【楽曲感想】Peterparker69「deadpool」~音楽と閉じ籠ることについて~
はじめに
こんにちは。
今日はPeterparker69(ピーターパーカー シックスナイン)の「deadpool」(デッドプール)という楽曲の考察・感想記事を書きます。
あらかじめ断っておくと、いくらか自分語りも挿入させていただきます。
「自分にとってこの曲がどういう曲か」ということを語った方が今回はたぶんいい内容になると思ったので、そうさせてもらいます。
Peterparker69 - 「deadpool」
作曲:Y ohtrixpointnever
作詞:Jeter
まず、イントロの「ズーーーン」みたいな音の響き方がやばいですね。イヤホンやヘッドホンで聴くと本当に脳の中が振動するような感覚を得られます。頭蓋骨の内側にバイブレーションをぶち込まれたときような音の振動を感じます。特殊で気持ちがいいです。
その直後、赤子が生まれたかのような泣き声が響きます。
Peterparker69の音楽からは曖昧でふわふわとした浮遊感や恍惚さといったものを感じられるので、「赤子」とか「胎内」みたいなイメージは割とよく馴染みますね。
歌詞引用
歌詞考察
① 「I'm being selfish…」
"I'm being selfish"は直訳すると「オレは自分勝手だ」って感じみたいです。
私は夜一人で家に帰ってきて、自分だけの時間を過ごしているときの心情が歌われているのかなと感じました。
「今は自分だけの時間。ああ、だけどもう夜の時間が無くなっちゃうよ」みたいな。
自分が仕事から帰ってきてそんな感じの生活を送ってるので、そういう捉え方になりました。
② 「今は明日も後に…」
英語箇所を和訳すると、以下のようになります。
「後に~/今は明日も後に~/後に~」という箇所は、この曲の中で何度も登場する印象的なフレーズですね。
自分としては、「明日のことは後回しにして、とにかく今は今だけのことを考えていたい(今だけの楽しい時間を味わっていたい)」といった心象を感じています。
「surrounded by massive people/In the darkness/溶け込めなくて」という歌詞からは、あまり周囲に溶け込めなくて暗闇の中にいるような孤立感に苛まれている心情が伝わってきます。
この箇所、フロウはめちゃくちゃかっこいいですね。
曖昧な歌い方なので、聴いている分には何を言っているかふつうはわかりません。ただ気持ちいいだけです。
しかし、歌詞を見てみると、かなり繊細さや心細さを感じさせる内容です。
そのビックリ感もPeterparker69の音楽がもつおもしろいところだなと思います。
③ 「言う間もなく もういれない…」
何か口を開こうとするような間もなく、すでにもうこの場に居づらくなっちゃってその場を立ち去っている状況が浮かびます。
そして、「Im healing with my airpods〔=airpodsで自分を癒している〕」わけです。
これは結構共感できる状況ですね。
なんか「この場にいるの無理だな」ってなってその場を立ち去った後は自分の心を回復する必要がありますからね。そうしたときの心強い味方はワイヤレスイヤホンですよね。
④ 「いっせーのは嫌い…」
和訳に自信があるわけではないですが、以下のような感じでしょうか。
「いっせーのは嫌い」は何ともグッとくる歌詞ですね。
さっきからずっとあまり周囲に馴染むことのできない"はぐれ者"感のある歌詞が続いていました。
「いっせーのは嫌い」はまさにそうした人による心の叫びという感じがします。
私も学校の授業中の課題に取り組むのがどうしても遅くていつも遅れていたので、何となくシンパシーあるかもしれません。(まあ特に深刻なレベルではないんですけどね)。
「Jump off the roof は先に行きたい」っていうのは、結構不穏なことを言っているんでしょうか。つまり、飛び降り自殺の願望を歌っているのでしょうか。
もしかしたらそうかもしれません。
しかし、私が感じ取っている何となくのニュアンスはこうです。
「別にそんな常に積極的に自〇したいわけではない。けどもし誰かがそれをやるっていうんならそのときは自分こそが第一にそれをやりたい」くらいの感情。
「もし誰かが自〇するんなら、その一人目は自分でしょ(なぜなら自分こそがこんなにつらいんだから)」みたいな心情を何となく読み取っています。
別に積極的に自〇しようってわけではないけど、それくらいの生きづらさはあるぞっていう。何となくそういう心理を感じ取っています。
「曲線どーどー緩めるtire」は難しいですね。
詳細な解釈はありませんが、私がこの箇所から受け取ったニュアンスは、「張り詰めていた緊張をほどいて、少しリラックスしようとし始めている状況」です。そういう心の動きを感じています。
⑤ 「今だけdreaming…」
現実は大変なのかもしれませんが、どうやら今だけは夢見心地で踊っているようです。そういう時間、必要ですよね。
私は仕事終わりにPeterparker69等の音楽を聴くことで日々そういった時間を過ごさせてもらっています。
疲れた仕事終わりであっても、イヤホン装着すればすぐに「今だけdreaming タララッタ♪」って感じでご機嫌になれるんですよね。ありがたいです。
⑥ 「フェイスラインは垂る繊細さ…」
“I only wanna dance tonight"は「今夜はただ踊っていたい」って感じで、"bank account"は「銀行口座」みたいです。
「フェイスラインは垂(た)る繊細さ」の歌い方は震えるほどかっこいいです。ていうかこの節は全体的にフロウがめちゃくちゃかっこいいですね。
「フェイスラインは垂る繊細さ」の解釈は難しいです。「垂れ目」みたいな概念と近い、何か垂れ下がった顔立ちについて言っているのでしょうか。それとも、フェイスライン上を伝って落ちる汗や涙のことでしょうか。踊っているなら「汗」かなと思いましたが、繊細さなら「涙」でもよさそうですね。
もし頬を伝う涙のことを「フェイスラインは垂る繊細さ」と歌っているのなら痺れますね。詞的でオシャレでかっこよすぎて。
「Bank account しらねぇ/花いれとけ」は不思議な歌詞ですが、妙におもしろいですね。
私が受け取ったニュアンスでは、「お金なんか興味ないよ。口座になんて花でも入れときなよ。(本当に大事なのは花だろ)」って言ってる感じですね。お金なんていう本来それ自体で価値があるわけでもない社会的な人工物よりも、花という感覚に直接喜びを与えてくれるなんだかハートフルな代物の方にむしろ価値を見出している感じがします。別にからかうつもりじゃないですが、ピュアで繊細そうですよね。
(でも実際私もこういう感覚って少しわかる気がします。仲のいい同僚や上司から老後のために投資信託した方がいいとか言われてもいまいちモチベーション湧かなくて、正直今日も明日も音楽を聴いて踊って過ごしていたいんですよね。それ自体で喜びを与えてくれるものに対して今の時間を使っていたいです)。
(もちろん本当は投資信託と音楽鑑賞は全然両立できるんですけどね。ただ単に根本的にお金に興味がないんです。「お金のことに関心をもちながら日々を送る」ということに対してまったく魅力を感じないと言っていいです)。
投げやりな言い方だけど「花いれとけ」って言ってる感じ、ツンデレみたいな、なんかそういう愛らしさがあります。
⑦ 「彼かけっこ日々と 閉ざす目と耳を」
日々に追われ、日々から逃げ、目と耳を閉ざしているんですね。
◇
自分の話をさせてもらいますが、私は今やそれなりに順調な社会人生活の軌道に乗っているので、もうそんなしんどい心情(=日々何かに追われ、自分の中に閉じ籠る)には心から全面的に共感することはできません。
「自分の中に閉じ籠るような心理的段階を乗り越えよう」という戦いに勝利しつつある最中という感じです。
それでもやはり、自分の中にそういう自閉的な部分(=「この人たちとはやっていけないよ。自分は自分の世界に逃げ込むよ」)という心情がいくらかは残っています。
なので、Peterparker69の音楽に対して私が感じている感情のひとつは、懐かしさかもしれません。私はJeter(ジーター)が歌う歌詞の中に、10代から22歳頃にかけてのもっと幼くて尖っていた頃の自分の心情を再発見しているかもしれません。
(何となく)セミに喩えて言えば、私は羽化しようとしていて、Peterparker69の歌詞内容は私にとって脱ぎかけのサナギです。今からそれを脱ぎ捨てようとしている、自閉的で、感傷的で、だけど何とか気分良くありたいと切に願っている、そういった過去の自分の精神性です。
(それに対して、現在の私はかなりオープンで、社交的で、感傷的になることをほとんどしなくなっています。実際めちゃくちゃ気分のいい日々を送っています)。
しかしそうは言っても、私はまだ完全に成体になっているわけではなく、あくまで羽化しようとしている真っ最中の時期なんですよね。
つまり、Peterparker69によって歌われている心情は、まだ私の一部分なのです。
そのおかげで、私はPeterparker69の音楽を聴くと「これは自分のことだ」と感じられるし、癒されることができます。
そして、同じ心情の人たちに対して「一緒に気分よくなれたらいいよね」って素直に思えます。
⑧ 「今は明日も後に」
明日のことは後で考えるとして、今はただ心地よく音楽を聴いていればいいです。
自分のための時間を過ごすのは本当に最高ですね。
これが「趣味:音楽鑑賞」ということなんでしょうね。
さいごに
「deadpool」は私なりの解釈だと、結構感傷的な歌詞内容でした。
あまり周囲に馴染むことができず、自分の中に閉じ籠っている様子が歌われていると思います。
変な喩えかもしれませんが、母の胎内に逃げ帰り温かな羊水に包まれて癒されているような気分になれる曲かもしれません。(Peterparker69の音楽は割と全部そういうところあると思っています)。
今現在自分の中に閉じ籠る心情が強い人にとっては、ダイレクトに共感できる歌詞かもしれません。また、そういう自閉的な段階を脱出しつつある人にとっては、自分の中で過去になりつつある部分に改めて触れられる懐かしい内容の歌詞になるのかもしれません。
(私は自分の殻に閉じ籠りがちだった青年が徐々に周囲の人々に心を開いていく過程というものになぜか強い関心があるので、deadpoolの歌詞はすごく心に響くものがありました)。
「deadpool」すごくいい曲ですね。
これからもPeterparker69の音楽を楽しんで行きたいと思います。
読んでくださった方はありがとうございます。
おわり