【考察・解説】Jacotanu, Genick, ピーナッツくん「Raving In The Simulation (feat. 嚩ᴴᴬᴷᵁ)」考察 & 「実写版ぽこピー」とは?
※ 本記事は「ぽこピーアドベントカレンダー2023」vol.1の12月24日分として提出した作品になります。
0. はじめに
① 導入
2023年11月30日(木)、UKサウンドをフィーチャーするダンスミュージックレーベル「SPRAYBOX」からコンピレーション・アルバム『THE RAVING SIMULATOR』がリリースされました。
このアルバムは「仮想空間上でのUK RAVEパーティ」がテーマだそうです。
トラックリストは以下になります。
本記事ではその1曲目、Jacotanu, Genick, ピーナッツくん - 「Raving In The Simulation (feat. 嚩ᴴᴬᴷᵁ)」について語らせていただきます!
↓まだの方はぜひ一度聴いてみてください!
② この記事の流れ
この記事の流れは以下のものです。
制作者紹介 (ピーナッツくん、Genick、Jacotanu、嚩ᴴᴬᴷᵁ)
「Raving In The Simulation」の制作者4人を簡単に紹介します。
コラボヒストリー:ピーナッツくん × Genick × 嚩ᴴᴬᴷᵁ × 田中ショヲタ
ピーナッツくんと、「実写版ぽこピー」で知られる嚩ᴴᴬᴷᵁさん & 田中ショヲタさん、そして「実写版ぽこピー」の立役者と言えるGenickさんがコラボしてきた歴史を振り返ります。
ここは個人的にぽこピーファンの皆さんにはぜひとも押さえておいていただきたい、そうするともっとぽこピーを追うのが楽しくなる内容になっています!
楽曲考察「Raving In The Simulation」
「Raving In The Simulation」の歌詞を解釈・考察します。
途中でピーナッツくんらしさを象徴する事例として「P-CON」の解説を挟ませてもらいます。
1. 制作者紹介 (ピーナッツくん、Genick、Jacotanu、嚩ᴴᴬᴷᵁ)
この楽曲の制作者たちについて説明させていただきます!
なお、私がピーナッツくんファンなので、主としてピーナッツくんを中心とした視点からの説明になってしまうことをご了承くださいませ!
① ピーナッツくん
作詞&歌唱のピーナッツくんは、元はオリジナルショートアニメの主人公キャラクターでした。しかし、今ではもっぱら動画投稿や生配信を行う事務所非所属のYoutuber(VTuber)であり、楽曲リリースやライブ公演を行うアーティストでもあり、2019年にゆるキャラグランプリで優勝した着ぐるみキャラクター(ゆるキャラ)でもあります。
YouTubeでは実妹である「ぽんぽこ」と撮影した企画動画を週2~3本投稿しています。実写YouTuberのように身体を張った企画や身内ゆえの容赦ないツッコミ、そして隠しきれない兄妹仲の良さなどが日々ファンたちに笑いと癒しを与えています。
ピーナッツくんは深夜アニメ的なキャラクタールックからも、生身のラッパーからも大きく異なる外見で独自の存在感を放っています。
ヒップホップやダンスミュージック系統の楽曲を多くリリースしており、音楽目当てのファンも多いです。
ぽんぽこちゃんねる - 「【汗だく】灼熱の着ぐるみライブ中の相方より多くのカロリーを消費せよ!!!【森道市場2023】」(2023/05/31)
ピーナッツくん - 「TwinTurbo (Official Music Video)」(2023/07/23)
② Genick
作曲のGenick(ジェニック)さんはDJ、トラックメイカー、映像監督であり「SPRAYBOX」の共同設立者でもあるそうです。また、XRライブなどを手掛ける株式会社MMT(旧MomentTokyo)の社員でもあり、ピーナッツくんのライブを二度ディレクションしています。Genickさんが監督してくれたピーナッツくんのライブは、2022年2月の「ONAKAnoNAKA」と2022年8月の「Walk Through the Stars Tour FINAL バーチャルライブ」です。両ライブともピーナッツくんの音楽キャリアにおいて重要な作品ですね。
このようにピーナッツくんは少なくとも2022年2月の時点からGenickさんと一緒にお仕事していることがわかります。
MMT -「Digest Video | Walk Through the Stars Tour Final Supported by Moment Tokyo」(2022/09/09)
③ Jacotanu
もう一人の作曲者、Jacotanu(ハコタヌ)(𝖣𝖢 𝖬𝗂𝗓𝖾𝗒)さんもDJ、トラックメーカーであり、Genickさんと同じく「SPRAYBOX」の共同主催者だそうです。
ピーナッツくんとの関わりは今回が初だと思われます。それゆえ私視点からはあまり内容豊かな紹介ができず忍びないです。
個人的な感想を添えさせていただくと、Jacotanuさんの作るビートはかなりアップテンポで思わず身体が乗っちゃうような好きなタイプでした!
リンクツリー - Jacotanu/DC Mizey
SOUNDCLOUD - Jacotanu / DC Mizey
④ 嚩ᴴᴬᴷᵁ
客演(作詞&歌唱)の嚩ᴴᴬᴷᵁ(ハク)さんは主にアーティスト(ラップ)やモデルの活動をしているようです。SoundCloudを中心に楽曲をリリースしており、かつてDr.Anon(ドクター・アノン)というクルーの一員としてハイパーポップ系の楽曲をしばしば歌っていたようです。なお、Dr.Anonは2023年11月5日に活動終了しています。
ピーナッツくんとの絡みで言うと、嚩ᴴᴬᴷᵁさんは2022年2月のピーナッツくんXR LIVE「ONAKAnoNAKA」にてグッズTシャツのモデルをしたのが初コラボとなります。
嚩ᴴᴬᴷᵁさんが「ONAKAnoNAKA」の着画モデルに起用された経緯についてはインタビュー動画が上がっています。
道を歩いていたらGenickさんからいきなり電話で誘われたそうです。
そして2023年4月には「【実写版】ぽんぽことピーナッツくん」という動画にて甲賀流忍者ぽんぽこ役として嚩ᴴᴬᴷᵁさんが再登場することとなりました。詳細はこの後説明します。
◇
このように、ピーナッツくんとGenickさん、嚩ᴴᴬᴷᵁさんのご縁は長く続いているわけですが、その経緯がなかなかおもしろいのでここでその一部を簡単に振り返ってみたいと思います。
2. コラボヒストリー:ピーナッツくん × Genick × 嚩ᴴᴬᴷᵁ × 田中ショヲタ
① 2022.02.20 XR LIVE「ONAKAnoNAKA」グッズTシャツ着画モデル
2022年2月20日 XR LIVE「ONAKAnoNAKA」がweb公演されました。
そのグッズTシャツ着画モデルとして嚩ᴴᴬᴷᵁさん & 田中ショヲタさんが起用されました。
何の前触れもなく突然実写モデルが登場した衝撃から、一部ファンの間では「ぽこピーの中の人ってこんな感じだったんだ…(冗談)」とおもしろがられることになります。
② 2022.02.21 着画モデル豆狸化ファンアート
翌日、モデルさんの原型を残しつつも二人を絶妙に豆化・狸化したようなファンアートが公開されます。「模写」と書かれていますが厳密には模写ではないですね!
③ 2022.02.27 ファンアート逆輸入コスプレ
なんとその6日後、先ほどのファンアートを逆輸入するかたちで、モデルさんたちを実際に豆化・狸化した(コスプレ)写真が運営サイドから公開されました!
これに関するピーナッツくんのツイートは約5,000RT & 約41,000いいねを獲得し、とても盛り上がりました。
このタイミングでGenickさん、嚩ᴴᴬᴷᵁさん、田中ショヲタさんの3ショットも公開されています。
可愛いような恰好良いような、少し不気味なような…。
とにかく予想外の盛り上がりがリアルタイムで進行しておもしろかったです。
④ 2023.04.01 エイプリルフール企画「【実写版】ぽんぽことピーナッツくん」
そんな楽しい思い出から1年2ヵ月が過ぎ去った頃、2023年4月1日、ぽんぽこちゃんねるに突如としてこんな動画が上がりました。
ぽんぽこちゃんねる - 【実写版】ぽんぽことピーナッツくん
実写版のぽんぽこ(嚩ᴴᴬᴷᵁ)とピーナッツくん(田中ショヲタ)、そしてガチ恋ぽんぽこ(葉菜子)が寸劇を繰り広げる内容で、見た目は実写ですが声はぽこピーたち本人がアフレコしています。
1年2ヵ月振りに着画モデルのお二人が再登場です。
約1年前の着画モデルの経緯を知っているファンにとっては、「まさかここに来てONAKAnoNAKAの着画モデルのお二人が帰ってきた!笑」という感じだったでしょう。
その一方で、ぽこピーについてそう詳しくない視聴者の方たちは「これ本人? 誰か教えて…」と大いに混乱していた様子でした。
動画コメント欄には「ぽんぽこかわいい」「ピーナッツくんいかつい」「数か月間ずっとこれが本人だと思ってた…」など様々な反応が集まっていました。
このエイプリルフール動画は大きく拡散され、ぽんぽこちゃんねるの動画で初の100万回再生を突破する快挙を成し遂げました。2023年12月23日現在、「【実写版】ぽんぽことピーナッツくん」の再生回数は230万回で、後から追い上げてきた「耳垢の悪魔」(265万回再生)に次いで二位の順位に落ち着いています。
モデルのお二人が実写版ぽこピーの写真をたくさん上げてくれていて楽しいです。
↓「炙ってうめー」は動画で登場したマシュマロのことです。これすごくいい写真ですよね。
それにしても黄色いですね。
⑤ 2023.05.26 音楽フェス「P2V2P」田中ショヲタ ゲスト出演
2023年5月26日、MMT主催の「P2V2P」という音楽フェスにピーナッツくんが出演し、GenickさんもDJとして会場に来られていました。
ピーナッツくんの一曲目「グミ超うめぇ (PAS TASTA remix)」が流れたとき、なんとステージに田中ショヲタさんが急遽登場してくれました!
田中ショヲタさんは当初単に観客として遊びに来ていただけだったそうですが、その場のノリで出演してくれる流れになったそうです。
その後は二階席からご観覧しており、帰りは二階から観客たちに手を振ってくれました。
ちなみにどうやら黄色いファッションは私物のようで、特に黄色のベストはお気に入りのご様子です。着用されているのをよくスナップで見かけます。
ヘアスタイルと言い、黄色いカラーリングと言い、実は普段からちょっとだけピーナッツくんに近い存在なのかもしれませんね。
これがリアルピーナッツくんだとしたら、かっこよすぎて「オシャレになりたいピーナッツくん Lv. 2000」みたいな印象です。
⑥ 2023.11.30 Jacotanu, Genick, ピーナッツくん - Raving In The Simulation (feat. 嚩ᴴᴬᴷᵁ) リリース
そしてエイプリルフール動画から約9か月後の2023年11月30日、ついにJacotanu, Genick, ピーナッツくん - Raving In The Simulation (feat. 嚩ᴴᴬᴷᵁ)がリリースされたのでした。
ちなみにこのコンピレーション・アルバム『THE RAVING SIMULATOR』自体がGenickさん発案だそうです。つまり、再びGenickさんがきっかけとなり、Genick × ピーナッツくん × 嚩ᴴᴬᴷᵁ のコラボが実現したのでしょう。
◇
このように、ピーナッツくんは2年前から株式会社MMTというライブ製作会社さんにお世話になりつつ、MMT社員でDJのGenickさんを軸として嚩ᴴᴬᴷᵁさん、田中ショヲタさん、Jacotanuさんとの縁を広げ、グッズTモデル、動画出演、ライブゲスト出演、楽曲制作など非常に多面的なコラボを展開してきたわけです。
こうして見ると、コラボの実現に当たってはやはりGenickさんの働きが大きいんだろうなと推察されます。ピーナッツくんにVTuber外部とのおもしろいコラボをたくさんもたらしてくれて、ファンとしては本当にありがたい限りです。
MMTさんやGenickさん、嚩ᴴᴬᴷᵁさん、田中ショヲタさんはいつも予想外のコラボで私たちを驚かせてくれるので、ファンとしても追っていて楽しいですよね。
これからも楽しいコラボ企画をたくさん見せてくださることを心から期待申し上げております。
3. 楽曲考察「Raving In The Simulation」
ひとまずここまで読んでくださってありがとうございます!
ここからは楽曲考察に入りたいと思います。よろしければぜひともお付き合いください!
まず歌詞を引用させてもらいます。
私がこの曲のピーナッツくんの歌詞から読み取ったテーマは次の二つです。
やはりバーチャル(仮想空間)について歌うなら「性」のテーマは外せない。
まだまだ尖っていたい。
ピーナッツくんにはこういう気持ちがあるのではないか、と自分なりに読み取りました。
◇
① 🥜テーマ1「バーチャルと性」
今作は「仮想空間上でのUK RAVEパーティ」がテーマのアルバムです。
ピーナッツくんは「バーチャル」に関して、2ndアルバム『Tele倶楽部』のインタビューにて次のように語っていました。
仮想空間上での性的行為はメディアでも興味深く取り上げられてきたようです。
今作で性的な事柄に関わると思われる歌詞はいくつか登場します。
例えば、次の箇所です。
まず明確に性的な事柄を取り扱っていると思われるのは次の部分です。
「Gift for you よ Hey guys」
あるアダルトサイトで「Hey guys we have a gift for you」と流れる広告動画が頻出し、一部でネタ化・ミーム化しました。
「みんな求めるピストン」,「交わったいいっしょ 昔からそうきっと」
性行為のことを仄めかし、あえてそれなりに肯定しているのかもしれません。
次に性的に読もうと思えば読めなくもないのは次の部分です。
「のっぴきならない理由なら このVIBES 止められない進化」
性的欲求がある限り進化(=生殖の連鎖により生じる)は止められない、といったことを歌っているのかもしれません。
あと音楽的な進化もかかっているかもしれません。
「トランスフォーマー ビーストウォーズ」
これは単なる平成レトロかもしれません。
テレビアニメ『ビーストウォーズ 超生命体トランスフォーマー(日本語版)』が1997年~1998年に放送されており、ピーナッツくんのご主人様(=中の人=兄ぽこ)は世代的に当時見ていたとしてもおかしくなさそうです。
ただ調べてみたところ、『ビーストウォーズ 超生命体トランスフォーマー アゲイン」が2023年4月から放送開始していました。ピーナッツくんは現在5才児なのでこちらも見ていてもおかしくありませんね。
しかし、「トランスフォーマー ビーストウォーズ」という言葉だけをまっすぐに翻訳してみると「形態変化するもの 獣(けだもの)の戦争」などと訳すこともできるでしょう。想像力豊かな人であればそこからいくらでも性的なメタファーを読み取れるはずです。
もう一箇所、「バーチャルと性」のテーマを読み取ることのできる箇所があります。
「君と秘密のCall」は何かいかがわしい個人間の通話を想像させます。あえて性的なものとして捉えるなら、「テレフォンクラブ」や「テレフォンセックス」などを考慮することもできます。
また、私はこの歌詞を「仮想空間」や「性」といったテーマと結びつけて「バーチャルセックス」と呼ばれるトピックを連想しました。それに関する記事を読んでみたりしました。
この当事者インタビューによると、VR空間上で遊んでいる人たちの中からこっそり2人だけ抜け出してプライベートワールドに移動し、そこから2人きりで段々いい雰囲気になっていく…みたいな世界が一部にはあるらしいです。
「2人だけ抜け出す」ってところもパーティっぽくていいですよね。
「バーチャルセックス」ってまさに「君と秘密のCall」だし「(性的なことに関する)最先端のシミュレーション」でもあるよな…と思えてきちゃいます。
「シミュレーション」って、ひとつには現実を模した仕方で行う模擬実験のことらしいですし。
ただ、「バーチャルセックス」の記事を読んでいると、それは「来たる本番のための模擬実験」とかではなくて、それ自体が「本番」なんだろうなという感じもしますけどね。
ピーナッツくんならもしかするとこういった事柄へのアンテナも立てているんじゃないかなと思い、ひとつこういう解釈もありなのかなと考えています。
それに、無知ゆえの偏見ですけど、海外で夜通し踊り明かすのってちょっと大人の香りがしませんか? 「仮想空間上でのUK RAVEパーティ」ってテーマだけで少し「大人の世界」っぽいなって思っちゃいます。
だから「仮想空間上でのUK RAVEパーティ」というテーマが与えられたとき、ピーナッツくんが再び「バーチャルと性」というテーマに踏み込んでもおかしくないよな、などと考えています。
さて、次のテーマに移りたいと思います。
② 🥜テーマ2「まだまだ尖っていたい」
ピーナッツくんは、心地よい安住の地に留まることを良しとせず、もっと高いハードルを越えていかなきゃ、と自分自身に鞭を打つようなところがあります。
例えばそれは以下のような歌詞に現れています。
また、『Tele倶楽部』のインタビューでは「Peanuts in Wonderland」に関して次のように語っています。
このようにピーナッツくんは停滞を良しとせず、常に前に進もうとする克己心をもっているようなのです。
次に、業界での生き残りと物理的な尖り(凹凸)とを関連付けて歌っている歌詞が「Walk Through the Stars」と今作にあると思っていますので、見ていきましょう。
私はこれを「尖った部分がないとすぐ忘れ去られていってしまうんじゃないか」という心情として解釈しています。
そう解釈するきっかけが得られたのは、今作の歌詞からです。
今作は「仮想空間」がテーマのひとつであるにもかかわらず、「凸版印刷術」というすごく物理的でアナログな事柄が登場します。凸版印刷術とは、凹凸の「凸」の部分にインクをつけてそれを紙などに押し付けて文字や記号を複製する技術のことです。
このメタファーを読み取るならば、やはり「ピーナッツくんの尖った部分を強く押し出すことで、バーチャルな存在でありながらも人々の記憶に残り続けられる存在でありたい」というまさにDrippin' Life的な気概が表現されているのではないかと考えています。
今作には次のような歌詞もあります。
「でこぼこフレンズ」とは、NHK「おかあさんといっしょ」で2002年から2011年まで放送されていた少しシュールなショートアニメです。ピーナッツくんとの共通点を見出すならば、少しシュールな世界観はピーナッツくんのショートアニメの世界観と遠からずといったところでしょうか。また、教育番組的なコンセプトは「すくすくピーナッツくん」などの生放送企画でもこれまで見られました。
それに、何と言ってもそもそもピーナッツくんの姿かたちがでこぼこしているんですよね。
「一般的感覚だったら/こんなんやっても元も子もねぇ」というのは、「王道的なやり方で人気を獲得していこうという感覚だったら、そもそも現在のような見た目や活動スタイルでやってきてないよ」という自身のデザインやキャリアに関するボースティングかなと思います。
これからもピーナッツくんには令和の「でこぼこフレンズ」として凸版印刷術のように尖った部分をプッシュして、時勢に押し流されないよう生き残っていってもらいたいですね。
◇
ファン目線からすると、すでにピーナッツくんは音楽面でも評価されて複数のライブに呼ばれたり、バズったり、人気が出てきてたりしており、守りに入ってもこのままやっていけるんじゃないかと感じそうになることがあります。しかし、「このままただ穏やかにやっていってもよさそうなものなのに、まだ守りに入らないんだ」と驚かされることがあります。
やはり印象的だったのは先日の生放送「P-CON」です。
「P-CON」は、「X-CON」というフェスが中止したことで代わりに開催されたピーナッツくんの生放送タイトルです。ここで少しその経緯を説明させていただきます。
③ 【コラム】🥜尖り事例「P-CON」
2023年、「X-CON(エックスコン)」という音楽フェスの初開催が告知され、複数のジャンルから多数の豪華アーティストの出演が予定されていました。しかし、チケットやグッズが届かないといった不穏な口コミから始まり、とうとう開催の17日前に「主催者側の都合により開催中止」と発表され、さらに公式のX(twitter)アカウントはなぜか凍結し、最終的には運営会社が破産という驚くほどボロボロの結果となりました。
これにはもちろん観客や音楽関係者たちから不満や怒りの声が上がり、大きな衝撃と動揺をもたらしました。
そうした状況がある中、本来ピーナッツくんが「X-CON」に出演するはずだった2023年12月10日、ピーナッツくんは急遽「P-CON」という生放送の開催を告知しました。サムネイルは「X-CON」のロゴに対する露骨なオマージュとなっています。
その動画概要に書かれたコメントは「破産しないように頑張るナッツ!」。「X-CON」の顛末を揶揄したとしか思えない概要欄にファンたちは爆笑していました。
生放送では、
などのいじりから、
などといったアーティスト側からの簡単な説明までしてくれました。
これも努めて穏便に行こうとするなら中々やらない言動ですよね。
また、「喉との戦い」やYOASOBI「アイドル」の一部分だけをループしてどんどんピーナッツくんがおかしくなっていくなどの無茶苦茶な謎のノリを、一万人超の視聴者に対して晒していました。
倍速ver.の「おねがいマーニー」で繰り出される高速ラップには心から「ピーナッツくんかっこいいな」と痺れました。
また、tofubeatsの「LONELY NIGHTS」を歌ってみたシーンは素直に胸にグッとくるものがありました。
ネットで起こった事件を題材にそのオマージュ企画をやってのけるのは少々攻めたところがあります。
また、どんな反響がくるかわからない謎のノリを連発する姿からは、「かっこいいだけの存在を目指すつもりは一切ないらしい」という姿勢が改めて伝わってきました。
配信の序盤に「大したことはしない!」と豪語してみせた通り謎のノリを連発する一面もありつつも、他方では「おねがいマーニー(高速ver.)」やリスペクトの伝わる丁寧な「LONELY NIGHTS」coverでピーナッツくんはアーティストとしての矜持をしっかりと示してくれました。
ソロ生配信のスタイルは数年前から変わらず、グダグダ感や放送事故感を醸しつつも絶妙の笑い所を差し挟むヒリつく配信スタイルに多くの視聴者がしっかりと惹きつけられ、大きなインパクトを残しました。
「P-CON」の反響は大きく、「これだからピーナッツくんのことが好きなんだ」といった仕方で一部のファンたちからはかなり株が上がっていたようです。
ちなみにGenickさんもリアルタイム視聴されていたようでした。
「X-CON開催中止」という釈然としないモヤモヤが残る出来事があった中で急遽行われたピーナッツくんの「P-CON」開催は私たちにとってあまりに痛快で、爆笑必至であり、またどこか感動を呼び、最高の思い出になりました。
ピーナッツくんは、楽しみにしていたものが損なわれてしまい空虚な気持ちになりかけていたファンたちの心を非常に彼らしい仕方で救ってくれたのです。そこにあったのは何とか埋め合わせをしてファンたちを喜ばせようという良心的なサプライズ精神だっただろうと思います。
④ 🥜歌詞解釈
少し話が逸れてしまいましたが、最後はシンプルに歌詞を順番に読み解いていきたいと思います。
「ピーナッツくん読む 風向き 方向」
ピーナッツくんは時勢やトレンドに応じて柔軟に身の振り方を変えています。
ピーナッツくんは2017年~2018年頃、「ショートアニメじゃ他のショートアニメチャンネルに勝てないな」というのと「VTuberの波が来ているな」という二つの理由から、甲賀流忍者ぽんぽこのデビューを足掛かりとする仕方で巧みにVTuber業界に参入してきたところがあるのです。
やはり「プロデューサーとしての手腕」と「プレイヤーとしての魅力」を兼ね備えているのが兄ぽこ/ピーナッツくんの最もかっこいいところのひとつですよね。
きっとそれが私たちがぽこピーを信頼して楽しんでいられる理由の一部です。
「マニュアル通りじゃないけど オートマより 相当いいんじゃない? とか身もふたもないこと言っとく堂々」
ピーナッツくんはこれまであまり王道的なキャリアを歩んできていません。
そういう意味で「マニュアル通りじゃない」。だけど、「自動(オートマ)で導かれるありきたりな道を歩むよりも自分で考えて切り開いた道の方がいいんじゃない?」と堂々言ってみせているのでしょう。不安もあるけど、ときどき大きく出てみせるわけです。イキリこそピーナッツくんの本領ですから。
「問題あったら流してTOTO」
TOTOはトイレメーカーのことでしょう。
「問題あってもそこは水に流してほしい」という少々虫がいい正直なお願いだと思います。
「何もないところにかざすジョウロ」
「実を結ぶ確証のないところに投資している(打ち込んでいる)のかもしれない」という不安が付きまとっている中で、とりあえず今の道を信じて突き進んでいるのかもしれません。
「点在するI'm aでこぼこフレンズ/一般的感覚だったらこんなんやっても元も子もねぇ」
「一般的な感覚(かわいい/かっこいい外見や声で人気者になりたいなど)だったらこんなキャラクターで勝負してないよ」という彼なりの自己主張だと思います。ピーナッツくんはこれからも今のでこぼこのキャラクターでやっていくのです。
「声変わりじゃないけど/ちょっと出てきた気がする喉仏」
少し声が成人男性(兄ぽこ)に近づいてきてしまっているリアルな現状を歌っているんでしょうか。
それとも、「5才児だけど第二次性徴が来ちゃったぜ」という謎のアピールでしょうか。
「若干気になってんだったら/Dance with me/例えば この音で」
「ちょっとでも気になるんだったらぼくの音楽で一緒に踊ろうよ」という勧誘ですね。
「Twin Turbo」では、「たくさんのデータ/ぼくの才能を見つけた君センスいいじゃん」という歌詞もありましたね。
⑤ 嚩ᴴᴬᴷᵁ 歌詞解釈
嚩ᴴᴬᴷᵁさんについては、まだ彼女の音楽を聴き始めてから期間が浅いので、満足な解釈をする自信がありません。
ただ彼女の楽曲には想像以上にドハマりしていて、特に「Any More」「unpresent」「GALFY4」「1314μ」「Anti these」「Bless on me」「Blast」「Laz-light」「Day Break」あたりの楽曲はここ1ヵ月ほどめちゃくちゃ聞いています。どれもすごく好きです。
とりあえずの印象としては、「嫌いなもの/苦手なもの/イライラするもの」などについて歌っていることが多いイメージです。ただそういう言い方をしてしまうとすごくネガティブに聞こえるかもしれませんが、音楽としてはすごくいいんですよね。
わかったようなことを言って恐縮ですが、印象としては、息苦しい中で音楽表現を通して何とか生きる道を模索しているようなひたむきさを感じてそれがすごくいいです。
音については、基本的に割とHyperpop的な音使いが好きなので、彼女の音楽は好きになりました。
さて、今作の歌詞を見ていきましょう。
大まかな印象から語りますが、とりあえず「最先端の音楽を通して自分が存在した証を残していく」といったテーマを何となく感じ取っています。
「最先端まで朽ちている/僕らのエリアはまだ止まれない」については次のような捉え方をしています。まず、何か特定の音楽ジャンルや「仮想空間技術(とそれを利用する人々のカルチャー)」は留まることなく進化を続けています。一方では、「その最先端のエリアで私たちも進化を続けていくんだ」という気持ちがあるのでしょう。しかし、他方では「その末端から最先端まで本当はもうボロボロな状態なんだ」という負の側面を歌っているのかもしれません。
…すみません、音楽ジャンルや仮想空間技術について詳しくないのに適当なこと言いました。
「毎日散歩お医者さんに言われた」については、ゴーグル付けて仮想空間で夜を明かすのもいいけど、日々外を出歩かないと健康ではいられないよ、みたいな忠告を共有しているのかもしれません。
ただこれについてはお医者さんから本当に言われたそうです。リアルなリリックですね。
「君の目には映る平和」については、「本当は裏側ではいろいろなものが崩壊しかけているけど、見る側からは平和に映っているんだろうな」ということでしょうか。Dr.Anonが今年11月に活動休止したばかりなので、こうした少々しんみりした解釈に導かれるところがあります。
自分たちが大変な状況にあることに気づいてもらえず他人からは平和に映っているという状況は、一方では寂しいものです。しかし他方では、他人からは平和に見えているというそのことが自分にとって少し救いになる、ということもあるような気がします。そうした自分の不安定さに動じない他者の存在がいつか自分にとっての「帰る場所」になりうるだろうからです。
…すみません、あまりそういう人生経験があるわけでもないのに知ったようなこと言っちゃいました。
⑥ まとめ:仮想空間上でのUK RAVEパーティ
歌詞について向き合いたい気質なので歌詞解釈させていただきました!
音楽については語る語彙をあまり持ち合わせていませんが、ずっとノリノリで踊れる感じが楽しくて好きです! 知らないなりに「これがUKのダンスミュージックなのかな~」なんて思いながら日々踊らせてもらっています。
ピーナッツくんのリリックについては広範囲に渡り音韻がかなり丁寧に構成されていて、無意識に乗るのも気持ちいいですし、意識的に分析するのも楽しいです。
特に「This is the Play Station Free Get トロフィー 僕たちの思う通りに」の脚韻がどこか巧妙な感じがして結構好きです。ここはゲーム内のトロフィーと取るか、ぽこピーのゆるキャラグランプリ連覇と取るか、みたいな歌詞解釈を掘り下げるのも楽しそうですね。
オートチューンと相性のいいピーナッツくんの濁声と、嚩ᴴᴬᴷᵁさんのサイバー感溢れるカワイイボイスが両者ともビートにマッチしていて、「仮想空間上でのUK RAVEパーティ」というテーマにピッタリだと思います。
何より、そもそも嚩ᴴᴬᴷᵁさんとピーナッツくんの共演を実現してくれただけでめちゃくちゃ嬉しかったです! 心待ちにしておりました。
おわりに:これからもコラボ続けてほしい!
当初はライブ制作やグッズモデルとして生まれたはずのご縁が、こうして一曲を生み出すまでに繋がったことが本当に嬉しいです!
これからも素敵なコラボを見せてください!
◇
ちなみに田中ショヲタさんのXアカウントにて12月4日に「実写版再会した」として嚩ᴴᴬᴷᵁさんとのツーショット写真が上がっていました。
今でも実写版ぽこピーとしての関係性が続いているのは素敵ですね! 今後もぽこピーとのコラボに期待です!
よいクリスマスを!
おわり
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