#1 趣味
僕は自分のことが大嫌いで、20歳にして早くも来世に様々な願いを託している。
しかし、好きなところが1つだけある。多趣味なところだ。
小学校の頃はクラス替えが行われる度に自己紹介カードを作成し、教室の後ろにクラスメイト全員のカードが貼られていた。僕のカードは趣味の枠だけパンパンに埋められ、他の枠には「とくになし」とだけ書かれたとても奇妙なカードだった記憶がある。
小学校高学年の頃の夏休みの1日を思い出してみた。朝は必ず近くの公園に虫取りに行っていた。暑くなる前に帰宅し、昼からは自分の部屋のパソコンでずっとゲーム実況動画を見ていた。ここだけで2つの趣味が登場している。暇になることは滅多に無かった。
しかし、僕の周りに同じ趣味を持つ人は基本的にはいなかった。その趣味が別に珍しいわけではなかったと思うが、なぜかいなかった。
同じ趣味の人間が欲しかった僕は趣味の布教活動を行うようになった。しかし、関心を寄せる人は少なかった。
逆に周りの流行についていけない機会が多かった。友達が「一狩り行くゲーム」で盛り上がっているときも、1人で別のゲームをしていた。周りからみたらとんだひねくれ者だっただろう。気づいていないだけで、遊びに誘われなかったことも多々あったと思う。
大学生になり、大人になった僕は周りの趣味になんとか話を合わせることができるようになった。合わせたほうが、都合がいいことに気づいた。しかし、自分の趣味の布教活動をする悪い性格は消えなかった。
この性格がついに事件を起こした。洋楽好きの親友に某アイドルの布教活動をして、無理矢理握手会に連れて行ったら音信不通になった。
これ以来、布教活動を辞めた。趣味は自分が選択するものであって、無理矢理教え込まれるものではなかった。
僕は今、Twitterという便利なSNSで周りにいなかった同じ趣味の人とネット越しで関わることが出来ている。もうひとりぼっちじゃない。布教する必要も無い。周りに合わせる必要も無い。
20年生きてきて今が一番感じる。趣味って最高だ。
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