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不動産オーナー探訪記 第13話 福岡を創り出した「紙与産業」グループ

なんとなくオーナー訪問記も見えてきた中で今日は東京以外の地主さん(地主様やん)の訪問記です。そう場所は福岡の博多天神です。といっても博多にはそれこそ名家と言われるグループが複数おりまして、その中でもオフィスビルオーナーとして大きな影響を持つ2社があります。

紙与産業と福岡地所です

今回はこの中から、紙与産業について訪問してみましょう。

紙与一族の家訓

この一族の家訓がとてもしびれます。
「援助も受けないが援助もしない」という、独立独歩の精神があります。

これ痺れますよね。呉服事業で福岡一番、いや九州一の呉服店になり尚且つ九州を代表する資産家一族である同族企業の家訓。

そんな会社の創業は天保時代にさかのぼり、先ほども書いたように呉服業から発展させていきます。

会社の概要と業態

天保6年(1835) 博多西町上の番に紙与呉服店開店これがスタートになります。いわゆる呉服店業でしっかりとした基盤を整えていきます。すでに200年近い歴史がある企業です。

**当時は紙呉服店**として

様々な地主さんを追ってみると、江戸時代や明治時代から「呉服店」や「酒販店」といった業態を運営から少しづつ土地や建物の経営にシフトしている企業は案外多いです。

九州を代表する呉服屋に成長した同社はその後その資産を基に別事業へも拡大していきます。

さて明治時代から福岡市の発展に多大な貢献を収め地名にその名を残した渡邉家の紙与産業グループとして大きくその地位と名声が確立するのは明治の中期からです。

時は、明治の中期三代目の渡邉與八郎氏の代です。

ここで博多に路面電車をめぐらす計画があがり「博多電気軌道」設立へと至ります。福岡の資産家としてこの循環鉄道を敷設する際に與八郎は周辺の田畑を含む土地の買収と鉄道路線の為の土地を買い上げていきます。

渡辺與八郎氏の尽力で博多電気軌道が部分開業したのは、1911年です。

このような同氏の功績を認められており現在でも福岡では「渡辺通り」という通りに名前がつくほどになっています。

しかし、不幸なことに奇病により與八郎氏は急死してしまい、博多電気軌道は推進力を失って九州水力電気との合併の道を選択することとなってしまいます。ただし基盤となった紙与呉服店や紙与はしっかりと渡邉一族に継承されていきます。

昭和27年に 紙与産業株式会社に商号変更
昭和29年に 渡辺ビル竣工となります。

その後ビル運営や開発にグループ会社を設立していきますが、すべてこの渡邉一族が経営する一大グループなのです。

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博多から天神にかけての大型ビルは紙与の名前を冠しているオフィスビルが多数あります。共同保有ビルもありますが紙与産業の影響力はかなり高いです。

余談

さて保有ビルの一つに「住友不動産ふくおか半蔵門ビル」があります。これは福岡県が東京に所有している「ふくおか会館」の建て替えが決まった際の入札において優先交渉権として渡辺地所が落札しているところから物語がスタートします。

当時色々騒がせた、ふくおか会館建替えですが、このふくおか会館の建て替えにおいては「渡辺地所・住友不動産・西日本新聞社」3社のグループで構成されるWSNグループが落札しています。

そして住友不動産はといえば東京で長らくオフィスビルを単独運営していますが、福岡だと同社が所有する紙与博多ビルの運営は住友不動産です。

紙与博多ビル
所在地 福岡市博多区博多駅前1丁目2番5号
最寄駅 JR博多駅 徒歩4分
竣工年月 1993年8月
建物所有者:紙与産業株式会社
運営 :住友不動産株式会社

このような関係構築能力をみると紙与産業はさすがの老舗ですが、住友不動産のプロジェクトへの関与具合もさすがと思うところがあります。

いずれもう一つの不動産ビルオーナーの福岡地所にもスポットを当てたいと思っている次第です。

企業概要

企業名:紙与産業
創立 :1920年3月(創業1825年)
所在地 :福岡市中央区天神1丁目12番14号 
代表者 :渡邉 與之
業 種:不動産の運営管理、貸しビル及び駐車場の経営
    保険代理業及び関連事業に対する投資

主な賃貸オフィス:紙与博多駅前中央、紙与渡辺、紙与天神、JS博多渡辺、西日本渡辺、博多管絃ビル、住友不動産ふくおか半蔵門ビル


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主にオフィスに関する不動産知識や趣味で短文小説を書いています。第1作目のツボ売り、それ以外も不動産界隈の話を書いていければ良いなと思っています。 サポート貰えると記事を書いてる励みになります。いいねをしてくれるだけでも読者がいる実感が持ててやる気が出ます