ることとなり、東大寺で撮影が行われたのだ。1月14日、山口から奈良にやって来たEさんとIさん。なんとEさんは、東大寺が初めてだとか。重源さんが再建した南大門で待ち合わせし、まずは東大寺別当さんのインタビューの収録へ。現別当の狭川普文師は、知識豊富でサービス精神の旺盛な方だ。とても深く面白い話をしてくださった。
 続いて俊乗堂を特別に開けてもらっての撮影、最後に三笠霊園の一角にあるお墓へも案内した。重源さんのお墓は大仏殿の方を向いて建っている。今はすっかり木木が成長してしまったが、少し前まではここから大仏殿が望めたことだろう。私たちを乗せてきたタクシーの運転手さんも一緒に並んで手を合わせ、夕暮れどきの墓所を撮影させてもらった。翌朝は早朝から大仏殿での法要と南大門を撮影。お昼になる前に撮影班は京都の醍醐寺へと向かわれた。丸一日にも満たない強行軍の撮影にずっと同行させてもらった。社寺での撮影には必ず機材を置く敷物持参(建物自体が文化財であったり、お座敷に上がって撮影することが多々あるため)、仏像を撮影する前にはまずちゃんと手を合わせてから…などの「奈良の常識」が、山口の撮影班には思いもよらないことだったようだ。驚きつつ、同時に「ようやく奈良人らしくなってきたのかも」と少しうれしくもあった。
 山口は私の生まれ故郷。そして奈良は第二の故郷。このふたつの大切な場所を結ぶ歴史が存在することに感謝しつつ、そのつながりを奈良と山口・徳地のみなさんにもっと知ってもらうため、誇りに思ってもらうために。微力ではあるがお役に立てれば幸いだ。
(執筆:倉橋 みどり氏)

(出典:山口市地域版広報紙ふるさととくぢ2022年3月号「ふるさとへの軌跡」)

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