本当にリーマン越えるの?都内の空室率の見方と予測
こんにちは、最近不動産の移転レポートばかり書いてしまっておりなんか,購読者も減りつつあるんじゃないか?と個人的な危機感を持っています。
さて昨今騒がれているオフィスの解約による空室率の増加、併せて囁かれるリーマン越えのオフィス不況になるのではないか?という話に対して一石を投じたいと思います。
ちなみにファンド界隈やビルの売買をされている方は現在の売り買いの状況を見るとリーマンとは異なると分かると思いますので今回は完全に入居者向け、いわゆるエンドユーザーに向けた解説と着眼点になります。
オフィスの空室率とは?
日経新聞をはじめとした各社に発表されるオフィスの空室率ですが、これはオフィスを専門に仲介している企業レポートが元になっています。有名なところだと三鬼商事、JLL、三幸エステート各社が出しており、それぞれ差はあれど空室の状況や今後の見通しを各社が発表しています。
現在テナント募集をしているオフィスビルのデータから会社独自に空室割合と今後のマーケットの予測をしています。
空室率が上がるとどうなるの?
以下の記事で詳しく説明されてますが、値段が下がり交渉がしやすくなりフリーレントも取りやすくなります。
一般的にはオフィス市況の空室率は大抵4.5%くらいを境にして貸主の交渉し易さと借主の交渉し易さのバランスが変わる潮目となります。
2021年7月今は空室率が6%を超えており借主優位の状況になっていると言われています・・・・・・
ただ、
それって本当なのか?という話。
さて、ここからが今回の本筋のオフィスの市況と空室率のお話になってきます。
これからのオフィスビル市況は借り主優位になるの?
基本的にはそうなるのですが、冒頭に指し示しました空室率というのは比較的大型のオフィスビルをから抽出したデータです。
つまり、なにがおきているかと言うと大局観としては借主優位だが、ビル規模が小さいオーナーは空室に困っていないケースや、競争が盛んなエリアは交渉幅(もしくは値下げ幅)が狭いといった話があります。
この点が、新聞で論じられる視点と実需との違いになります。
例えば渋谷区をみてみると空室率は6.45%(2021年7月三鬼商事レポートより)です。
しかし、これは渋谷区全体の平均値のデータとも言えます。
渋谷は渋谷駅、恵比寿駅といった人気エリアから、幡ヶ谷・初台、代々木まで案外広いエリアをカバーしています。
つまり渋谷駅の空室が仮に2%以下であっても、幡ヶ谷初台代々木の中規模ビルの解約が相次げば空室率は上がる....こういった背景があります。
当然、渋谷駅のオフィスと幡ヶ谷駅のオフィスを比較した場合どちらのビルオーナーがフリーレントや単価が下がりやすいかと言えば後者になるというわけです。
とはいっても2020年7月時点の1年前で空室率が3.8%台だったことを考えますと、空室は確かに増えていますしいままでよりも賃料が下がるといった場面が増えているとも言えます。
案外値下げに乗らない地主オーナー企業
また次にオーナーの属性というのもポイントになります。フリーレントや単価の設定がある程度柔軟なビルはデベロッパーやファンドによる物件が多く、運用しているビルが多いという点で共通点があります。
そういった属性であれば単独のビルの空室云々よりも所有しているビル全体の利回りで考えるので早く稼働率を回復させたいという思惑が出てきます。
この手のビルはフリーレントを長めにつけても早く満室稼働にしたいという事です。これはビルを多数所有しているデベロッパー各社も近しい発想で運営しています。
対して、地元でウン十年の地元の大家さんはそれほど値下げの感覚を持ちません。空室率が良くも悪くもスタンスを変えない傾向にあります。
これは、運用しているビルが少ないので単価を下げる事やフリーレントで賃料が発生しない事で自らの収支を苦しめることを理解しているからです。合理的ではないですが1,2ヶ月待ったとしてもなるべく、交渉の少ないテナントを入れたほうが得だと思っています。
景気が良かろうが悪かろうが、なるべく自分の希望する金額で出来れば長く借りる顧客を気長に待つ方が昔から多かった印象です。多分今でも変わらないだろうなと思います。
この辺は利回りやら根抵当の状況にもよりますが、オーナー業が専門の会社であれば空室率リスクに敏感です。逆に本業は別にあるような会社であれああるほどこの辺の相場や空室率には無頓着な方が多いです。(オフィスビルオーナーは本業が老舗の◯◯店のような方も多い)
最終的にはオフィスを探す企業が人気エリアで探しているのか?不人気エリアか?という点と、ビルのオーナーの属性はどういった会社なのかというポイントを押さえていないとそもそも交渉の土台にも乗らないミスマッチが起きてしまいます。
空室率はリーマンショックを越えるのか
これはワタシの予測になりますが2020から始まった空室率の上昇はまだ収まらないです。
多分リーマンショック後の水準近くまで上がるとは思いますが、リーマンとハッキリ違うのはビルの勝ち負けが明確なので全てのオーナーに悲壮感があるわけで無く、稼働状況が良いビルも複数あります。
2021年はコロナ後を見据えた前向きな移転が多いことと未だにビルの売買価格は未だに上がっているというところから、オフィスビルの市況だけにに着目するとリーマンショックほどの危機感は無いです。危機感や空室への不安はリーマンショックや震災後の方が大きく、現在は様子見というオーナーさんの話をよく聞きます。
しかし、2022年以降の新築オフィスビルへ視線をうつすと違う光景が見えてきます。2022年竣工のオフィスビルに関して、稼働予測が極めて進捗良くない話を複数聞きします。
既存のビルで無く、新築オフィスが埋まっていません
2022年~2023年の新築ビルは大型の再開発が多く、竣工すると既存の空室率の母数へと積算されます。新築未入居物件は今後の空室率に大きな悪影響を与えます。
新築・未入居ビルが与える影響は何か?
新築ビルは、いわゆる売出し前の状況なので竣工時の空室をどれだけ抱えないか?が一つの指標です。
いまはJRビルも森ビルも三井不動産も日本郵政も東急不動産も大型ビルの開発を行っています。開発した分を同じだけの新規入居テナントを獲得しないといけません。
この手のビルが、竣工時に埋まらないのでは?という危機感があり、この辺りの実態が2023年から2024年に掛けてより顕著になる見込みです。
最終的には調整が入ると思われますが、空室率が中規模小規模ビルに実感として影響を受けるのはあと2022年の中期ぐらいから本格的になってくるかと予測され、個人オーナーや地元で頑張るオーナーも空室率上昇の影響力を無視できなくなってきます。
影響を受ける度合いとしてはまずは通常以下の順番で発生していきます。
大型新築ビル>大手ビルデベロッパー>REIT・ファンド運営ビル>専門のオフィスビルオーナー>地元ビルオーナー各社>個人オーナー
基本的に、ビルの価格変動や相場空室率は大規模ビルから動きます。いま現在やっとビルの空室が増えてきたという実感が湧いてきたオーナーも多いでしょう。
未だに満室のビルも多くあります、2020年にコロナの影響で大量解約があったビルも現在では埋め戻しが成立し、満室稼働になっているようなビルも多くあります。
それでもオフィスビルの基準賃料は上がる傾向
最後にひとつ材料となるのがビルの売買です。実は日本のオフィスビルは投資対象としてはまだまだ良い部類に分けられます。つまりは日本のオフィスビルを買いたい投資家やビルオーナーが海外勢にたくさんいます。
つまり現状は解約が増えている稼働率が低下しているビルも今後5年くらいを目処に見通すと賃料上昇がみこめるという風に評価されているものも多いです。
特に人気エリアの都心主要区というのはこういった売買価格の上昇傾向にあります。そもそも買えないとか、結果として実需の賃料目線が下がっているのは、現場で理解していても売買価格とのバランスを考えると、物件によっては賃料が下がらない(ものによっては今賃料がまだ上がっている物件もあるというアンバランスさ)状況になってきます。この手の物件の場合は慣習的にフリーレントで均す考え方を持つので、賃料は高いが長いフリーレント6ヶ月以上や12ヶ月といったものが登場してくる背景がココにあります。
なぜ2025年に向けて空室率が上がるのか?
最後に解説です。2023年から2025年に掛けてなにが起きるかというと、大型オフィスビルの再開発や竣工ラッシュです。2021年の現時点ではいくつか入居が囁かれますが大型のオフィスの移転は決まっていないというのが状況です。
まず、2022年竣工の大型ビルの紹介をしていきます。ここの稼働状況が今後のオフィスビルの空室率に直結してくるので着目ポイントになります。
2022年竣工予定のオフィスビル
・九段南一丁目プロジェクト
・東京ミッドタウン八重洲
・ヤンマー東京ビル
・T-LITE
・港南二丁目プロジェクト
・南青山三丁目計画
・三田再開発
・MEGURO MARC
若干ずれこんだりしているオフィスもありますが、2022年竣工のオフィスも基準階100坪以上のものが続々と竣工していきます。特に上記の中だと九段会館跡地や東京ミッドタウン八重洲が大型です。
次に2023年の竣工物件についても説明していきます。
2023年竣工予定のオフィスビル
・虎ノ門・麻布台地区再開発事業 A街区
・虎ノ門・麻布台地区再開発事業 B-1街区
・西新宿五丁目北地区
・(仮称)渋谷区道玄坂二丁目開発計画
・虎ノ門ヒルズ ステーションタワー
・渋谷駅桜丘口地区第一種市街地再開発事業 A街区
・渋谷駅桜丘口地区第一種市街地再開発事業 B街区
・五反田計画(仮称)(旧ゆうぽうと跡地開発)
2023年竣工のオフィスは更に基準階ベースがかなり大きく数万坪規模になります。つまり2023年は竣工ラッシュということになります。数万坪のオフィスを埋めるためには既存のビルからの引き抜きなどを行ったとしても満室にできるのか?という懸念がつきまとうことになります。
最後になりますがPRです。そんな企業の移転の最新情報や移転動向の背景を以下のマガジンでまとめています。かなりマニアックな内容なので購読者を選ぶのは承知ですがオフィス移転やオフィス賃料の動向などに興味のある方はフォローもしくは単独で良いので買ってください。モチベーションになります。
以下は関連きじです。
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