上肢下垂位で愁訴を有する神経性胸郭出口症候群における動的および静的な病態の検討 : 腕神経叢造影Dynamic 3DCTを用いて
森本友紀子ら: 末梢神経=Peripheral nerve 33(1),74-80, 2022.
胸郭出口症候群の患者さんの多くは挙上位での動作にて症状を訴えられますが、上肢下垂位での症状を訴える方も少なくはありません。投球障害でも、練習後の安静時(上肢下垂位)に症状を自覚する症例を経験します。
先日、フォロースルーでの脱力感と疼痛が主訴の内野手で、理学所見では鎖骨下筋の著明な圧痛があり、上肢牽引テストやEdenテストが陽性、Wright テストやRoosテストが陰性、斜角筋の圧痛(Morleyテスト)は軽度陽性、頚部の動作では症状が誘発されなかった症例を経験しました。鎖骨下窩での障害を疑い運動療法を実施したところ改善が見られました。その鎖骨下窩での障害の推察に役立った論文を紹介します。
内容
本研究では、上肢下垂位で症状を呈する症例を対象に、肋鎖間隙の病態の評価を目的にBP-3DCTを用いて肋鎖間隙の定量評価が行われています。
その結果、鎖骨とどの肋骨の間が狭くなっていたか、という検討では、多くの例で鎖骨と第2肋骨との間、次いで第1肋間(第1肋骨と第2肋骨の間)との間が狭いことが明らかとなりました。また、上肢下垂位で症状を呈する症例の患側は、牽引された際の肋鎖間隙が他の条件より狭くなることがわかりました。
感想
鎖骨下窩と肋骨の間で起きている腕神経叢の圧迫の病態が明確となりました。その間に挟まる組織のひとつに鎖骨下筋が存在しますので、私が経験した症例は鎖骨下筋によって腕神経叢が圧迫されていたたことや、同部位で滑走障害が生じていた可能性を考えます。胸郭出口症候群の理学療法の適応の幅を広げていけたらと思います。
報告:中井亮佑
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?