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「オレ、コガネムシの友達おるよ!」
義実家のとなりの兄妹が、よく息子と遊んでくれる。
お兄ちゃんは小学3年生で妹は息子と同じ年長さん。
今日も一緒に遊んでいた。
そのお兄ちゃんから聞いた話。
「オレ、コガネムシの友達おるよ。」
え!?コガネムシの友達??
どうやったら友達になれるの?
「6年生がコガネムシ投げたと。」
ふむふむ。
「次の日、コガネムシがオレの肩にこーやって登ってきたと。」
右腕をつたって右肩へ登ってきたという。
「そして、友達になったと!」
えーーっ!!めっちゃいい話だね!
わたしはこう解釈した。
「たすけて…!」
誰かの声が聞こえる。
校舎裏からだ。
耳じゃなくて心で聞こえるような不思議な声。
たどっていくとここに来た。
6年生が数人でなにかを囲んでいる。
オレがいるところからはよく見えない。
もっと近づいてみたいけど、3年生のオレ一人で6年生の中に入って行く勇気はない。
木の枝で何かをつんつんしている。
ツツジの葉っぱに隠れながら少しづつ近づいてみる。
そのとき、枝の先にくっついている小さな緑色のギラっとしたものが見えた。
コガネムシだ。
6年生が枝を持った手をまっすぐ上へあげた。
「たすけて…!」
あの声はコガネムシの声なんだ!
その瞬間、ブンッと6年生が腕を振り下ろした。
枝の先に必死にしがみついていたコガネムシはキラッと光ってどこかへ飛ばされてしまった。
なんで自分の羽で飛んで逃げなかったんだろう。
どうしてオレに助けを求めてたんだろう。
6年生達が去ったあと、コガネムシを探したけどみつからなかった。
次の日の昼休み、校舎裏をまた探した。
葉っぱをかきわけていると、ぽつぽつと雨が降ってきた。
「あいつだいじょうぶかな…」
虫だから雨が降ったって平気だろう。
だけど、オレを呼んでいた。
カサカサ。
右腕に何かを感じた。
雨に濡れて緑色のキラキラしたあいつがオレの肩へ登ってきたのだ。
「ありがとう、ぼくを探してくれて」
コガネムシの羽は片方もげていた。
胸がギュッとなる。
「飛べないならオレの肩かしてやるよ」
そしたらもう6年生につんつんされることもないだろう。
こうしてオレたちは友達になった。
なぜだかよく分からないけど、このお兄ちゃんのコガネムシの話を聞いた時めっちゃおもしろかった。
たぶん、コガネムシと友達になるには優しい心がいるんじゃないかな。
6年生が投げた次の日に友だちになったってことは、無事だったんだねって気持ちがあるような気がした。
次はどんな話をしてくれるのか、楽しみにしている。