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SUPER BEAVERに学ぶ「生きる力」
おはようございます。こんにちは。こんばんは。おやすみなさい。
本日より”しがない音楽ライター”という二つ名で身の周りの音楽について語っていこうと思います、とくと申します。
私は現在音楽大学に在籍しながらロックやヒップホップを中心とした音楽に対する造詣を深めている真っ最中です。
まだまだ未熟な私ではありますが、「若い人間から見た音楽シーン」をわかりやすく言語化して伝えていければと思っておりますので、是非ともこのnoteに愛着を持っていただければ幸いです。
基本的にはアーティストの歴史や私独自の目線で感じたことをメインに、アーティストそれぞれで投稿していくつもりです。アーティストのことを知らない方にも興味を持ってもらえるような、そんなnoteにしていきたいと考えています。
たまに音楽シーン全体を俯瞰して書いてみたり、ジャンルごとに掘り下げみたり、ライブレポートを書いてみたりもしたいと思っています。何卒ひとつよろしくお願いします!
結成以来メンバーチェンジなしの固い絆
では早速記念すべき第1回の投稿のテーマに入っていきましょう。
今回は映画やドラマのタイアップはもとより、近頃はテレビへの出演にも引っ張りだこのロックバンド・SUPER BEAVER(スーパービーバー)について掘り下げていきます。
SUPER BEAVERは今年で結成19年目のロックバンドです。
「REPRESENT JAPANESE POP MUSIC FROM TOKYO JAPAN」というテーマを掲げ、「あなたたち」でなく「あなた」に届ける歌には、聴く人の心を大きく動かす力があります。
メンバーはVo.渋谷龍太(しぶやりゅうた)、Gt.柳沢亮太(やなぎさわりょうた)、Ba.上杉研太(うえすぎけんた)、Dr.藤原”34歳”広明(ふじわらひろあき)(敬称略、以下同)の4人。渋谷と上杉が都立目黒高校時代の同級生、柳沢は同校軽音楽部の部員で上杉の後輩、藤原は柳沢と幼馴染という関係です。
渋谷は軽音楽部には所属していなかったものの、上杉の誘いで2005年に学生バンドを結成したのがSUPER BEAVERの始まりです。
それ以来、現在に至るまで一度もメンバーチェンジを行うことなくバンド活動を続けています。
日本のロックシーンに詳しい方は誰もがご存じの4人組ロックバンドですが、現在に至るまでは沢山の苦難の道程がありました。その中で結ばれていった固い絆は、今でも解かれる事なく前進を続けています。
今回は
①デビュー〜メジャー1期、②インディーズ期(前編)~自主活動に明け暮れた日々~、③インディーズ期(後編)~圧倒的な力を発揮した武道館・代々木第一体育館~、④自ら選んだメジャー2期という道
の4部構成でアーティストを深掘りした後、⑤私がお勧めしたい曲について書きたいと思います。
①デビュー〜メジャー1期
-実力を見せつけたティーンズ、その後のメジャー1期目の混沌-
楽器経験のある柳沢、上杉、藤原に加え、音楽を聴く事が大好きで特段音楽活動はしたことがないという渋谷がボーカルとなって組んだバンドは、ヤマハの主催するTEENS' MUSIC FESTIVALに2度出演します。初出演の2005年にはいきなりオーディエンス大賞を獲得、翌年2006年には二年連続のオーディエンス大賞に加え大賞も獲得します。
周りのアーティストも声を揃えて「ビーバーはヤバかった」というほど圧倒的なパフォーマンスと二年連続のオーディエンス大賞で見せつけた人気という二つの大きな看板を携え勢いに乗ったSUPER BEAVERは、音楽業界大手のソニーミュージックと契約し、メジャーデビューを果たします。
当時大きな波に乗っていたSUPER BEAVERは、「メジャーデビュー」という大台に乗った事で、より一層力強く進んでいけるものだと当時誰もが信じていました。確かにいきなりアニメのOPとED曲の同時タイアップがつくなど着々と知名度も上がっていきました。しかし現実はそう上手く続くことはありませんでした。
詰まるところ、オトナ、そして社会とか世間ってのを、自覚なしに舐めてたんだと思う。二十歳を迎えた私が見る外の世界は、リアリティを伴わないリアルで、映画や本と、然程変わりはなかったのである。
端的にいうと、SUPER BEAVERは2年でメジャー落ち(=契約終了)を経験します。当時のプロデューサーとの軋轢はもとより、何よりメンバーが心身ともに憔悴しきっていました。もうメンバーに余裕はありませんでした。
さて、製作中のスタジオ、ソファに浅く腰掛けた私は全てが麻痺して身も心もスカスカだった。お麩、みたいだった。
「音楽とは?」
この瞬間、本気で思った。どうしてかこの瞬間全く無視できなかった。若輩ながら、人生も、生活も、大切な人たちも、何もかも全部が結びついてしまった。
プッツンした。
まじでこういうことか、ってわかるくらい生々しく、自らの中で張り詰めていた何かが切れるのを感じた。
数分後、情けないかな救急車。
②インディーズ期(前編)-自主活動に明け暮れた日々-
メジャーの舞台から身を引き、インディーズバンドとして活動を再開させたSUPER BEAVERは、精力的なライブ活動を続けます。知人から譲り受けた車を走らせ、全国を駆け回り年間100本以上のライブを敢行。
更には自主レーベル「I×L×P× RECORDS」を設立し、さらに活動のスピードは上がっていきます。
インディーズ移行後初のミニアルバム「未来の始めかた」では現在もライブでキラーチューンとして演奏されることが多い「歓びの明日に」や、映画「虹色デイズ」の挿入歌として若者の心を掴んだ「your song」など、彼らの実力を存分に発揮しました。
2年後の2014年には、渋谷にある老舗ライブハウスeggman内に発足された新ロックレーベル[NOiD]の第1弾所属アーティストとして移籍します。
この時期にリリースしたアルバム「361°」は、「あなたたちじゃない、あなたに歌っているんだ」という今やバンドの代名詞でもある言葉をひっさげSUPER BEAVERが感じた様々な感情を一曲一曲に落とし込んでいます。バンド人生を一周回って更に次の一歩を踏み出すという強い意志が多くの人/アーティストに伝わり、「京都大作戦」などの大型ロックフェス出演やMAN WITH A MISSION、coldrainといった強力バンドとの対バンなども増えていきます。
地道な努力を続ける中で2015年にはSUPER BEAVERを代表する名曲「証明」も収録したアルバム「愛する」をリリース。Gt.柳沢がこれまでの忙殺により緊急入院をした後初めてのアルバムでした。
僕はメンバーが全てとは思わなかったし、音楽が全てとは思わなかった。周りにいる仲間、家族、恋人、もちろんバンド、お客さん、大事なものっていっぱいあって、そのとき大事なものに優先順位をつければいいって、偽りなく言えるようになったんです。だから、《「あなただけが僕の全て」とは言えない理由が嬉しい》っていうのは、本当にそのままの言葉です。やっぱり“君は僕の全てだよ”って言いがち。だけど、絶対にそんなことがないし、そのほうが嬉しいなって思ったんです。これも大事だし、これも大事って言えるほうが幸せ。
「SUPER BEAVER、バンド史上最も強靭な意志の宿った1枚『愛する』」より
ここまでバンドとして幾度となく危機に陥った中で柳沢が気付いたというこの言葉は、SUPER BRAVER を更に強固なバンドにさせる追い風となり、ファンの数も右肩上がりに増えていきます。
そして、その翌年にリリースしたアルバム「27」でSUPER BEAVER は大きな飛躍を遂げます。”責任を持つ”ことを強く押し出したタイトルチューン「27」、強い説得力と共に「かっこよく生きていたいじゃないか」と訴えかける「人として」、”あなた”がいてこその人生なのだと再認識させた「素晴らしい世界」など、これからのバンドの運命を決めたアルバムと言っても過言ではないでしょう。
事実として、これからの活動はメジャーレーベルも驚愕するほどの規模となっていきます。
③インディーズ期(後編)~圧倒的な力を発揮した武道館・代々木第一体育館~
2018年4月30日、SUPER BEAVERはひとつの”答え”を出します。
「レペゼンジャパニーズポップミュージック、フロムトーキョージャパンなんてものを恥ずかしげもなく掲げて歩いてきた日々は、山あり谷あり、紆余曲折そんな言葉では表せない程色々ありましたけど、この日がひとつの答えだと思っています。どうもありがとね。
やりますか日本武道館。ライブハウスから日の丸の下へやって来ました。14年目のインディーズバンド、SUPER BEAVER始めますよろしくお願いします。」
SUPER BEAVERによる初の日本武道館単独公演。
チケットは即日完売。あまりの人気さに注釈付指定席の増販や公演の生中継など、様々な対応が取られました。
「少しも当たり前だと、思っていませんので、これからも、よろしくお願いします」
いわゆる「メジャー落ち」を経験してからの日々は凄絶なものでした。
それでも一人一人との一対一の対峙を経て掴んだ日本武道館という答え。
Vo.渋谷の目には涙が滲んでいました。
このMCの後に演奏された「ありがとう」には涙が止まらない観客も多くいました。
日本武道館公演から2ヶ月余り、「歓声前夜」というアルバムをリリースします。確固たる熱量でリスナーと向き合う姿を音楽に落とし込み、次第にCM曲やテレビ番組のテーマソングなど、タイアップの数も増えていきます。
そして、来たる2020年1月、インディーズバンドとしては前代未聞の規模でライブが行われます。
一寸先に何なのか 一体明日がどうなのか
一瞬なんて一瞬で考える間もなく過ぎ去ってく
一分間の葛藤を 一週間抱えながら
一生分の正解が急に欲しくなった
アカペラで歌い始める渋谷。彼の目の前には1万3000人のファン。
舞台は東京・代々木第一体育館。
バンド史上最大規模となるこの場所で、彼らはバンドとしての矜持と覚悟を見せつけました。
「「努力は人を裏切らない」だとか、「夢は信じていれば必ず叶う」であるとか、そういったことって、本当かな?って思ってる、俺は。
努力が報われるんであれば、何故音楽を辞めていった仲間がいたんだろうって思う。夢が叶うんであれば、なんで自ら命を絶った奴が周りに居たんだろうって本当に思います。
そういう奴らを仲間にして、そういう奴らと一緒に音楽やってきて、叶った奴も、報われた奴も、叶わなかった奴も、報われなかった奴も、そういう奴らを仲間にして音楽やってると、そういう事って言いたくないなってそこまで言えるようになりました。
でも、音楽をやる理由であったりとか生きる理由であったりとかは、俺達には凄くたくさんありました。
音楽としての1対1の対峙をあなたがしっかりしてくれたが故、俺達はずっとやりてえなって思えるようになりました。
どうしても「報われるための努力」にしたいのであれば、続けていないことには意味を成さないなって思います。
当時は何も分かっていなくても、当時は何も思い描けていなくても、目の前に1万3000人ではなく「あなた」が居てくれるというこの事実は、俺達にとってはかけがえの無い宝物です。
拝啓、数年前の僕は何していますか?
拝啓、数年後の僕はどこで何を見ていますか?
目の前に、あなたがいてくれることを願って。
まわる、まわる」
このMCと共に演奏された「まわる、まわる」は、メジャーシーンから姿を消す直前、一作だけ自由にアルバムを作って良いと許可が出た中で作られた曲です。
SUPER BEAVERにとってかけがえのないこの曲は今でも滅多に演奏されることのないレア曲ですが、柳沢が書いた歌詞から伝わる当時の悩み、葛藤はファンにもしっかり届いています。
女優・モデルとして活躍する藤田ニコルさんも会場で見たこの曲に圧倒された、涙が出たと語っていました。
④自ら選んだメジャー2期という道
それから3ヶ月後、4月8日。
世間はコロナ禍初期で緊急事態宣言が発表され、学校は休校に、屋外への外出自粛も叫ばれ、どんよりとした雰囲気の中でした。
突如、SUPER BEAVERはメジャー再契約、それも古巣であるソニーと、と発表します。
実は3年ほど、ソニーの方からメジャーに戻らないかという誘いを受けていたそうです。しかしメンバーはこれを拒否。
それでも長きにわたってレーベルから熱意を伝えたことによりメジャー再契約という前代未聞の出来事が生まれました。
「ハイライト/ひとりで生きていたならば」のリリースから始まったメジャー再契約後のSUPER BEAVER。この後アルバム「アイラヴユー」、「東京」のリリースを2年にわたって行い、それでもなおライブ活動は継続して意欲的に行います。
フェスでは大トリを任せられることも増え、ロックシーンのみならず音楽業界全体で見ても熱のこもったグループであると言えるでしょう。
そして2022年〜23年、大きなタイアップを任されることになります。
それは映画「東京リベンジャーズ」の主題歌です。
'22年には「東京リベンジャーズ」の主題歌として「名前を呼ぶよ」、そして今年'23年には「東京リベンジャーズ2 血のハロウィン編 運命」の主題歌に「グラデーション」、「東京リベンジャーズ2 血のハロウィン編 決戦」の主題歌に「儚くない」を書き下ろし。
2022年の邦画ナンバー1を叩き出した大ヒット作の主題歌として、華やかながらも決して色褪せることのない名作を作り上げました。
2023年の7月にはバンド史上最大規模を更新する、富士急ハイランド・コニファーフォレストでのワンマンライブ2daysも控えており、その勢いはとどまることを知りません。
「あなた達では無い。あなたに歌っているんだ。」
そう言わしめるだけの覚悟と説得力。
SUPER BEAVERは今一番アツいバンドです。
⑤私がお勧めしたい曲
さて、ここまではバンドの歴史について掘り下げてきましたが、ここからはSUPER BEAVERをとことん聴き尽くした人から見る「お勧めしたい曲」について、何曲かお付き合いください。
1.それでも世界が目を覚ますのなら
今から10年前にリリースされた本作。
”二度と無い 戻れない 誰もがそういう今日に立って
もう一度って 今気づいたとか 覚悟するんだ
終わりは終わりで そういう世界だ
だから愛しいだから命を懸けているんだ
そうだろう? そうだろう?”
「もう一度」なんて無いのだ、と強く訴える歌詞にはっとする人もいるかもしれません。
MVも素晴らしい演出です。ぜひ一度お目にかかって見てください。
2.まわる、まわる
先ほど③でも登場したこの曲。
YouTubeにも公式の音源は公開されていませんが、サブスクリプションサービス等で聴くことができます。「ハイライト/ひとりで生きていたならば」の3曲目に再録版が収録されています。原作(アルバム「SUPER BEAVER」収録)とも聴き比べてみてください。少し変化していることがありますよ。
3.ロマン
ラストはこの曲。
アルバム「東京」に収録されている、アルバム曲です。
シングルでリリースされた訳でもないこの曲を推薦する理由は、この曲を聴いてもらえれば分かると思います。
歌詞、サウンド、歌声、全てにSUPER BEAVERの真髄を感じることができます。
一度目はMVを見て、二度目は歌詞を見ながら聴いてみて、三度目は目を閉じてじっくり聴いてみてください。
SUPER BEAVERは「音楽をできていればそれで良い」訳ではありません。「あなたが居てこその人生だ」「報われろ、報われろ、上手くいけ、上手くいけ」と、そう何度も何度も叫び続ける姿に心を打たれるに違いありません。
という訳で、今回はロックバンド・SUPER BEAVERについて特集しました。
彼らの思い・生き様が少しでも伝わったのなら幸甚の極みです。
ではまた次回もお会いしましょう。
しがない音楽ライター・とくがお送りしました。
失礼します。