見出し画像

すみともふどうさんに提案負けしたけど学べる点が沢山あった

今ビルが少ない中いつも思うのは住友グループの営業力の強さとしたたかさです。ビル同士で競合する事は少なくなりましたが、彼らの徹底的なこだわりとオフィスとしての戦略的な怖さについてメモします。

他社の話だし、人の褌で相撲を取るのは良くないので無料公開中です。

住友の何が強いのか

住友不動産の本体は主に東京都内のビジネス地区で多くのオフィスを所有運営しています。旧財閥企業でありながら社内はベンチャー企業さながらの営業会社でして、三井・三菱よりもギラついた人が多いのも特徴的です。そして何より、営業力。自社のテナントに対するサポート力の高さ

❶都内オフィスビルの多さ

彼らの強みは都内に220棟を越えるオフィスビルを自己所有している事です。三井や三菱、森ビルなどは商業施設の運営や街全体の開発にも力を入れていますが住友は相変わらず骨太にオフィスと住居の二本立てです。

この220棟が曲者でして、自社開発のオフィスビルがこれだけあるので自社顧客の増床や移転にかなり手厚く対応できます。ほとんどのビルが自社運営なので最終価格決定権があるのも彼らの強みの1つです。

❷ビルスペックの高さ

住友のオフィスビルは近隣のオフィスに比べると開発当初からオーバースペックと言われるほどにファシリティ面が強いのです。例をあげると、電気容量です。80年代〜90年代のビルならば30VA/平米くらいでも十分な時代なのに、平気で50〜60VA/平米作ってます。確か泉ガーデンクラスだと100VA/平米。つまり今の時代でも十分に耐えうる電気容量の確保ができるビルを作っていて、それが多少古くなっても彼らのビルが見劣りしない理由です。

あと地味にすごいのが大型ビルでも完全個別空調の採用ビルが多い事。ビルの運用でいけばセントラルの方が扱いやすいのですがこれを個別空調対応のニーズにいち早く気付いていたのは流石です。その分運用コストは高いので家賃は総じて高額になりがちですけど

そんなの関係ねぇ!というストロングスタイル。敵にすると嫌だけど味方なら強者

他にも非常用発電の整備や無柱設計など、ビル自体は今後5年10年経っても色褪せない程に設備投資しているのでそりゃ賃料は高くなるよなというのが彼らが唯一である魅力でしょうか

❸営業力の強さ、入居後サポート

すみともはビルの数が多いだけでなく営業も多いです。外部誘致であったり内部企業へのサポートが強いのが特徴。定期的に館内のテナントへ挨拶や御用聞きを行なっており、拡張のニーズや移転の相談に早い段階からサポートしてくれます。他社に比べると各ビルテナントの拡張ニーズに耐えるだけの余力をどこかしらのビルに残してくれています。

また内装も自社内で持っているので、顧客の望むオフィス作りをいち早く社内共有して実現させます。これが他社のビルだとグループ内の別会社を通じてニーズ把握など行うのでどうしても遅くなりがちでスケジュール遅延が起きやすい点をカバーしてます。

❹伝家の宝刀ビル内で集約

これはうちの管理物件だろうと真似できない伝家の宝刀です。こいつを振りかざすと圧倒的に勝てないという必殺技

まさしく必殺されます

ビル内移動やビル内集約というのはある程度フロアが空いて歯抜けになった場合、ビルとしては外部誘致しにくくなります。それを逆手にとって今営業しているテナントをまとめちゃおうという力技です。

例えば2.3.12階とフロアが分かれているテナントがあるとしましょう。そこに新たに4階、11階の空室が出たとします。通常のビルオーナーなら4階も11階も単独で募集します。1フロアずつ埋めなくてはならず苦戦することもしばしば。しかし、すみともは迷うことなく12階から4階に集約しませんか?と既存テナントに営業かけます。

もちろん営業に支障をきたさないように内装費用をビル側で負担したりとあの手この手

結局のところ、高い賃料が取れそうな高層フロアは11階.12階のセットで募集が出来て、フロアが分かれているテナントは内装費や賃料の恩恵を受けつつもフロアをまとめて効率化がはかれます。

彼らの偉いところは景色の良い高層階は高い賃料が取れると踏んでしっかり高値で決める事。低層フロアであってもまとめて借りさせれば長期優良テナントとして利用してくれるとわかって貸している点です。

❺デメリットは何か

ビルの設備面やサポートに力を入れるので竣工など同年代のビルと比較すると割と高い値段設定だという点です。

割と?いやいや結構高いです!

ビルの開発を行う際にも大手ゼネコンと設計事務所監修の元に建てているので、内装費用も総じて他のビルと比較すると高くなります。いわゆる都内のAグレードビルと同じ工事費用だと思っておけば良いです。

この辺りの費用は原状回復時にも同様なので、住友はサービスは良いけど高いと内部テナントや元入居テナントからよく言われます。

客として入居している時や住友ビル同士の移転ならばサービス満点なんですが顧客でなくなると、したたかで冷徹なんですよね。

成長企業にとっては入居するとそれなりに手厚いフォローが得られて良い選択だと思います。入居中の企業も、サイバーエージェントやGMOといった急成長ベンチャーの取り込みに成功していますし、過去、リクルートグループやソフトバンクの急成長を支えているのは住友のビル群にしっかりとした成長の受け皿があったからに他ならないです。

すみふの営業方針は攻めです。ビルを作るのもスペック重視で立地は二の次、しかしビルの棟数が極めて多いという選択肢の多さが魅力です。

逆に安くてそれなりに良いコストパフォーマンスが良いビルは無いので総じてちょっと高いよねと思いがち。高級外車みたいなビル、中二が発案したようなコンセプト

俺の考えた最強のオフィスビル作ってみた

そういう最強日本一みたいなものに魅了される会社とっては極めて相性が良いと思います。ちなみに今ガシガシ伸ばしているwework社の入居を頑なに拒否しているのも住友不動産

すみともは自社運用にこだわります。大型のレセプションや貸し会議室の運営を行うベルサールはそもそも会議室の需要に応えるための自社企画。TKPと組めば楽なのに早くから自社のスペース有効活用として成功したモデルです。だからベンチャー向けのコワーキングスペースとかはじめても良いのになと思うけどワザワザ自社でコワーキング始めるくらいならweworkユーザーを引き抜いた方が楽だし効率的ですよね。

ベルサールラウンジという時間貸しのコワーキングスペースは自社でやってますね。資産の空きスペース有効活用

プロパー社員の多くは結構良い大学出ていて、しかも同期人脈も厚く持っているネタは全部使います。ピッチイベントを開催するチームがあったりSNSで直に繋がる人がいたりと個人と会社の繋がりを上手く絡めてます。

さすがの住友不動産

ちなみに若手で優秀なすみふ社員が結構ベンチャーの経営企画室とかに転職していきます。この辺も普通の企業ならふざけんなってなるんですが、ある意味顧客の懐に入るので長期目線で住友不動産のビルに移転してくる可能性高いんですよね

そこら辺まで計算してたら真面目に脅威感じるレベルです。

住友の社風はイケイケです。だから水が合うなら長く続くけど社員もしたたかに出口戦略探してるんですよね。だから若くて優秀なほど上場前ベンチャーに引き抜かれたり、待遇の良いポジにいきます

ちなみに、転職しても古巣の住友が持つビルスペックの良さは理解してるから結構、転職先の企業が住友のビルに移転します笑

本当に抜け目ない。偉いし・優秀だし・怖い人達です。

おすすめのシリーズ



主にオフィスに関する不動産知識や趣味で短文小説を書いています。第1作目のツボ売り、それ以外も不動産界隈の話を書いていければ良いなと思っています。 サポート貰えると記事を書いてる励みになります。いいねをしてくれるだけでも読者がいる実感が持ててやる気が出ます