見出し画像

徳地の重源さん、奈良の重源さん(第1回 重源さんはすごい)



東大寺南大門

ふるさとへの軌跡 徳地の重源さん、奈良の重源さん 〜奈良からの便り〜文筆家 倉橋みどりさんによる寄稿記事です。

東大寺再建を成し遂げた俊乗房重源上人の足取りを奈良と徳地の二つの地から紐解きます。

第1回 重源さんはすごい

 奈良で暮らすようになって28年になる。気付けば生まれ育った故郷、山口で過ごした年数よりも、奈良での歳月の方が長くなった。結婚を機に奈良と縁ができ、忙しく充実した日々を送っているが、それでもふっと心細くなることがある。そんなときは、仕事場からほど近い東大寺へ走る。南大門の柱に両手を押し当てているうちに気持ちがすうと落ち着くからだ。
 国宝南大門の柱は、鎌倉時代、山口の徳地から重源さんが運んできた。直径約1メートル、高さ約20メートルの柱が18本。800余年前からここに在り続けている。平家の焼き討ちで大きな被害を被った東大寺を再建した重源さん。資金集めから資材調達、工法の工夫に至るまで総指揮を引き受けたとき61歳。当時よりはるかに平均年齢は上がっている令和でも、還暦を過ぎ、これほどの大事業を任せたいと見込まれ、また、それを引き受けることができる人はめったにいないはずだ。
 重源さんはすごい。なのに、山口にいた頃に重源さんを意識した記憶がない。奈良に来て、東大寺の歴史に触れる中で重源さんを知り、山口とのゆかりを知った。奈良と山口とを結んだ重源さんってどんな人なのか。もっと知りたいと、徳地の重源さんゆかりの地を巡ってみたときに気付いたことがある。(次回に続く)
(執筆:倉橋 みどり氏)



(出典:山口市地域版広報紙ふるさととくぢ2021年10月号「ふるさとへの軌跡」)



いいなと思ったら応援しよう!