Nicholas Kim, et al.: Anconeus epitrochlearis muscle associated with cubital tunnel syndrome: a case series

今回は、肘部管症候群に関与する可能性のあるAnconeus epitrochlearis muscleの形態と機能について報告します。

きっかけ


先日、肘部管の近位部に明瞭な圧痛を認めた投球による尺骨神経障害の患者さんを経験し、解剖学的な特徴を検索したところAnconeus epitrochlearis muscleの存在を知りましたので紹介したいと思います。

Anconeus epitrochlearis muscle


 Anconeus epitrochlearis muscleは肘頭内側から内側上顆に付着する筋肉で、尺骨神経の表層を走行します。そのためAnconeus epitrochlearis muscleが尺骨神経を圧迫することで肘部管症候群が発症することは想像しやすいですが、その症状への関与や機能に関する情報はまだ多くありません。
 今回の論文では肘部管症候群の手術中にAnconeus epitrochlearis muscleが確認された13例を対象とされています。その患者さんの術前の特徴は尺骨神経領域の疼痛、感覚麻痺・鈍麻、灼熱痛、神経伝達検査の陽性率が陽性でしたが、手術にてAnconeus epitrochlearis muscleの筋線維の切離と尺骨神経移行などを実施すると多くの症例で改善が見られた様です。
 その術中の所見として、Anconeus epitrochlearis muscleの下で尺骨神経の病変が見られたとされており、Anconeus epitrochlearis muscleが尺骨神経に影響を及ぼすことが明らかとなりました。機能的特徴は肘を伸展すると上腕骨長軸に近い走行しており緊張は確認されませんでしたが、肘を屈曲すると前腕長軸に沿った走行となり手術症例では緊張が増すようです。しかし、健常例では全可動域で緊張の変化がないことも報告されており、緊張の変化は手術症例の特徴的な所見かもしれません。

感想

 肘部管症候群症例の評価の際には、肘頭と内側上顆の間で圧痛が取れるのか、肘関節を屈曲位にすると圧痛は強くなるのか、などを確認し、エコーやMRIでAnconeus epitrochlearis muscleの存在を確認することで、同部位のさなる病態解明ができるのではないかと思いました。

投稿者:中井亮佑

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