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狩猟ガール(23)が初めて鹿を撃った日のはなし
狩猟免許を取得して初めての猟期。
山には何度も入っていてチャンスは数回あったが
なかなか仕留めることができずにいた。
4か月目の良く晴れた日曜日。
私はいつも通り週末に狩猟をすべく仲間と山に出かけた。
山に入り配置につく。
気配を感じるまで自然の中に同化していく。
あまり殺気立っていると気配で獲物に気づかれるらしい。
しばらく待っていると上のほうでゴロゴロと石が落ちる音。
鹿の群れが50m先を通る。
慌てて構えたが、時すでに遅し。
もう目の前を通り過ぎて行った。
そこからなかなか気配がない。
森のざわめきを聞き、鳥たちの羽ばたく音を聞く。
獲物を待っている時間は嫌いではない。
思索に耽り、山の息吹を感じる。
すると急に1匹の雌鹿が飛び出してきた。
ゆっくりと歩いてこちらに向かってくるようである。
私は息を殺して、なるべく引き付けるようにタイミングを計った。
そしてついに引き金を引く。
その瞬間、山の斜面を転がり落ちていった。
当たったのだ。やっと。
分かっていたつもりだったが改めて感じる。
命を殺めることの恐ろしさ、命をいただくことの責任感を。
第一声は無意識に「怖かった」と口から出ていた。
山の足場が悪いところで撃つ恐怖か、
生きているものの命を奪った重さか、
はたまた獲らねばならないというプレッシャーなのか、
定かではない。
とにかくその時、私は確かに怖かったのだ。
とにもかくにも猟師としての第一歩をようやく踏み出した。
自分で獲った初めての鹿は自分で解体し、
仲間と分け合って料理にして食べた。
命をいただくことを初めて自分で実感した。
これが始まりであることを実感した1日であり、
これからの期待を胸に膨らませた。