2024.01.16 「ロシュ ダイアグノスティックス v. アボット」 知財高裁令和4年(行ケ)10082 ―「抗原Xに結合する抗体」をさらに「特異的に認識して結合する」特徴で特定する意義―
1.はじめに
「PIVKA-IIを特異的に認識して結合する抗体」に関するアボット・ラボラトリーズの特許に対する無効審判請求を不成立とした審決を不服としてロシュ ダイアグノスティックスが提起した審決取消訴訟(知財高裁令和4年(行ケ)10082)で、知財高裁は、本件審決の判断に誤りはなく、ロシュ ダイアグノスティックスが主張する取消事由(新規性、進歩性、拡大先願との同一性、明確性要件、サポート要件及び実施可能要件の有無に関する誤り)はいずれも理由がないと判断した。
アボット・ラボラトリーズとロシュ ダイアグノスティックスは、日本において、それぞれ体外診断用医薬品であるPIVKA-IIキットを製造販売しており、この競合関係に今回の特許紛争の火種があるのだろうと想像される。
本稿は、本件の裁判所の判断を簡単に紹介しつつ、「抗原Xに結合する抗体クレイム」に関するサポート要件及び実施可能要件について、最近の判決、論考、欧米での動向等を参照しながら、まとまりのない思いついたままの感想を述べるものである。
珈琲☕一杯分?の暇つぶしにいかがでしょうか。
※ 当記事は法的助言を与えるものではありません。全ての情報はその正確性と現在の適用可能性を再確認する必要があります。
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