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【 国会答弁とは、官僚作成の答弁書を読み上げること❣ 】

1 はじめに
 タイトルは、皆さんもご存じのとおりかと思います。
 大臣等の国会答弁書、政府側答弁書の作成責任者は、官僚ですが、実際には、下っ端のノンキャリア公務員である我々が作成していたので、現場を知る者として、今回、解説します。
 なお、約30年前のことなので、多少のニュアンスは異なっているかもしれません。想定問答は、問を上段に枠で囲み、答弁部分は、ポキポキ形式(骨格部分との意)で体言止め(名詞形で終わり、語尾は各先生の好みで変わる)とし、〇ポイントの太字ゴシック体(老眼対策)とする。左右両面に同じことを記載する(二つ折にして、ひっくり返しても構わないように)とされていました。

2 岸田総理は「検討使」?
 政府は、「できないこと」や「絶対にするつもりがないこと」は、答弁において、明確に否定します。積極的な発言もしません。言質を取られないためです。

(野党議員)円安の中、物価が高騰し、生活に密着した電気代やガス代等の公共料金、ガソリン代もうウナギ上りである。消費税を減税しろ!
 子育て支援金は、実質、増税ではないか。
(岸田総理)消費税、減税しません。住民税非課税世帯へは、既に給付金を支給しました。公共料金についても、電力会社等へ補助金を支出しており、更に政府として何ができるかは、検討してまいります。
 増税とは、税法に規定して課するものであり、子育て支援金のための保険料増額は、増税ではありません。子育て支援金について、保険料の一部として国民の皆様に負担していただくものあり、給与の引き上げも行ってまいりますので、国民の皆様の実質負担増にはなりません。
(野党議員)総理は、いつも「検討」、「検討」と答弁する。まるで「検討使(平安時代にあった「遣唐使」を文字って揶揄したもの)」だな。

 それぞれ翻訳し、解説を付けると次のようになります。
・検討してまいりたい ⇒ 何もしない(検討しているふりをする)
・前向きに検討します ⇒ 検討するか否かを検討(土台に乗るか不明)
・善処します     ⇒ 土台には乗せる前提で実施するか否か検討する
・前向きに善処します ⇒ 実施するとは言えないが、実施方向である

 結局は、世論の後押しにより、消費税減税できないので、所得税・住民税の定額減税実施となりました。

3 個別案件と一般論について
 よくあるフレーズです。
(野党議員)〇〇議員が、週刊誌にて「〇〇の手口により不正な資金を得て、脱税している」との報道がなされた、政府・国税庁は、直ちに税務調査を指示し、納税させるべきではないか。
(政府答弁)週刊誌報道がなされたことは承知しています。個別案件ですので、答弁は差し控えさせていただきます。なお、一般論で申し上げますと、個々の事情を勘案した上で、税務調査を行っているところであり、〇〇税法に違反しているとの事実が把握できたような場合には、適正な申告・納税をしょうよういたします。

 明らかな前提事実は認めても、具体的な法律に当てはめて解釈することをしないというのが個別案件の趣旨であり、一般論を述べることで、質問者側で当てはまるかどうかを判断してほしいというものです。

4 Yes  or NOで求める質疑
 最近、「YesかNO」で答えろとした上、質疑をしている場面をよく見かけます。国会では、れいわ新選組代表の山本太郎議員が、総理を始め政府に詰め寄る場面であったり、つばさの党黒川が、日本保守党有本事務総長や飯山候補に対し、選挙期間中に「YesかNO」で答えろと迫ったり、これに応じて、山本太郎氏は、「答えればいいじゃないか。」と街頭演説で述べていたり、今回の東京都知事選では、蓮舫候補が小池都知事に対し、パーティ券購入の事実の有無と問いただしたところ、小池都知事が「法令に則り、・・・」と答え、石丸候補から「今のはYesかNoで答えられる質問であり、都民とともにもう一度聞いてみたい」と振ったところ(筆者注:この指摘は正しい)、小池都知事は、「法令に則り、・・・」と想定問答のようでした。
 Yes  or NOで答えられるのは、英語で考えてみてください。疑問詞が入っていないこと、前提条件(IF)や間違った前提事実を入れないこと、質問が複数でないことです。そのようなものが入っていれば、Yes  or NOで答えられるはずはありません。答えないと言って追及するのは、愚の骨頂です。
【結 論】
 Yes  or NOで回答を迫る質問者は、大概、質問自体が間違っています。総理や政府答弁が、想定問答を読んでいるだけなので、いかにも追及されている感がありますが、本当にYes  or NOで回答できる内容か考えてみてください。
 だから、岸田総理や政府与党は、「検討使」になるのです。
  

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