Sever’s Disease of the Pediatric Population: Clinical, Pathologic, and Therapeutic Considerations

Clinical Medicine&Reseach Volume19, Number 3:132-137
Mohamad Y.Fares,MD,et al

要約

 シーバー病は、世界中の子ども達に起こる踵に痛みを引き起こす疾患として一般的であるが、あまり報告されていない。多くの場合、オーバーユースによる損傷として、片側もしくは両側の踵の痛みを引き起こす、と説明されている。明確な損傷メカニズムは不明であるが、踵骨の骨端線に反復してストレスと圧力がかかることが関与していると考えられている。シーバー病の診断は臨床検査と身体所見から行うが、squeeze テストが陽性であれば診断を確立できる。さらに、X線画像にて他の疾患と鑑別する事ができる。シーバー病の治療選択は、ほとんどが保存療法であり、休息、理学療法、運動療法、装具療法が含まれる。両親や指導者にシーバー病の症状について教育することは、効率的に予防し、早期に診断を確定するために非常に重要である。この報告では、シーバー病の症例を紹介し、現在、存在する文献と照らし合わせて、現状の診断、臨床、病理学的、治療的特徴について、医学的考察を紹介している。

概要

 この疾患における愁訴の中で、踵部後方の痛みが最も一般的であり、好発年齢は特に8~15歳までの活動的な小児である。踵部後方痛の原因の一つにまず挙げられるのが、踵骨骨端炎である。1912年にJames Warren Severが、小児1000人あたり3.7人に発生していると報告している。シーバー病は、活発な成長期の小児で踵骨に炎症がみられる疾患である。潜行性疼痛を伴うオーバーユースの疾患と考えられ、多くの場合、外傷のような出来事で起こる疾患ではない。症状や原因は個々の症例で異なるが、身体活動や体重と関連があると報告されている。

症例紹介

 11歳男児で、1ヵ月前に左足部に痛みを訴え、クリニックを受診した。本症例は、健康的で身長体重ともに平均、薬を服用していなかった。外傷となる出来事はなく、突如痛みを感じた。疼痛部位は、踵部後方で激しい運動を行うと悪化していった。症例は苦痛を訴えるよりも非常に活動的であった。しかしながら、彼の親は、痛みは次第に強くなり、スポーツをやめざるを得なくなったと話した。この時点での診断は、シーバー病、踵骨腱滑液包炎、骨髄炎、足底腱膜炎が含まれていた。
 来室時、症例は顕著な足をひきずっていた。罹患した症例には著しい発赤や腫脹はなかった。感覚や出力は正常であった。触診より、左踵部後外側面の圧痛が顕著であった。踵部の
squeeze テストが陽性であり、シーバー病と診断された。X線を撮影し、変形や骨折はみられず、シーバー病という診断がさらに裏付けられた。症例は、安静、氷嚢、およびストレッチにて保存療法が選択された。1ヵ月後、患者は症状が改善し、日常生活に正常に復帰していった。

臨床解剖学とバイオメカニクス

 踵骨は足根骨の中で最も大きな骨であり、足底の最も後方に位置しており、遠位に立方骨、近位に距骨と横足根関節を成している。踵骨には、腓腹筋、ヒラメ筋、足底筋の3つの筋が付着する。歩行に必要な他の筋肉や靱帯とともに、アキレス腱は踵骨の後下方面に付着する。アキレス腱の付着部に隣接して、顕著な軸方向の負荷を受ける骨端線が存在する。
 小児症例では、骨端線が筋肉-腱-骨の付着部の中で最も脆弱な部位と考えられている。それに対して、大人が最も脆弱なのは腱である。骨端線は遅くとも14歳まで開いたままである。思春期初期の成長は、骨の成長が筋腱の成長を上回る。その結果、筋腱はもともとの柔軟性を維持するに必要な伸張性を失う。これにより不完全に骨化した骨端線が横切り、緊張が増加する。この踵骨領域への負荷が、骨端線を刺激し、その結果、炎症を引き起こす。
シーバー病の正確なメカニズムについて、多くの議論がある。1つの主な理論は、反復的な衝撃圧力が剪断応力としてまだ開いたままである踵骨の骨端線に起因する機械的刺激である。以前の研究では、この状態における足底負荷の役割が取り上げられ、小児のシーバー病患者より高いピーク足底圧が報告されている。Becerro de Bengoaらの報告によると立っている間のピーク足底圧がシーバー病患者群では339+/-27kPaに対し、コントロールである健常者は83+/-kPaであった。歩行時、シーバー病患者群では880+/-78kPaであるのに対し、健常者が88+/-11kPaであった。このように、歩行、走行、ジャンプを行うスポーツが最も痛みを引き起こす原因だと理解することができ、これらの活動の間で負荷が増加する傾向がある。
 実際、ランニングはおおいにシーバー病に関連しており、高い競技レベルは子ども達に筋肉の不均衡を引き起こす。これらの不均衡は強い足関節底屈筋、膝関節伸筋、弱い膝関節屈筋、足関節背屈筋によって現れる。これらの不均衡は身体活動中の骨への負荷が増加させ、シーバー病の原因となる。さらに、ある研究では、シーバー病患者の子ども達は、ピーク足底圧とその後の痛みを軽減しようとして、ランニング中の正確なケイデンスが増加している事が示された。さらに、このことは健常者の正常歩行と比較して症候性踵骨骨端炎小児に走行を助ける重要性が示された。さらに、この症状を司るメカニズムを正確に理解し、明らかにするには、さらなる研究が必要である。

感想


 現在の職場で働き始めて、最初の頃に経験した疾患である。下腿から起始し、踵骨に付着する下腿三頭筋や足底筋だけでなく、後脛骨筋や足底方形筋などの付着部、筋の走行をしっかり考慮し、痛みにつながるメカニカルストレスを把握し、評価する事が重要である。そのために、触診を正確に行えるように研鑽していきたい。

次回
足底腱膜炎の診かたについて報告します。

投稿者:小林博樹

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