【全曲感想】ピーナッツくん4thアルバム『BloodBagBrainBomb』 ~リリックを書いてる midnight~
はじめに
2024/06/14(金)、VTuber・ラッパーであるピーナッツくんの第4の音楽アルバム『BloodBagBrainBomb』(ブラッドバッグブレインボム)がリリースされました。
各種ネットメディアでは、以下のように説明されています。
◇
この記事では、『BloodBagBrainBomb』(略して「ブバブボ」)について語っていこうと思います!
この記事で行うのは、主に以下のことです。
好きなところを語る。
歌詞を解釈、考察する。
最終的には、以下のことを語ります。
ピーナッツくんとご主人様(兄ぽこ)の関係性についてある一定の立場を示す。
ピーナッツくんのアニメの世界線と他の活動の世界線について、ピーナッツくんはこう考えているんじゃないか?という解釈を提案する。
自分なりに全力で書けたと思います!
多くの人に楽しんでもらえる内容になっていることを祈ります!
アルバムも13曲あるので少し長いですが、どうかお付き合いいただけますと幸いです…!
特に好きな曲ランキング
最初に、現時点で『BloodBagBrainBomb』の中から私が特に好きな曲をあらかじめご紹介します。
あえて順位をつけるなら、以下のとおりです。
① Dance for What?
② Bloody Mosquito
③ Yellow Big Header、Wha u takin bout
他も好きな曲はありますが、この4曲が特に好きですね。
中でもDance for What?は断トツで好きです。
それにしてもいいアルバムですね。
01. BloodBagBrainBomb
アルバムの導入曲という感じですね!
「BloodBagBrainBomb」が意味するのは、「輸血袋と脳爆弾」とのこと。なんだか物騒ですね!!
激しく叩きつけるようなサウンドの連続が、脳が爆発したようなアルバムジャケット(作:釣部東京)のイメージとぴったりです!
この曲では、ピーナッツくんの自主制作ショートアニメ「オシャレになりたい!ピーナッツくん!」からいくつか音声が引用されているようです。
(特にSeason1の終盤)。
3年ほど前からすっかりショートアニメ更新をやめてしまったピーナッツくんですが、まだこうして過去の作品を引用することがあるんですね。
アルバムの1曲目「BloodBagBrainBomb」にてショートアニメから音声を引用した意味とは何なのでしょうか。
これは、『BloodBagBrainBomb』が、ショートアニメから始まった「ピーナッツくん」の物語の延長線上に位置する作品だということを示しているのかもしれません。(詳しくは「13. Dreamworks」で説明します)。
02. Yellow Big Header
最初の楽曲にふさわしい、元気いっぱいで疾走感溢れる楽曲ですね!
ピーナッツくんも非常に可愛らしい声色で歌っています。
すごく楽しい気持ちになるのでかなり好きな曲です。
歌詞感想
この曲は次の音声が流れるところから始まります。
「黄色い巨大な頭を持つ生命体(=Yellow Big Header)」が意味するのは、おそらくピーナッツくんのことでしょう。自分を未確認生命体にたとえているんだと思います。
「あの謎の黄色い生命体を追え~!」みたいなワクワクするテンションの歌詞がすごく楽しいです。
ピーナッツくんを「黄色い巨大な未確認生命体」として提示するというコンセプトからは、昨年リリースされた楽曲「CTP」(2023年)の世界観から引き継がれているものを感じます。
ラッパーが「世界中を飛び回ってるぜ」とアピールするというのはままあることかもしれません。しかし、ピーナッツくんの場合はその特徴的な外見に焦点を当て、自分自身を「巨大な未確認生命体」に見立てて歌っているわけです。すごくポップで楽しいなと思います。
「Yellow Big Header」のチャンチョ(=ピーナッツくんのショートアニメに登場する、ハスキーな低音ボイスのキャラクター)のパートもすごくいいですよね!
(コール前のボイスは「例えば」か「Whatever」に聞こえますが、歌詞に記載がないため不明です。たぶん「例えば」ですかね)。
未確認生命体コールは本当にすごく楽しいです。
オレンジ博士(=ピーナッツくんのアニメに登場する、しゃがれた裏声のようなキャラクター)が「ゴーストも ゾンビも ドラキュラも デビルも 全て我々が目撃したものなのじゃ!」と歌っていますね。
これらの未確認生物たちはピーナッツくんがこれまで関わってきたVTuberたちのことではないか、という説をSNSで見かけました。確かにそうかもしれませんね! だとしたら、様々な種族が入り混じるVTuber業界で過ごすことの楽しさを表現してくれている感じがして愉快です。
好きな歌詞
モリゾーとキッコロは、2005年に愛知県で開催された愛知万博「愛・地球博」の公式マスコットキャラクターです。今で言えば、大阪万博(2025)におけるミャクミャクと同じポジションですね。
モリゾーとキッコロはどちらも緑単色で、彼らはいわば「Green Big Header」とも言えるわけです。そんな緑巨大頭のキャラクターに対して黄巨大頭のピーナッツくんが「仲間…?」みたく訊いている様子を想像すると可愛くて癒されます。だからこの歌詞は好きです。
2025年に大阪万博が開催されようとしているこのタイミングであえて愛知万博(2005)のキャラクターを引き合いに出すのもおもしろいです。少しひねくれているような気もするし、世代的にはモリゾーとキッコロの方が素直に愛着があるだけなのかもしれないですね。(当時滋賀に住んでいた兄妹は往々にして行ったんじゃないですかね、愛・地球博)。
サウンド感想
音楽としては、個人的に100 gecs(ワンハンドレッドゲックス)というアメリカの音楽グループを思い出しました。100 gecsは「ハイパーポップ(hyperpop)」の代表的なグループのひとつとされています。
ピーナッツくんは雑誌『POKOPEA』(2024)で100 gecsの「Doritos & Fritos」を、プレイリスト「晴れた日の朝に」の1曲として挙げていました(p. 102)。
それがきっかけで私はこの曲がすごく好きになりました。
少しひずんだギターの音色とポップで楽しい雰囲気がこの2曲の間で似ている感じがします。100 gecsの「Doritos & Fritos」も、ピーナッツくんの「Yellow Big header」も、晴れた日の朝によく合うのではないでしょうか!
まとめ
「Yellow Big Header」は楽しいポップソングで、すごく好きです。
チャンチョやオレンジ博士など、ショートアニメのキャラクターが参加してくれているのもファンとしては嬉しいポイントです!
03. Squeeze
「squeeze」とは「絞る」「搾る」「握り締める」などの意味を持つ英語です。スラングとしては、「恋人ではない体の関係を伴うだけの遊び友達」みたいな意味で用いられることもあるらしいです。
また、「スクイーズ」という握って遊ぶおもちゃがあって、基本的にはこれがイメージされているようです。
歌詞感想
ここでは、過去のインタビュー記事を掘り返して「ピーナッツくんの考えってこういうことでしょ?」と語っているような人に関して、「わかったつもりすんじゃねぇよ」と言っているようです。「根掘り葉掘り探って、いつまでもパーソナリティを消費し続けるようなことされたくない」といった不快感を表明しているように思われます。
このリリックに関して言えば、私はnote記事やX投稿などでしばしばそうした振る舞いをしてきたため、急に自分に矛先が向いてきたように感じて、結構苦々しい思いをしています!
これはピーナッツくんの活動について、今後どうなるか予測がつかないし、はっきりとした計画もない、といったことを歌っているんだと思います。
「ハレとケ」は、祝祭や年中行事などの「非日常」(ハレの日)と普段の生活である「日常」(ケの日)を表す言葉です。
「鏡の中」は、モニターに映るピーナッツくんのことを指していると捉えています。
「コントラスト」は、「対比」のことで、特に明るさや鮮やかさに関する「明暗」のことを指したりもします。
一方で、数千~数万人が見に来る生放送や音楽ライブなどの日は「ハレの日」に当たるでしょう。他方では、深夜にひとりでリリックを書いているような「地味な」日もたくさんあるわけですね。その対比を表現しているんだと思っています。
ピーナッツくんは、リスナーたちから金を搾り取る代わりに「傷」を負っているようです。VTuberやラッパーは、人生や人格の様々な部分を切り売りしリスナーたちを楽しませている側面があるとも言えます。そうして開示した「自分」に対して、匿名の人たちが安全圏からいろいろなことを言ってくるわけですね。その中には、あまり快く感じられない言葉もあるのでしょう。
しかし、その傷は「目には見えないぜ」というのがつらいところなのかもしれません。
そんな思いしてるんだから「Money on me!」(=金よこせ!)くらい言ってもいいのかもしれません。
(ちなみに、ぽこピーのグッズやイベントは料金設定が良心的であることが多いため、ファンとしてはあまり搾り取られてる実感はありません)。
「殻を破る日」はいろいろな解釈が可能でしょう。私の場合は「ピーナッツくん」というポップな外装を脱ぎ去って、中身の人間がこの機会にいろいろ文句を言いに来たようなイメージを抱きました。それってちょっと怖いですね。
YouTuberコンビの「ぽこピー」は兄妹二人でやってる自営業のはずなので、「08:00~17:00の8時間労働」などの定時はもちろんなく、やろうと思えばいつまでも働き続けることができる労働環境なわけです。だから、朝日が昇る時間まで作業する日もあるのでしょう。このリリックで、彼らの生活における大変な様子がまた少しイメージしやすくなった気がします。
「自分で握ってる money time dick」については、個人事業主だから会社員と違ってお金や時間の裁量権を自分が握っているということでしょう。dickを自分で握ってるというのは、言葉が難しくて私にはよくわかりません。けどなんか気持ちよさそうですね。
この箇所からは、周囲から理解されないほど高い野心や向上心が膨れ上がっている様子が伝わってきます。
(ピーナッツくんのご主人様が、「VTuber業界もオタクカルチャーとしてエヴァを超えるくらいのことができるようになって行かないと」みたいな趣旨のことを生放送で言って、「エヴァを超えるだって!?」と周囲がざわついた日のことを思い出します。)
トピック:「ピーナッツくんはどうしてこんなに苦労を歌うのか?」
ピーナッツくんは今回のアルバムでめちゃくちゃ自分の苦労について歌っています。特に「夜遅くまでリリックを書いている」といった内容の描写は、今作の裏テーマではないかと思うほど頻出します。
ピーナッツくんはどうしてそんなに自分の苦労を歌っているのでしょうか。
それは思うに、「苦労をわかってもらえない」と感じることが日頃多いからではないでしょうか。
会社員は、この社会の中でかなりの構成比率を占める気がします。よって、会社員のありがちな苦労に関しては「わかってくれる人」がこの社会の中でたくさん見つかるように思われます。
しかしその一方で、事務所に所属せず毎日動画撮影や楽曲制作を続けるクリエイターであるピーナッツくんの生活は、いまいちその苦労を理解してもらえないことも多いのかもしれません。これは過去の様々な発言から伺えることです。特に、近い境遇にある動画勢VTuber仲間の「おめがシスターズ」や「富士葵・キクノジョー」とのコラボにおいて、彼らがそうした心境(=なかなか苦労を共有できる仲間がいない)を語り合っているのを見たことがある気がします。
このアルバムは、「制作期間中に感じたピーナッツくんの内側を表現した作品となっている」とされています。
「寝る時間を削ってまでリリックを書いたり仕事してるのに、どうしてわかってもらえないんだろう」という想いを強く抱いていたのかもしれません。
04. not ok
歌詞感想
「遊歩道」とは、通行経路としての単なる「歩道」ではなく、散歩や自然観察などある種の「寄り道」のために作られた歩道だそうです。
「生い茂った森の中で光る ぼくが作る曲は遊歩道」からは、「ぼくの作るおもしろい曲を聴いていけば?」みたいなニュアンスを感じます。
「先がない世界ビルの傾き」からは、巨大企業でさえ経営破綻してしまうような先行きの不安定な世界のことを表現している気がします。
「先がない世界ビルの傾きの 隙間に見えてるシュートコース」からは、傾きかけている無数のビル群の隙間にサッカーのシュートコースを見出す、という少年漫画のワンシーンのような情景が浮かびます。サッカー好きの5歳児であるピーナッツくんらしい空想ですよね。
それに加えて、巨大企業たちが傾きかけている隙間を縫って、企業無所属のピーナッツくんが何とか生き抜くためのコースを見つけたんだということも表現しているかもしれません。
05. Liminal Shit
初の正式なピーナッツくん作曲(ビートメイク)の楽曲ですね。
他に引けを取らない心地よいビートだと思います!
歌詞については、事務所無所属のピーナッツくんがPOP UPなどのイベント準備に奔走している様を愚痴っぽく歌った曲だと思われます。事務所に所属していればこんな面倒事をせずに済んだだろうにな、という恨み節が込められている気もします。
歌詞感想
「右振るtinder しないmatching」や「レフトサイド speed it up アルフォンソ」では、tinderで画面を右にスワイプしている様子やアルフォンソ(=サッカー選手)がレフトサイドを上がっている様子が描かれており、上下左右の線的な移動を感じさせます。
「次のPOPUPの準備 on&on 駆け回る 階段 上下動」では、(TSUTATA×ぽこピーのコラボ「POPIYA」など)POPUPの準備で設営会場のあるフロアまで階段で上下移動している様が歌われている気がします。
「こんな条件なかったよな 話は移り変わる 右に左」からは、イベント業者さんとのやり取りで寝耳に水の条件を出されたり、話を二転三転させられたりと振り回される様子が伝わってきます。
「高い志 低い腰なのに ベッド以外でいつも舐められてる」からは、意識は高くて振る舞いは謙虚なのに、それにも関わらず舐められがちであることに対する不服な感情が表現されています。
なおLiminal Shitの「ベッド以外でいつも舐められてる」はralph「Get Back (feat. JUMADIBA & Watson)」におけるWatsonのリリック「ベット以外ナメられたくない俺」からの引用のようです。
おそらくピーナッツくんがここで強調したいのは、見くびられるという意味での舐められているだと思うので、自分はそれほど性的な意味では読んでいません。
「所詮担当者もサラリーマン ぼくら下請けだな 悲しいな」からは、POPUPなどのイベントで、テナント内のいちブースを埋めるために発注を受けた立場であるため、イラストを入稿したり設営を行ったりといった業務が発生する苦労を歌っているのかもしれません。YouTubeやステージでは主役として輝いているピーナッツくんも、裏では様々な「雑務」のような仕事をたくさんしているようです。
以上見てきたように、「Liminal Shit」の歌詞では「上下左右」に関わるリリックが頻出しています。そうした誰かに振り回されたり業務に奔走したりする中で描いてきた道のりたちを線で結んでみると、複雑な紋章が浮かび上がり、それはかっこいいはずだとアピールしている気もします。(「紋章」とは基本的にかっこいいものでしょう)。
トピック:「豆が言いそうなこと・豆の口から出てくる言葉」とは
ピーナッツくんは雑誌『POKOPEA』(2024)で楽曲の制作過程について次のように語っています。
「豆が言いそうなこととか、口から出てくる言葉とか」っていったいどんな言葉でしょう。そんな歌詞ってありましたっけ?と思って、少し考えてみました。
「ソース」「甘くみない」「丸めてポイする一口サイズ」からは、少しピーナッツくんの「食品」としての側面が出ている気がします。ソースにも甘口と辛口がありますし、「豆」って基本的に一口サイズですし。何となく食品系ワードをチョイスしているのではないでしょうか。
とはいえもちろん基本的には、「口からでまかせソースはないけど」における「ソース」が意味するのは「情報源」のことでしょう。
「知ってる奴らは甘くみない」が意味するのは、舐めてくる人も多いけど、ピーナッツくんの音楽活動を知っている人はそう簡単に甘くみてこない、という話かなと思います。
「一から十まで話す気ないでしょ 丸めてポイする一口サイズ」は、愚痴を一から十まで全部込めたエピソードトークとして話すことはできず、すぐ聞けるくらいの小さい量にまとめて話すものだ、みたいなことかもしれません。
さらに別の曲についても言及させてください。「Squeeze」の序盤です。
「豆腐の上添えてるジンジャー」の読解は非常に難しいですが、私がイメージしたのは、ピーナッツくんが深夜、「熱さまシート」のような冷たい刺激物を頭に貼ってデスクで作業している状況です。ときどきそういうことする人っていると思うんですよ。ピーナッツくんが実際やっているかは不明ですが。
豆腐って大豆加工食品ですよね。つまり豆の仲間ではあるんですよ。
ジンジャー(=ショウガ)って香辛料ですし、結構な刺激物じゃないですか。
ピーナッツくん(豆)が頭の上に冷たいシートを貼って深夜作業している様子を、「豆腐の上添えてるジンジャー」と表現しているとすれば、結構おもしろいなと思います。
迷走解釈かもしれませんが、ここにひとつ残させてください。
トピック:『ファイト・クラブ』について
※この節は映画『ファイト・クラブ』のネタバレを含みます。
『ファイト・クラブ』(1999)はデヴィッド・フィンチャー監督のアメリカ映画です。ピーナッツくんが一番好きな映画として度々その名前を挙げています。
「Liminal Shit」のサビの最後に次の歌詞があります。
脆いガラスのハートと簡単には傷つかない鉄のハートの両面を持っているという表現かなと思っています。
この「mind」と「場所はどこ?」から連想するのが、Pixies「Where Is My Mind?」(1988)です。これは『ファイト・クラブ』の主題歌で、極めて印象的なエンディングシーンで流れるどうしても記憶に残る楽曲です。
ピーナッツくんが「mind」と「場所はどこ?」と歌うのなら、「Where Is My Mind?」は意識してるんじゃないのかなと思います。こういうの気づけるとちょっと嬉しいですね。
もう一つ、「Wha u takin bout」に次の歌詞があります。
ネタバレで申し訳ないのですが、『ファイト・クラブ』のラストシーンで、主人公が自分のこめかみに当てた拳銃のトリガーを引くシーンがあります。
今作でピーナッツくんは物語の終わりについて示唆する歌詞をいくつか歌っていますが、「Wha u takin bout」では「まだ引けないよトリガー」、つまり、まだ終わらせるわけにはいかないと歌っているのではないでしょうか。
06. ぼくたちにEarthはない
これはぽこピーがahamoとタイアップした際にWebCMで使用された楽曲です。
WebCMは2本あります。
釣部東京のnabekatsuさんが作った動画がめっちゃいいです!
楽曲の理解を深めるため、インタビューを見てみましょう。
地球での思い出を振り返る楽曲なわけですね。
YouTube上での相方「ぽんぽこ」との思い出も数多く歌われるので、その点でもこの曲は少しほっこりします。
作曲担当のnerdwitchkomugichanからのコメントもあります。
こういう影響を受けた作品みたいなものを示唆してくれるのはすごくありがたいです。
歌詞感想
この曲を聴くと「ぽんぽこちゃんねる」で見てきたぽこピーの海外旅行の思い出がたくさん蘇ってきます。
ぽんぽことピーナッツくん、2匹の思い出が詰まった歌という感じがしてほっこりします。
「ぼくらにEarthはない Let's do or die」という歌詞からは、「やるか死ぬかだ。ぼくらに明日はない」という気迫が伝わってきます。つまり、一度職業YouTuberとして波に乗ってしまった以上、生き残るためにはこれからも制作を続けるしかないという気迫です。
タイトル感想
「ぼくたちにEarthはない」というタイトルは、「ぼくたちに明日はない」とかけた言葉遊びのようにも思われます。「地球を立ち去る際に地球での思い出を振り返る」という楽曲のテーマと、「手を動かさないと明日から生き残れない」という緊迫感の両方を表現した、素敵なタイトルですね。
また、「ぼくたちにEarthはない」というタイトルは『俺たちに明日はない』(1967)という映画タイトルのオマージュのようにも思われます。
これは映画史に残る名作だそうです。
ボニーとクライドは強盗や殺人を行った犯罪者2人組ですが、当時新聞などで英雄視されることも多く、後に様々な映画や舞台、小説などに影響を与えた人物だそうです。
ぽんぽこもピーナッツくんも映画好きの2匹なので、タイトルオマージュしている可能性はありそうです。単にタイトルだけを拝借したのか、映画の内容を踏まえてのオマージュかは気になるところです。
というのも、この映画は実在した銀行強盗の男女ペア、ボニーとクライドの出会いと逃走を描いた犯罪映画なわけです。もし世界各国でVLOGを撮っている自分たち「ぽこピー」のコンビを、アメリカ中を騒がせた凶悪犯罪者コンビ「ボニーとクライド」になぞらえているんだとすれば、ちょっとやりすぎじゃないでしょうか!? こっちが照れ臭いくらいです。
曲調が穏やかなので、アルバム全体の中でも癒しパートのひとつですね。
いい曲だなと思います。
07. Hanged Man (feat. レオタードブタとヤギ・ハイレグ)
まずは、お祝いしましょう。
ついに、レオタードブタがピーナッツくんのアルバムに帰ってきました!(1stアルバム「False Memory Syndrome」以来)
ついに、ピーナッツくんとレオタードブタが共演しました!(レオタードブタ「CHERRY PICK (feat. ぽんぽこ, KMNZ / ピーナッツくん)」以来)
ついに、ヤギ・ハイレグがピーナッツくんの楽曲に客演で参加しました! ビートやRemixの提供はずっと続いていましたが、作詞・歌唱での参加は初だと思われます。
ついに、nerdwicthkomugichanのビートでヤギ・ハイレグがラップしました!(ヤギ・ハイレグはいつも自分でビートを作るため、こんなことは初めてです)。
この曲の感想は、「とにかくビートがかっこいい」。個人的にはそれが一番です。あとヤギ・ハイレグのフロウがめちゃくちゃかっこいい。これです。
ヤギ・ハイレグ感想
Phonk(フォンク)と呼ばれる不穏で激しいビートの上で、急き立てるような攻撃的なフロウをかましています。しかしその印象とは裏腹にそれほど攻撃的なことを言っておらず、どこか肩透かしを食らいそうなほどマイペースで、希望さえ歌っているようなリリックだと思います。そこにヤギ・ハイレグらしさを感じてニヤリとしたくなります。
「誰の為もなく風切りたいよ」から始まるここのフロウがめちゃくちゃかっこいいです。音をはっきり発音しないような、投げやりさを感じさせるような乱雑で曖昧なフロウで、唾を吐きかけるような攻撃的な雰囲気も感じさせます。
(こうやってどんどん新しいラップ表現を披露し続けるヤギ・ハイレグ、追っていておもしろすぎますね)。
「誰の為もなく風切りたいよ」については、「マイペースにやらせてくれ」という願いを感じさせますが、そこで歌われているのはまったく耳慣れない欲求で掴みどころがありません。
「とりあえずお前すぐ髪切りなよ」なんて、ラップにしてはほとんど攻撃力のないちょっとした軽口みたいな感じで、親密ささえ感じさせます。
ヤギ・ハイレグは少し俯きがちなリリックも多いイメージですが、今作では「My soul いずれ光を失っても この祈りは不滅」という風に希望を歌っています。また、「暗い森を抜けた先がたとえ地獄でも 生まれながら悪魔なら高笑い aye」と誇ってみせています。悪魔の象徴とされるヤギだから、(不安さを象徴する)「暗い森」を抜けた先がたとえ「地獄」でも、そこはむしろ自分の本領だろ?というわけですね。
「The Hanged Man」というのはタロットの大アルカナに属するカードの一枚で、「吊られた男」や「死刑囚」を意味するそうです。
吊るされて、これから処刑されそうになっているような状況においてもなお高笑いしているヤギ・ハイレグの不敵な笑みが想像されますね。
「正位置」や「逆位置」が重要な意味をもつタロットにおいて初めから逆さ向きをしている「The Hanged Man」は、その存在自体がそもそも皮肉めいているように思われます。
これまでの楽曲では基本的に後ろ向きな雰囲気のあったヤギ・ハイレグが、今回極めて不穏なビートの上であえて前向きな希望を歌ってみせるのは、二重三重に皮肉めいているような気がして、タロットにおける「The Hanged Man」のイメージと重なるかもしれません。
レオタードブタ、ピーナッツくん感想
この「Hocus pocus」や「スーパーカリフラジリスティックエクスピアリドーシャス」は、魔法を唱える際に唱えるおまじないの一種だそうです。
『おジャ魔女ドレミ』は1999年から放送されていたテレビアニメで、作中や主題歌で登場する「ピリカピリララ」というおまじないが有名です。
ピーナッツくんの「Gordon Kill the Thomas」(2023)という歌でも『おジャ魔女ドレミ』に関連した歌詞が登場していました。
このようにレオタードブタとピーナッツくんは「Hanged Man」でおまじないを連発しています。怪しげなビートは黒魔術っぽい雰囲気を想起させますが、彼らはどこか可愛げある「おまじない」の雰囲気を伴っていてそのスカした具合がおもしろいです。
「Tryna be goat」は直訳すれば「ヤギになろうとしている」で、もしピーナッツくんがヤギになろうとしているのならめちゃくちゃ可笑しいです。
しかし、"GOAT"は"Greatest Of All Aime"(=史上最高の)を意味するスラングらしいです。よって、ここでは「車で音楽かけて史上最高にhighな気分になりたいぜ」みたいなことが歌われているんだと思います。
そして、隠された言葉遊びとして、goatとhighで「ヤギハイ」と言いたいんじゃないでしょうか。こういうのを発見するのは楽しいことですね。
「暗い街から飛ばす 7番 アイアン」について言えば、この曲がアルバムの中で7番目に位置することを考慮してみるのもおもしろそうです。
「暗い街から飛ばす 7番 アイアン」は、13曲ある楽曲の中でもっともダークなこの楽曲(Hanged Man)から一番の飛距離ぶっ放してやるぜ、みたいな宣言をしているのかもしれません。
ヤギハイさん、楽曲参加本当にありがとう…!!!!
08. Dance for What?
自分、この歌が大好きです…!! 感動して泣きそうになります。
とにかく伴奏や歌声がよくて、音楽全体が好きですね…!
ピーナッツくんがトラックを制作してるのも最高です。こんなあまりに素敵なトラックを聴かせてくれるというのが嬉しくてたまらないです。
「Dance for What?」はピーナッツくんと玉田デニーロさんとの共同作曲という話で、打楽器は玉田デニーロさん自ら演奏されたそうです。そういう音を耳で拾うのもまた楽しいことです。確かにいろんな音が鳴ってますね。
歌詞感想
曲全体のイメージを語らせてもらうと、生活の中でふと「何のためにこんなにがんばっているんだろう」という思考に囚われてしまった瞬間が歌われているような印象です。
サビを自分なりに翻訳してみます。
サビの解釈を試みてみます。
「I makin tide and Floatin'」 (ぼくは潮を作って浮いている)
自分で制作したトラックに身を任せ浮かんでいるイメージ。
「Don't need a 買い物 Gold Chain」(金のネックレスの買い物なんて必要ない)
お金持ちになって豪遊したいわけじゃない。
「あてもないこの冒険」
この活動には長期的な計画や最終的な目的地、終着点があるわけでもない。
「But 覚めない夢」
いつ終わってもおかしくないと思っていたけど、意外にも長続きしている。
こんなにうまく波に乗れているのはいっときの夢かと思っていたけど、その夢がなかなか覚めないまま続いている。
「I really dance for what?」(ぼくはいったい何のために踊るんだろう?)
じゃあ、ぼくはいったい何のためにこんなにがんばっているんだろう? 確かに楽しくはあるんだけど。
みたいなことですかね。
なんだか切ないですね。(そう、この曲は切ないんですよ!)
その他の歌詞を見ていきたいと思います。
まずは1番のverseです。
解釈しようとしてみます。
「マテリアル(material)」は「物質(的)」みたいな意味だと思います。
「量子力学」は物理学の一分野でミクロの世界の事柄を取り扱う分野のはずです。
そう言えば、ピーナッツくんは以前も量子力学について歌っていたことがありました。
「シュレディンガーの猫」というのがオーストリアの物理学者エルヴィン・シュレーディンガーが発表したとされる量子力学に関する思考実験で、結構ネットでも人気のやつです。雑なまとめ方で申し訳ないですが、毒ガス装置のついた箱の中に猫がおり、箱の中にいる猫は箱を開けるまで「生きている状態」と「死んでいる状態」の両方が重なり合った状態でいると言わなければならない、みたいな少し不思議な話だったはずです。量子力学では「重ね合わせ」というのがキーワードのひとつらしいです。
たぶんこの箇所はすごくおもしろい連想ゲームをしていて、「TwinTurbo」→「(2対の渦巻きから)遺伝子の二重螺旋構造」→「(遺伝子のリレーから)生と死の繰り返し」→「(生と死というテーマから)シュレディンガーの猫」→「(猫から)DISH//の北村匠海」という連想だと思います。おもしろい歌詞ですよね。
話が逸れました。
ユビキタスは遍在(いつでもどこでも存在する)を意味する言葉です。
「伏見ガク」はVTuberプロダクション「にじさんじ」2期生のVTuberです。「ピーッス!」みたいな挨拶をする人で、「ピースと言えば伏見ガク」「伏見ガクと言えばピース」みたいなイメージが定着しています。
こうした情報を踏まえ、一応次のように解釈しています。
⇒この世界は物質的だけど、ぼくのこの体は物理学的に言えばどういう存在になるんだろうか。
着ぐるみ着てるときは圧倒的な存在感と暑さで嫌なほど物質的な存在だけど、ネットにいるVTuberという意味ではこの世界のどこにでも遍在できる存在とも言えるかもしれない。ピーナッツくんという存在は「局在的であること」と「遍在的であること」(=ユビキタス)が重なり合った存在であると言えるかもしれない。
ユビキタス…指…ピース…そう言えば「ユビキタス」と「伏見ガク」で固い韻(u,i,i,a,u)が踏めるな…。
こんな感じでしょうか。ちょっと勝手な解釈の混入が目立ちますが、ご容赦ください。
次に2番のverseを見ていきます。
ここはオシャレなんですよ。というのも、1番で物理学の話をした後に、2番で「形がないものに触れる瞬間 ぼくは君のこと思い出します」っていう、物理的でない、おそらく記憶や感情の話をしているんです。こういう対比はかっこいいですね。
「履きなれたシューズを履く」は「いつもの生活」を想像させます。
「音の隙間から風が吹いてる」について考えたのは、「休符」のように音が途切れる瞬間、ふと風が吹いてきてハッとさせられるみたいなことです。外で楽器でも演奏していて、楽譜に従って音を出し続けていたところ、人為的に生んだ音が途切れた瞬間に自然の「風」が自分たちに吹き付けてくるようなイメージを抱きました。これは、日々生活を営む中でふと「ぼくはいったい何のために踊っているんだろう?」と考えてしまう、というサビのイメージとリンクします。
「風」は形がない割に肌に触れてくるし、温度もあるし、匂いもあったりします。そうした形がないものに触れる瞬間、ピーナッツくんには何か呼び起こされる思い出があるのかもしれません。具体的にはわかりませんが。
「揺れるBPM 140」「刻むBPM140」っていうところは、最高ですよね!!!!
「あてもないこの冒険」「運命はいつだって数奇」は活動の先行きが不確定である様子を表現しています。
「寝てりゃすぐTime is going 油断できないこの時」は時間が過ぎ去ることの早さを歌っています。
この「先行きが不確定であること」と「時間が過ぎ去るのが早い」というふたつのことは、4thアルバムで繰り返し表現されていることです。
トピック:ピーナッツくんは「物語のオチ」を探している?
歌詞にある「物語のオチを探す」という表現は見逃せません。
ピーナッツくんは彼が主人公であるところの物語をいったいどういうやり方で終わらせることになるのでしょうか。どうせいつか終わるとして、何かいい終わり方を模索したいというのは、作品に対する愛情あってこそのものです。
ピーナッツくんは「アニメの主人公である」と同時に、もはや「現実を生きる存在」でもあります。アニメは純粋な創作物かもしれませんが、人生は完全に創作物というわけではありません。アニメは作者が思い通りにコントロールできる部分も多いだろうと思われますが、人生にはアニメ以上にコントロールできない部分がたくさんあります。
もはやアニメの世界を半分以上飛び出した状況にいるピーナッツくんという存在が、何かよいストーリーを歩んでいこうとした場合、様々な壁にぶつかることがあるのかもしれません。もしかしたら4thアルバムではそうした壁にぶつかっている苦労を少し教えてくれているのかもしれません。
09. GRWM freestyle
「GRWM」とは"Get Ready With Me"の略で、「私と一緒にお出掛けの準備をしよう」という意味だそうです。出掛ける前の準備の様子を動画にしているものを指し、YouTubeの中でも人気のジャンルらしいです。
生活の各場面を順番に淡々と語っていくような曲でおもしろいですよね。
普通のラップとも違うし、ポエトリーリーディングとも違う、ギターの弾き語りみたいなしっとりした雰囲気を感じます。
アルバム全曲の中でも一番落ち着いた曲ですよね。
13曲のうち8曲目ですが、ここで「第1章終わり」くらいの印象があります。
そして次の曲から第2章の幕開けみたいな印象です。
10. Birthday Party (feat.月ノ美兎)
ついに「feat. 月ノ美兎」来ましたね!!!!
にじさんじ1期生であり、にじさんじの顔とも言えるVTuberです。何なら現在「VTuber」全体で見たときの代表格であってほしいとさえ思います。うまく言えませんが、月ノ美兎ってどこか「特別」なんですよね…。私も彼女のことをそこまで熱量もって追えているわけではありませんが、それでもやっぱり特別視しちゃうところがあります。
月ノ美兎
にじさんじ1期生として2018年2月(ぽんぽこと同時期)にデビューした古参VTuberで、現在では動画投稿と生配信の両方の活動をしています。
1stオリジナルアルバム『月の兎はヴァーチュアルの夢をみる』(2021/08/11)をリリースしており、VTuber界隈を超えてインターネットの音楽好きたちからやけに絶賛されていた記憶があります。
歌が上手ですね。
制作陣が豪華なので、一度目を通してもらえると知っている名前が出てくるかもしれません。
アルバムからだと自分は「ウラノミト」(作詞:只野菜摘 作曲・編曲:広川恵一(MONACA))と「浮遊感UFO」(作詞:大槻ケンヂ 作曲・編曲:NARASAKI)が特に好きです! どっちも感動します。
月ノ美兎について語りすぎました。楽曲感想に入りましょう。
音楽ジャンルについて
音楽的な構成としては、基本的に「リキッドドラムンベース (Liquid Drum and bass)」と呼ばれる音楽になるそうです。軽快で疾走感あるドラムとベースみたいなやつです。
しかし、サビの「Birthday Party It's a surprising~」の箇所は、「ジャージークラブ(Jersey club)」と呼ばれる音楽に切り替わるようです。これは1小節に「ドンドン ドッドッドッ」と5回キックが打たれるリズムパターンが特徴の音楽です。あとベッドのバネが軋む「キコキコ」した音「ベッドスクイーク」(Bed Squeak)も一応特徴のひとつとして見られるようです。
ジャージークラブって世界的にすごく流行っているらしいです。
ジャージークラブの特徴である5回キックやベッドスクイークは、Creepy Nuts「Bling-Bang-Bang-Born」やぽんぽこ「Bokeh」でも用いられているのでぜひ耳で拾ってみてください!
あと、ジャージークラブについていろいろ調べていたら、TAPPの「Dikkontrol」という曲が例の5回キックサンプルの源流(?)としてしばしば紹介されるのを見ました。この「Dikkontrol」が収録されているレコードが『It's Your Birthday EP』(1993)というタイトルらしいのですが、ピーナッツくんの「Birthday Party」のサビがジャージークラブであることと何か関係があるんでしょうか? 偶然なのか、それともnerdwicthkomugichanの知識の深さがなせるクールな仕事なのでしょうか。
(そう言えば『Squeeze』でもmoney time に加えてdickをコントロールしていた気もしますが、あんまり関係ないですね。すみません)
ファンアート
この曲は絵を描く人々にインスピレーションを強く与えるところがあるのか、リリースから1週間の間だけでも「Birthday Party」に関する月ノ美兎とピーナッツくんのファンアートが非常にたくさん見られます。
Xで「#みとあーと #オシャレになりたいピーナッツくん」という2連ハッシュタグで検索してみると、「Birthday Party」に関する素敵なイラストをたくさん見つけることができると思います。もしご興味あればぜひ。
歌詞解釈
歌詞について、みなさんはどう思いますか?
私は例えば以下のような解釈を見かけました。
「Vtuberの生と死」について語っている曲である。
Vの転生の曲だ。
歌詞を読んでみると、確かにそういった解釈にはしっくりくるものがあります。
勝手に紹介させてもらって恐縮なのですが、次の記事がすごくおもしろかったです。「Birthday Party」について解説・考察されています。自分はすごく納得できる箇所が多かったなと思います。
私にも言えそうなことがあるかもしれないので、少し語ります。
考察「君にはこの日が命日」→ご主人様説
「7月2日のベイビー」が意味するのは、ピーナッツくんだと思います。7月2日はピーナッツくんの誕生日だからです。
「君にはこの日が命日」における「君」が指すのは、ピーナッツくんのご主人様(=兄ぽこ)のことかなと思っています。
ただ「ピーナッツくんの誕生日」が「ご主人様の命日」だとすれば、ご主人様は2017年7月2日に死亡したと言うことになるのでしょうか。いいえ、実際には生きているので、「命日」は比喩的な意味で読むことになります。
私の解釈だと、「ご主人様」の名前(実名)で活動することをやめ、完全に「ピーナッツくん」として活動し始めたことで、「ご主人様」が有名になったり歴史に名を残したりする可能性を自分の中で絶ったのかもしれないな、と考えています。(ただこの考えを根拠づけてくれるような過去の発言などを知っているわけではありません)。これを「7月2日のベイビー 君にはこの日が命日」という歌詞で表現しているのではないか、というのが私の解釈になります。
ピーナッツくんが誕生したことで、「ご主人様が死亡してピーナッツくんの生命活動が開始した」のではなく、「ご主人様とピーナッツくんのふたりの生活が始まった」と捉えています。しかし、あくまで主人公はピーナッツくんであり、ご主人様は裏方に徹しているのがポイントです。
ここで、過去の歌を参考にしてみましょう。
ここでは「1900何年」をご主人様の誕生日と捉え、「2000何年」をピーナッツくんの誕生日と捉えてみたいと思います。
そうすると、この歌詞は「1900何年~2000何年」におけるご主人様の記憶と体を「偽り」のものとして否定し、ピーナッツくんが誕生してからのことを「今のこのときからが始動」「すべての自由を手にしたぼくらの my life」として肯定的に歌っていると読めそうです。
さらに、「Dreamworks」も参照させてください。
参照したいのは2:41からの箇所になります。URLで開始位置を指定しているので、以下再生してもらえればちょうど該当箇所が流れます。
私には、まずご主人様がひとりで歌って、次にピーナッツくんとご主人様がふたりで歌っているように聞こえます。ただし、二度目はあくまでご主人様がピーナッツくんの後ろに控えるような仕方で歌っている、というのがポイントです。
「Dreamworks」のこの歌声の重ね合わせが「初めに、ご主人様があった。次に、ピーナッツくんとご主人様があった」という「Peanuts in Wonderland」に対する私の解釈とリンクするんですよね。
「Peanuts in Wonderland」と「Dreamworks」に関するこうした解釈を「Birthday party」にも持ち込み、整合性を取ろうとした結果、「7月2日のベイビー 君にはこの日が命日」を上述のように解釈することになりました。
次のインタビュー記事も参照させてください。
ご主人様のキャリアが開始した日とピーナッツくんの誕生日は一致していると考えてもよさそうです。
最近では、「ピーナッツくんのアニメ」が更新されなくなったことで、ご主人様とピーナッツくんの経験が一致することはかなり増えてきた可能性があるのではないかと考えます。
特に好きなところ
イントロの「nerdwitch」「ピーナッツくん」『フォン!?』「月ノ美兎__」っていうところ、マジで最高ですよね!!!!
序盤、ピーナッツくんが登場する「四方八方囲まれてるスリザリオ」っていうところ、非常にかっこいいと思います。月ノ美兎が歌った後に、ピーナッツくんがラッパーとして登場する感じが非常に熱いです。
終盤、月ノ美兎の「拍手が鳴り止むまで踊ろう ~ I'll try to hold you like a spider」の箇所、本当に最高ですよね!!!!
綺麗だし、可愛いし、儚いし、妖艶ですよね。
特に最後、月ノ美兎が「I'll try to hold you like a spider__」って艶めかしく覆い被さって来るところ!! そしてそこに差し込むようにふたりで「Birthday Party♪♪♪ It's a surprising♪♪♪」って踊り出すところ!! 本当に素晴らしいと思います。
「I'll try to hold you like a spider」ですが、みなさんはどういうニュアンスで受け取りましたか? 私は「蜘蛛みたいに君を抱きしめちゃおっかな」です。
最後の「spider__」とか本当に鳥肌もので、イヤホンで聴くとASMRのような良さがありました。これはガチ天下取れる。
大傑作ですね。
本当に夢のコラボだと思います。
みんなで愛していきたいです、この作品。(熱くなっちゃいました)。
11. Wha u takin bout (feat. lilbesh ramko & hirihiri)
嬉しいことに、ピーナッツくんのアルバムにlilbesh ramko(リルベッシュ ラムコ)とhirihiri(ヒリヒリ)が参加してくれました!!
hirihiriさんのわかりやすいプロフィールがあったので引用させてもらいます。
hirihiriさんはPAS TASTA(パスタスタ)のメンバーで、一度ピーナッツくんと曲を作ったことがありました。
2人とも「hyperpop」という音楽ムーブメントの中に位置づけられることも多く、「音割れ」したサウンドを用いることで知られています。
今作でも彼らのそうした持ち味が遺憾なく発揮されていますね!
感想
めっちゃいい曲ですね。
特にイントロが好きです。透明感あるサウンドが美しいと思います。
イントロの後「wha, wha, wha u talkin bout」という声が入りますが、ピーナッツくんの癖のある歌声とオートチューンが非常によくマッチしていると思います。
ピーナッツくんの歌声、音割れしたサウンドと相性がいいですよね。
曲全体としては本当に感動的な音の響きだなと思います。好きです。
歌詞感想
趣味なので、一応歌詞解釈もさせてもらいます。
全体的な印象としては、「散らかった部屋に閉じこもり、ゲーム(or仕事)に取り組んでいる」という状況が歌われているのかなと思っています。
部屋に閉じ籠っている点で、「KidsRoomMan」の世界観を思い出しました。
「Wha u talkin bout」は"What are you talking about?"の省略表現かなと思います。
"What are you talking about?"は固い直訳をすれば「あなたは何について話していますか?」とかになります。しかし、調べてみたところ、どうやら「何言ってんの?(半ギレ)」みたいな使われ方もするようです。
けど別に他の歌詞からはあまり怒りが伝わってこないので、どうして「Wha u talkin bout」なのか、私にはまだよくわかりません。
ここでも「時間が過ぎ去るのが早い」ということが歌われていますね。
ちなみに「刹那の見斬り」(「見切り」は誤字らしい)はゲーム『星のカービィ』シリーズに出てくるサブゲームで、ピーナッツくんとぽんぽこが配信で遊んでいたこともあります。罰ゲームを賭けた勝負で、かなりおもしろかったです。
「刹那の見切り」「コントローラー」「Now loading」「ニフラム」(=ドラクエシリーズに登場する呪文)など、ゲーム関連用語がいくつか出ますね。
やはり部屋に閉じこもってやっていることは、ゲームなんでしょうか。他の曲だと仕事の話が多いですが、ここだけ遊んでいるんですかね。
ピーナッツくんと言えば「FIFA」というサッカーゲームが大好きで、今でもよく遊んでいるようです。
「GRWM freestyle」でも名前が出ていました。
次の箇所はおもしろいです。
ピーナッツくんがcartoon(カートゥーン)調のアニメキャラクターであることを、KAT-TUN(カトゥーン)のデビュー曲「Real Face」(2006)の歌詞「ギリギリでいつも生きていたいから」にかけているんだと思います。
めちゃくちゃ流行った曲ですよね。ピーナッツくんにとっても思い出深い曲なのかもしれません。
「モリゾーとキッコロ」に続いて、こうした平成ネタが入るのはおもしろいです。
終盤の歌詞は印象に残ります。
「昔から変われないまま」については、幼い頃と変わらず子ども部屋でゲームをし続けている現状について少し苦々しい思いをしているのかなと思います。
「私の思い出さよなら」については、自分は変われないままだけど、「周囲の人々は人生のステージが先に進んでるな」とか、「周囲の人々との関係性は変わってしまったな(子どもの頃のようには一緒に遊べない)」などのことが歌われているのかなと考えました。
早くライブで聴きたいですね。ライブハウスの中で大きなスピーカーで聴くのがかなりいいと思うので。
今後PAS TASTAが出る現場でこの曲が流れる可能性はすごく高いと思うので、機会さえあれば行きたいです。
12. Bloody Mosquito
この曲めっちゃ大好きです!!!
歌詞は熱いしメロディは楽しいし、最高です!!
特に好きなところ
↑サビめっちゃ好きです。
聴いてるだけで楽しいです。
一緒に歌うのも楽しいです。
↑〔〕で補った「集ってんのわかってるよ」と「願ってんのわかってるよ」がめっちゃ楽しくて好きです!
↑ここも好きです。
ファーストキスのインパクトを上書きするくらいのverseを蹴るぞっていう宣言がまず気持ちいいです。そのためにピーナッツくんが夜な夜な歌詞を書いたりラップを録音したりしている状況も想像すると胸が熱くなります。
↑ドロップもめちゃくちゃ好きです。単純にめちゃくちゃ乗れるから楽しいです。
「君はどう思う?〔…〕ぼくはどうも賛否両論らしい」って何かと気にかけた直後、「まぁいいや」→「ドゥン♪ドゥン♪ドゥン♪ドゥン♪」って踊り出しちゃうのは本当におもしろいと思います。気がかりなこと全部ぶっ飛ばしてただ踊り狂ってる感じがして痛快です。
参考資料「ぼくらを殺してくれ!」
「Bloody Mosquito」には「ぼくらいつか殺されるまでずっと」などの物騒な歌詞が出てきます。そうした歌詞を読み解くにあたって、次の動画でのピーナッツくんの発言が参考になると思っています。
衛星ライト「ぽこピーと話したらヤバイことを言い始めました…【トライアンブリと】」(2022/10/12)
ぽこピーが「トライアンブリ」(=個人勢VTuberのレオン・ゼロミヤ、三珠さくまる、衛星ライトの3人組)の企画にゲストとして呼ばれた回です。
後輩VTuber3人から「これからどうやっていけばいいと思いますか?先輩として一言お願いします!」とアドバイスを求められた際のピーナッツくんの回答がこちら。
ピーナッツくんによると、トライアンブリの3人はまだ理性が残っていると。貯金使い果たして、なりふり構わず、もっと欲にまみれて、金のためにやる。数字の悪魔になれ。
そういったメッセージを飛ばしていました。
さらに、次のような興味深いやり取りもありました。
一度ブレイクすると、その瞬間から「忘れ去られるの怖いな」という気持ちが強く生じてきて、VTuberとして止まることなく走り続けるしかなくなる心境があるようです。
VTuberが「すぐ忘れ去られる」ことに怯えるのは割と耳にしますね。リスナーが想像する以上に、VTuber側からするとそれはリアリティある感情なのかもしれません。
そして、最終的にピーナッツくんは突然次のように叫び始めます。
ピーナッツくんの発言を受けて、ぽんぽこもこの話に同調してみせます。
実際にすぐやめることはなさそうな気がしますが、そういう感情を抱くことはあるようです。
そして、「ぼくらを殺してくれ!」の真意をピーナッツくんは次のように説明します。
つまり、他のVTuberたちに対して、リスペクトしてくれるのはありがたいけど、ぽこピーとは全然違うタイプのおもしろさで勝負して、こっちを食い殺すぐらいの勢いでぶつかってきてほしいということかと思います。そういう激しいタイプの激励の言葉ですね。
これはピーナッツくん自身が活動初期のころから企業勢Vtuberたちに対する羨ましさと敵意をむき出しにしていたことを思えば、理解しやすい気もします。ピーナッツくんは「にじさんじじゃねえか!!」と言って企業勢に噛みついていた時期もありました。周りのやつらを全員倒すくらいのアグレッシブな感情で活動していたのかもしれません。
さて、文脈作りはさせていただいたので、歌詞解釈に入ります。
歌詞解釈
この曲はまず「Let's do it! (やるぜ!)」っていう、とにかく手を動かすための号令から始まります。
ピーナッツくんには、ぬるいテンションじゃなくて、死に物狂いでぶつかっていくような真っ赤な血のvibesが流れているんですね。そんなvibesを求めて周囲の人々がピーナッツくんに群がっているわけです。新鮮な血を求めるmosquito(蚊)のように。
ライブステージで血を求める観客たちがピーナッツくんに群がり、もみくちゃになっているような熱狂が想像されます。
「赤い血 巡らす脳みそ ぼくらいつか殺されるまでずっと」は、いつか殺されてしまうその日が来るまで、頭ひねって本気で活動し続けてやるよっていう気概の表明だと思います。めちゃ痛快です。
「てかマジで興味ないそのランキング 君がどう思うかの話」は、例えば「VTuberのMV再生回数1,000万回達成までの日数ランキング」などはマジで興味がなくて、とにかく「ぼくの音楽を君個人がどう思ったか。それだけが大事なことだから。一対一で本気でぶつかり合おうぜ」みたいなことだと思っています。
「またくくる腹自ら」は、例えば一度大きな収入を得てもあまり貯蓄したりせず、とにかく次の活動のために資金を投じ続けて後に引けない状況を作ったりしているのかもしれません。ぽこピーには少しそういうイメージがあります。
「いま ゲシュタルト崩壊」は、無我夢中で取り組みすぎてて、もはや認識できる「意味」が崩壊し始めているような混乱具合の表現とかでしょうか。
「札束振り込む 親の口座に」はいかにもラッパーらしい典型的なフレックスですが、それだけ大儲けしてるということなんでしょうか。
「DOGSO(ドグソ)」というのはサッカー用語で反則の一種です。
相手チームに得点されそうなときに、得点機会を阻止するためだけに露骨なファウルプレイをするような行為が「DOGSO」と判定されるようです。(間違っていたらすみません。一応自分はそういう風に理解しました)。
「スライディングよりくらわすタイキック DOGSOで去るみんな口あんぐり」というのは、私の解釈だと、例えばスライディングどころかもはやタイキックみたいなレベルの露骨なバイオレンスを働き、レッドカードで即退場して、敵も味方も唖然としている、みたいなことだと思います。これが意味するのは、例えばひとつには、熱くなりすぎて「SuperChat」にも勝るようなあまりに鋭利な攻撃的楽曲をリリースして、各方面から非難を浴びて業界を退場する、みたいな未来ではないでしょうか。
そして「てかどうってことはないその大金 ぼくがどう思うかが大事」というのは、それで今の立場を失脚して大金の獲得機会を失ったとしても、自分が納得できるかどうかだけが大事、というわけです。
実際にそんな爆発的な破滅の仕方をするかはわかりませんが、それくらいの真剣さと熱気の高まりを歌っているんだと捉えています。
ここは第一には着ぐるみでのライブを歌っているように思われます。
酸素が足りていないし、死ぬんじゃないかと思うほど暑い中で動き回っているわけです。思春期のような若々しいパワーを絞り出して歌い踊り、喉を傷めるほど身を削ってライブしているのかもしれません。
第二の解釈は、「Drippin' Life」的な初心への回帰を求める解釈です。
つまり、「ぼくに足りないのは死を間近に感じるほどの鬼気迫る空気!」という解釈です。
ここでも「Drippin' Life」の「おもしろくて急死」という理想は生き続けているのかもしれません。すなわち、ぼくらは「いつか殺されるまでずっと」本気で活動し続けたい、あるいは「この命が尽きるときまでずっと」おもしろい存在のままでいたいという想いがあるのかもしれません。
「ぶつけるリリック書いてるぜ 夜中 また始まりはいつだってここから」については、やはりステージで観客たちとぶつかり合う日を作るためには、ひとり深夜に黙々とリリックを書くところから始めるしかない、という「Just do it!」な話だと思います。
この締め方マジでかっこいいと思います。
評価「殺される気がなさすぎる」
ピーナッツくんは個人VTuberの後輩に対して「ぼくらを殺してくれ!」と激励していたし、「ぼくらいつか殺されるまでずっと」と終わりのときを見据えてもいるようです。
しかし、今回のアルバムを見てわかるように、ピーナッツくんはまったくもって停滞する気がありません。特に本アルバムでピーナッツくんが作曲した楽曲を初めて披露したのは本当に衝撃的でした。それも2本(「Liminal Shit」,「Dance for What?」)。
ただでさえ毎日のように動画撮影、サムネイル制作、作詞、音楽収録、そしてイベントの打合せや設営などをやっているだろう中で、いつの間に作曲の技術を新たに身に着けていたんでしょうか…!?
正直、殺される気がなさすぎるでしょう。
努力し続ける先輩を後輩が追い越すのは容易ではありません。
身勝手で申し訳ないですが、これからもそうあってほしいと願わずにはいられません。
本当にピーナッツくんの生き様からは生きる勇気を貰えます。
この曲からはだいぶいい血が吸えた気がします。
13. Dreamworks
作曲はゆるふわギャングのプロデューサー・トラックメーカーのAutomaticです。
Automaticさんは過去に一度インタビューでピーナッツくんの名前を挙げてくれていました。
「Dreamworks」はアルバムの最後に相応しい落ち着いた音楽ですね。
「Dreamworks」というタイトル
「Dreamwoks」というタイトルの解釈は二通りあります。
ひとつは、みんなが夢を見ている時間帯に、自分は夢うつつになりながらも深夜まで作業しているという状況を表現しているというものです。
もうひとつは、クリエイターとして食っていくという仕事が実現していることを「夢のような仕事」という意味で「Dreamworks」と表現しているというものです。(後者の解釈はぽこピーファンの人から教えてもらって、すごくいいなと思った解釈です)。
両方の解釈を保持しておこうかなと思っています。
歌詞解釈①
全体的な感想としては、本アルバムで最も強調されてきたメッセージ、すなわち「深夜にがんばってリリック書いてる」ということを真正面から歌った曲だと思っています。
「まだ働く 今夜 フレックスタイム制の坊や」「ぼくにはないよ休日」あたりの歌詞は、Squeezeで歌われていたのと同じことだと思います。つまり、個人事業主だから定時も休日もなくて、深夜まで作業しているということです。
「全部全部Easy 貼った湿布と意地」は、これから作業するぞってときに「こんなの簡単簡単!」って意地で言い聞かせてデスクに向かっているようなイメージです。湿布はもしかすると額に貼っているか、マウスを扱う右手首などに貼っているのかもしれません。あるいは腰。
「みんな乗ってこいゴンドラ 次はどこ向かう方角」については、Squeezeの歌詞を参照しましょう。Squeezeでは「先行き不確定のゴンドラ」と歌われていました。Dreamworksではやはり先行き不確定なようですが、それでも「みんな乗ってこいゴンドラ」と誘ってくれています。喜んで乗りますね。
毎日予定が詰まっており、動画撮影やサムネイル制作に勤しんでいる様子が伝わってきます。背中を預けるMy teamは、nerdwicthkomugichan(西口直人)さん、玉田デニーロさん、コイデシュンペイさんの音楽チームのことを指しているのかなと思っています。
"Just do it"はナイキのスローガンだそうです。これから作業するぞってことでしょう。
「夢の中にダイビング」から、サビの「It's a Dreamworks」に入ります。夢の中で仕事をしているのかもしれませんし、みんなが夢を見ている時間帯に、夢うつつな状態で仕事しているということかもしれません。
朝まで作業して新しい曲を作り続けているのでしょう。
「なかなか終わらないムービー 主人公のわがまま通り」については、次のように解釈しています。まず、「主人公」はピーナッツくんのことだと捉えています。そして、ピーナッツくんが「ゆるキャラグランプリに出てみたい」とか「ラップやってみたい」とかわがまま言うものだから、ご主人様はそれに振り回されて「いつ終わってもおかしくないと思ってたけど、案外終わらないもんだね」と思っていたりするのかもしれない…と想像しました。
ここではご主人様とピーナッツくんを分離して二人の独立した人格として捉える世界観を採用しています。
だいぶ昔ですが、ピーナッツくんのツイートでそういった牧歌的な世界観設定が示唆されたことがあったようです。
トピック:実はアニメは更新されていた!?
ここでひとつ、注目に値する発言を引用させてください。
雑誌『POKOPEA』(2024)の最後から2ページ目にある視聴者アンケートの質疑応答コーナーです。
読み解くと、ピーナッツくんは「2Dアニメーション以外の形でずっとアニメを更新している」と主張しているわけです。これはどういう意味でしょうか?
私は、動画投稿、ゆるキャラグランプリ、音楽活動などピーナッツくんの活動すべてを、アニメの主人公「ピーナッツくん」のストーリーの延長線上にあるものとして理解することが提案されているんじゃないか、と考えています。
賛否両論ありそうな提案ですが、私個人は結構そういう捉え方もおもしろいなと思っています。
もともと、アニメとぽんぽこちゃんねるは「違う世界線」と言われていた気もします。しかし、そろそろそうした世界線をかき混ぜていくことも検討してみたいと私は思います。
こうして私は「なかなか終わらないムービー 主人公のわがまま通り」という歌詞を「ピーナッツくんのムービー(活動すべて)がなかなか終わらない」と解釈したわけです。
歌詞解釈②
ピーナッツくんって「名前を呼ばれる」ことについてよく歌っています。たぶん、それが人気者であることの証だという風に捉えてるのかなという印象です。
誰かに名前を呼ばれる限り、忘れられずに人気者でいられる限りは、がんばって朝まで作業してみんなに届けるよ、みたいなことかもしれません。
まとめに入ります。どうかお付き合いください。
自分たちのやってる活動が、知らない人からは簡単な仕事に見えるかもしれない。
ときどき落ち込む日もある。
過去、未来、そして現在。
内側と外側。ご主人様とピーナッツくん。
アニメの世界線、ぽんぽこちゃんねるの世界線。
VTuber業界、HIP HOP業界。
コラボするVTuber、ラッパー、プロデューサー。
そうした「ピーナッツくんの活動」「ご主人様の生活」すべてが集結し、表現される場が「ピーナッツくんの音楽」だったりするのかもしれません。
ピーナッツくんが誕生してから起こったすべてのことは、ご主人様が体験したことであると同時に、ピーナッツくんが体験してきたことでもあります。
そうしたものたちをかき混ぜていろいろな角度から表現したのが、『BloodBagBrainBomb』というアルバムなのかもしれません。
それを「かき混ぜる世界線 そんなとこ」って言うわけですね。
ここまでの熱量をもってぶつけてきておいて、「そんなところかな」みたいなスカし方をするのは、照れ隠しからなんでしょうか。
すごくいいアルバムの終わり方だと思います。
さいごに
以上、ピーナッツくん4thアルバム『BloodBagBrainBomb』の全曲感想を語ってきました。
本作のテーマ、「血と汗。精神と肉体。破壊と創造。棺桶と揺籠。ダンスフロアとモッシュピット。輸血袋と脳爆弾。」についてあまり直接的に論じられなかったことは心残りです。
しかし、ご主人様とピーナッツくんの存在に関して、初めて自分の中で立場を示せたことはよかったです。
私はこの記事で、「ご主人様とピーナッツくんは経験を共有するふたつの人格として重なり合って存在しているものとして語ることもできるし、文脈次第で、独立したふたつの人格として語ることもできる」という立場を示したつもりです。(これは真新しい立場ではないかもしれませんが、自分の中ではハッキリしていなかったことなので、ハッキリさせられてよかったです)。
「ギリギリまで煮詰めたピーナッツくんのドロッドロの頭の中を、この音楽で届けられたらと思うナッツ!!よろしくナッツ!!!」というコメントについては、「ピーナッツくんがアニメの世界線と他の活動の世界線をドロドロにかき混ぜようとしているのではないか?」という解釈を提案する、という仕方で取り扱ったことにさせてください。
こじつけみたいな解釈も多かったかもしれません。
また、妙に哲学ぶったような言い方しちゃって、もし鼻についたら申し訳なく思います。
ここまで長い文章を読んでくださって、本当にありがとうございました…!!!!
もし楽しんでもらえてたら嬉しいです!
これからもこの素晴らしいアルバムと、ピーナッツくんのライブ、そしてぽこピーの活動を楽しんでいきましょう…!
ピーナッツくん、そして制作関係者のみなさん、最高のアルバムをリリースしてくれて、本当にありがとうございます…!
おわり
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