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エピソード4(サラ金を「いい人」と呼ぶ納税者)

 ハーイ、マックんです。
 今回は、滞納国税を分割支払してきたが、少し納付を待ってほしいと税務署へ相談にやって来た「おばあちゃん」のお話です。
 内容はアレンジしていますので、ご容赦ください。
 
 お父ちゃん(夫の呼称)が個人事業主で、おばあちゃんは、経理担当です。成人した子供2人と4人暮らしです。
 事業と家計の資金管理を担当している訳ですね。

 まず、お父ちゃんが滞納者となった原因は次のとおりです。
 お父ちゃんの父親は、資産家で不動産賃貸物件を有していました。資産家の父親が死亡したことで、多額の相続税が発生することとなりました。

 相続人は、お父ちゃんとその弟さん、妹さん(被相続人の子ら)の3名です。遺産分割協議の結果、お父ちゃんが、不動産賃貸物件を相続し、相続税全額を負担すること、弟さんは、被相続人自宅不動産を相続すること、妹さんは、お父ちゃん(長兄)が得る毎月の家賃収入の中から、〇分の1の金額〇〇円を〇〇円に達するまで支払ってもらうとのいわゆる「代償分割」が行われたようです。

 相続不動産には、金融機関の抵当権が設定されていましたので、相続税の納付方法として、金銭による一括納付ができない場合に、延納や物納という制度がありますが、抵当権付不動産であったため、延納担保にはできませんし、物納もできませんでした。
 仮に、延納又は物納の申請を選択するとしても、相続税申告時が当該申請期限であり、間に合いませんでした。

 お父ちゃんは、相続税支払のため、金利が高めのノンバンクから融資を受け、金融機関抵当権抹消登記を行い、ノンバンクのために1番抵当権を設定しました。

一般的に事業所得及び不動産所得がある場合、支払の必要があるのは
・所得税(3月)、予定納税(7月、11月)
・消費税(3月)、中間消費税(8月)
・源泉所得税(1月、7月 特例適用時)
・固定資産税(償却資産税を含む。)(年4回)
・住民税(年4回)
・事業税(年2回)
・源泉住民税(年2回、特例適用時)
・このほか、国民健康保険料、国民年金などの社会保険料が毎月

 おばあちゃんは、お父ちゃんの事業収入から毎月の生活費を捻出します。家賃収入については、まず1番抵当権者のノンバンクが分割弁済金を回収し、手取収入のうち、一部は妹さんへ代償金として支払うと、ほとんど手残りはありません。上記公租公課へ支払うべき金銭であった貯蓄はすぐに枯渇し、税金等については、分割納付していましたが、間に合わなくなり、サラ金数社から借金をすることとなってしまいました。

 やがて、税金の分割納付も滞り始め、市役所からは、差押えの通告を受けてしまいました。
 そして、差押えを受けないために、市役所の税金を納付するので、滞納国税を待ってほしいとの相談でした。

 私は、おばあちゃんから、相談に来たいとの電話を受けた際、毎月の収支明細、貯蓄残高及び借入金残高を書き留めて、持参するよう指示しておきました。

【 おばあちゃんとの面談 】
 事前に指示していたメモは、切れ端のノートに手書きでしたが、分かりやすくまとめられていました。
 上記のような事情を聞き取る中で、サラ金業者の数が増え、借入残高も増加していることが分かりました。

 私は、おばあちゃんに尋ねました。
私:サラ金業者から「支払大変やね。いくら必要なん?融通しとくよ。毎月の返済は利息だけでええから。」と言われませんでしたか?
おばあちゃん:えっぅ!なんで分かるんですか。そうなんです、困っているところを助けてくれる「いい人」達です。

私:あのね。彼らにとって、おばあちゃんが「都合のいい人」なんですよ。目一杯、貸し付けて、「毎月、利息だけ」というのは、一生(死ぬまで)絞り取られるということですよ。まぁ、税金も払ってもらわないといけないけれど、絞り取る訳ではないからね。
 ただ、お父さんの財産に、どこかが差押えをしてしまうと、全債権者が一斉に債権回収を始めることとなるのね。すなわち、賃貸不動産は、公売や競売となり、売却代金で全ての債権を満足(完済)できなければ、破産となり、家賃収入もなくなってしまい、妹さんへの代償金が捻出できなくなるおそれがある。
おばあちゃん:それは困ります。どうすればいいの?

私:今から、資金繰りの方法、生活の立て直しの仕方を伝えるので、家族みんなで話し合って、行動に移してほしい。
1 長期的には、抵当権者の金利が高いので、金利が低く、借換えのできる金融機関を探すこと
2 「差押えをする」という市役所に対し、とりあえず、差押えをしないために指示のあった金額〇〇万円を納付すること(この金額については、貯蓄性保険があったので、これを担保に借り入れるか、解約するよう指導)
3 次に、2~4か月以内に(できるだけ早く)、サラ金数社の借金を返済(完済)すること。その際、サラ金業者から、甘い言葉で「返済はまだ構わない。」とか、「いったん完済という形で、新たに貸し付けるよ。」と言ってきたら、「完済していなければ、税務署から差し押さえられる」と言い返してください。
4 上記3の資金捻出として、弟さんに事情説明を行い、借入れをお願いする。または、妹さんへの毎月支払を数か月待ってもらう。特に、妹さんに対しては、破産になっては、代償金が支払えなくなることを説明して納得してもらうこと
5 破産を避けるためにも、滞納税金等がなくなるまで、生活改善をしてもらいたい。税金の滞納が始まっても生活習慣は変わっていないと思われます。滞納がなくなった後は、元に戻していただいても構いません。それまでは、家族全員で少し、我慢していただきたい。
 (1) 成人した子供へのお小遣い〇万円は廃止
 (2) 家族全員が大手携帯会社と契約しているので、格安会社へ乗り換え、毎月の支出を減らすこと(子供さんが応じない場合でも、少なくとも御夫婦は変更すること)→数万円の減額が可能
(3) 自宅光回線業者に対し、テレビ有料チャンネルが複数契約されているので、解約を検討のこと。少なくとも、有料チャンネルは解約し、光回線業者については、安価な業者へ変更すること。
 ⇒これらを行ったとしても、生活レベルを落とすというものではない。

 そして、上記1及び2については、異論はないと考えるが、上記3は必ず実行していただきたい。上記4と5は、努力義務ではあるが、前向きに検討をお願いした。これらの実行が可能との見通しが立つのであれば、滞納国税が一時的に増加しても、やむを得ないと判断し、納付を猶予すると伝えました。

《 コメント 》
 滞納国税の分割支払において、各分割支払金は、まず延滞税の計算の基礎となる本税(いわゆる元本)に充当されますが(国税通則法62条1項)、民事における分割支払金は、元本より先に利息に充当されます(民法489条1項)。
 すなわち、国税の分割納付では、先に元本部分である本税に充当されるので、支払を継続する限り、いつかは完納となりますが、民事では、利息のみ支払っていては、元本が減らないので、死ぬまで借金は残るということになります。
 太平かつみさんと尾崎さゆりさん御夫婦が、借金が全然減らないと仰っていたのは、この民法規定があったからです。私が現役時代に、研修の題材(ネタ)に無断使用させていただいておりました。今では、税理士さんに相談の結果、完済の目途がついたということですが、無断使用のお詫びに、私であれば更に的確なアドヴァイスをさせていただきます (^^♪ 


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