DIYを通して伝える“ものづくりの楽しさ”
お話しを伺った方
DIYスペース「KITENE」 齊藤健吾さん・伸吾さん(2024年取材)
歴史ある商店街で営むDIYスペース
盛岡には、藩政時代から続く商店街がある。400m近くあるアーケード「ホットライン肴町」を中心とする肴町商店街だ。
青果店や精肉店、魚屋、薬局、日本茶専門店など、人々の暮らしを支える店が立ち並ぶ。
2024年7月には、新たな複合施設「monaka」が誕生。オープン初日には、約4万人が訪れた。
そんな肴町商店街の南側に店を構えているのが、DIYスペース「KITENE」だ。
2018年にオープンし、店内には本格的な工具のほか、作業台などを完備。子どもたちはもちろん、テーブルや椅子を作りたいといって訪れる大人も少なくない。
利用料金は30分ごとに大人330円、子ども165円。1日利用は2,500円で、工具や設備の利用代金も含まれている。
「皆さんが気軽に利用できる価格設定にしています。ときどき、お客様から『安すぎませんか?』って言われることもあるんですよ」
そう言って笑うのは、ストアマネージャーの齊藤伸吾さんだ。
「材料を持ち込んでもらえれば、時間貸しの料金だけでご利用いただけます。もちろん材料も一通り用意しているので、ご相談いただければ一緒に作ることもできますよ」
商店街のプロジェクトをきっかけにオープン
夏休みや冬休みになると、子どもたちの利用が増えるという「KITENE」。
店内には廃材も用意していて、なんと無料で使用できる。
アイディア次第で自由にものづくりが楽しめるため、夢中になって工作を楽しむ子が多いという。
「工具を使わずに作れるキットもあるので、小さいお子さんも挑戦できます。大人の方だと、エレキギターのボディーを作る人も多いです」と語るのは、伸吾さんの兄で「KITENE」の母体となる斎藤商事の代表取締役を務める齊藤健吾さんだ。
健吾さんは父から同社を受け継ぎ、不動産賃貸事業やビルテナント事業などを展開。「KITENE」は、同社のDIYスペース事業に当たる。
「『KITENE』を作ったきっかけは、『肴町ベンチプロジェクト』でした。これは肴町商店街青年部(4S会)による取り組みで、アーケードの中にくつろげる空間を作ろうと手作りのベンチを設置したんです。最初は少し遠くの作業場を借りていましたが、近い場所にほしいということになり、誰でも使えるDIYスペースとして『KITENE』をオープンしました」
老舗から受け継ぐ人との関わり
実は「KITENE」がオープンする前から、同じ物件に「ホームセンター」という金物店があった。
この場所で50年以上続いた老舗で、こちらも斎藤商事と同じルーツからなる事業だった。惜しまれながらも2022年に閉店したが、「KITENE」は営業を継続。「ホームセンター」時代から付き合いのある常連客も多い。
「ホームセンターの頃から、エアコンやストーブの取付け、網戸の補修など、日常のちょっとした困りごとのお手伝いをしていました。それは今も変わらず、釣り竿の連結部分が取れなくなったとか、掃除機に靴下が詰まってどうしても取れないなど、いろんなご相談に対応しています」
大人気のスモークキューブ
さらに「KITENE」では、昨年からオリジナル商品の「スモークキューブ」を販売している。
これは伸吾さんが考案したもので、食品に熱を加えずくん製できる「簡易冷燻(かんいれいくん)」のアイテム。
卓上サイズでありながら、箱の中には食材を乗せる網を4段設置し、扉の窓から煙が充満する様子を見ることができる。
「熱を加えないのでお刺身や貝類などと相性がいいですし、ウィスキーをスモークすれば独特の香りが楽しめます」と、楽しそうに語る伸吾さん。
そんな伸吾さんにオススメの食材を聞くと、「めんつゆです」と意外な答えが返ってきた。
「麺類はすすって食べるので、スモーキーな香りが一気に広がるんです。あとは豚バラ肉に塩コショウをして、くん製した後で焼くと、無添加のフレッシュなベーコンが味わえますよ」
誰もが楽しさを体験できる場所
「今後は物販にも力を入れながら、ここでの体験をもっとたくさんの人に楽しんでもらえる場所にしていきたいです」と、伸吾さんは語る。
これまで、多くの「作りたい!」という夢を叶えてきた「KITENE」。ときには、「これから店を開くから、オリジナルの看板を作りたい」というシニア世代が訪れることもある。物にあふれた時代だからこそ、世界でたった一つのものづくりに喜びを見出す人は多いのだろう。
地域とのつながりを大切にしながら、交流の場としての機能も果たす「KITENE」。これからもこの場所で、人々の笑顔とともに誰もが楽しめる時間を刻み続けていく。
◆KITENEのホームページはコチラ!
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