![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/136082313/rectangle_large_type_2_55d2826c3a319dee0b4636a0285072a0.jpeg?width=1200)
春になると顔をだす
「来たぜ」
後ろを親指で指差して、わたしはかっこよく言った。
「誰が?」
夫は普通に聞いてきた。
「カベチョロ」
ヤモリのことである。
爬虫類のヤモリ。
害虫を食べてくれる。
福岡ではカベチョロという。
明かりのついている部屋のすりガラスの窓に毎年やってくるあいつである。
昨日まではいなかった。
あったかくなってきたから出てきたのだろう。
わたしは見るのは平気。
義母は全くだめで、ヤモリが部屋に侵入した日には夫が呼び出され、車で5分の実家へ駆けつけることになる。
そんなヤモリだが、息子はかわいいという。
去年の夏頃だろうか、うちの窓にいるヤモリが同じ窓にとまっているガを狙っていた。
ジーッと様子をうかがっているのを、息子もジーッとうかがっている。
年中さんになって生き物に興味がでてきた頃だった。
そして、しゅっとガに食いついて捕食に成功すると、息子は拍手していた。
カベチョロを応援していた。
そういえば、冬の間はどこにいるんだろうか。
息子の持っている図鑑を開いてみてもそこまで詳しく載ってない。
ネットで検索すると、冬場は家の隙間とかでじっとしているとのこと。
そうなんだ。
春にどこからかやってくるわけじゃなくて、ずっといたのか。
でも顔を出すのはこの時期なので、あいつをみると春が来た感じがして、夫に報告に行ったのだ。
夫は「うん」と言っただけだった。