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徳地の重源さん、奈良の重源さん(第3回 悲しき蓮華坊)
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ふるさとへの軌跡 徳地の重源さん、奈良の重源さん 〜奈良からの便り〜文筆家 倉橋みどりさんによる寄稿記事です。
東大寺再建を成し遂げた俊乗房重源上人の足取りを奈良と徳地の二つの地から紐解きます。
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2019年7月、山口観光コンベンション協会・徳地支部の池田大乗さんたちが奈良に来てくださった。毎年7月5日に行われる東大寺俊乗堂での重源忌に参拝することと、何より一番の目的は奈良発着で山口での重源さんのゆかりの地をめぐるツアーの相談をするためだった。
奈良ではあまり徳地とのゆかりが知られていない。それなら奈良と山口をつなぐ旅を企画したいと思ったのだ。奈良でディープなツアーを企画している「やまとびとツアーズ」の岡下さんも交え、年内に1泊2日のツアーを決行することになった。名付けて「東大寺・鎌倉再建を率いた重源上人の足跡をたずねて」。
池田さんたちから、徳地とその周辺に残るゆかりの地について教えてもらう中で、「蓮華坊」という名前が出てきた。これも奈良では聞いたことのなかった名前だ。「重源さんに付き従っていた若いお坊様で、あるとき、材木を運ぶ筏が岩にぶつかって亡くなったんですよ。その場所は僧取淵・僧取岩と呼ばれています。『徳地のローレライ伝説』です」と池田さん。
木片が鯖になったとか、柿が甘くなったり、渋くなったりしたほのぼのとするような伝説ではなく、そんな悲劇も残っているのか、と驚いた。ツアーでは、まず「蓮華寺跡」で蓮華坊木像に手を合わせ、僧取淵・僧取岩へ、そして連華坊のお墓にもお参りすることにした。直観的に、重源さんを助けて働き、命を落した人は決して蓮華坊ひとりではなかったような気がしたのである。
(執筆:倉橋 みどり氏)